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宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第2部】【第7章】宇宙艦隊オッパリオン「王の軌跡編」
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【第7章】宇宙艦隊オッパリオン440話「祈りあればこそ」

奈菜はオッパリオン皇妃ミィリアエトワールに出会う。

オッパリオンに来てから、ノール館長の元でオッパリオンの歴史に関する調査を行うな奈菜。

そんな奈菜は、オッパリオン皇妃であるミィリアに呼ばれていた。

皇妃は奈菜に重要な事を伝えたい様だった。

皇妃から語られるものは?

そして、奈菜に目覚める力がこの先の戦いを制する為に必要なのかもしれない!?

【四四〇 祈りあればこそ】


 アティルーンを乗せたミルアティルスと、アーリア提督の乗るスタティアを見送った奈菜は、オッパリオン星へと降り立ち、皇宮へと参じていた。

 奈菜はかつてない緊張をしつつ、その部屋の前に立つ。


「お待ちしておりました」

「ありがとうございます」


 部屋の前の衛兵には話が伝えられているらしく、奈菜を確認すると扉をノックしてくれた。


「ナナ様がお見えになられました」

『お通ししてください』

「はっ。――ではナナ様、どうぞ」

「失礼します」


 衛兵が開けたのは、皇宮内にある皇妃の迎賓室だった。

 中はオッパリオンらしい質素かつ清潔感と高貴さのある部屋になっており、対面の低い卓と長椅子がある。皇妃はその長椅子にかけており、奈菜の来室を確認すると立ち上がった。

 奈菜は跪き、顔を伏せる。


「本日はお呼びいただき、光栄に存じます。皇妃陛下のご威光の下、日々の暮らしができますことを心より感謝申し上げます」

「まぁ、これは丁寧な挨拶をありがとうございます。ナナさんは異星の賓客、堅苦しい挨拶は置いておきましょう」


 皇妃は優しい声で奈菜にそう応えた。奈菜は顔をあげる。


「お気遣い、ありがとうございます」

「さぁ、どうぞおかけに」

「失礼します」


 奈菜は作法に則り、先に席につく。すると皇妃も腰を下ろす。


「わざわざお越しいただき、感謝します」

「いえ。皇妃陛下も、体調はよろしいのでしょうか?」

「はい。おかげさまで、普通の生活を送れるまでには回復しました。公務への復帰も、あと少しという手応えがあります」

「それはなによりのことです。ですが、どうかご無理はなさらずにお願いします」

「そうですね。しかし、本来ラメルでの講和会談にはわたしが赴かねばならないところ。ヴァツルド殿下は講和会談にアティルーンを使命されたのですが、それはわたしを気遣ってのことでしょう」

「そのようなことがあったのですね。ヴァツルド殿下にはわたしもお会いし、話をする機会が何度かありましたが、とても思慮深い人でした」

「オッパリオンとのよき関係を作れる人ではあると、アティも言っていました。講和会談も、心配はないでしょう」

「わたしもそう思います」


 奈菜が笑みを見せると、皇妃も微笑む。すると、扉が軽くノックされる。


「どうぞ」

「失礼します。お茶をお持ちしました」


 皇妃の侍女が、奈菜と皇妃の分のお茶のセットを持って現れ、ふたりの前に置く。そして速やかに部屋を出て行った。


「本日お呼びしたのは、ナナさんにお伝えしておきたいことがあるからです」

「それは……なんでしょう?」

「ナナさんは博物館に通われ、ノール教授とともにオッパリオンの歴史の研究をされているとうかがいました」

「恐れ入ります。皇妃陛下のお耳に届いているなんて」

「アティから聞いたのです。オッパリオンは長い歴史を持つ文明ですが、歴史をありのままに記録するという行為をしてこなかったのです。神話は残されていますが、それが事実であったかどうかは、十分な検証がなされておりません」

「ノール教授からそのことはうかがいました。ですが、いくつかの文献や遺跡で発掘されたものから、少しずつ昔のことがわかりはじめています。キュキューの中にあった古い文献の文字も、解読が進んでいます」

「頼もしい限りです。ナナさんは、どうして異星の歴史に興味がおありなのでしょう? あぁ、これはわたしの、個人的な興味からの質問です」

「それは……昔のできごとを知れば、Zリーヌンスをよりよく使う方法がわかると思ったからです」

「そうですか。実に聡明な意見です」


 皇妃は満足気に頷くと、お茶にひと口、口をつけた。奈菜もそれに倣う。


「マーラ星でリネイのことはわたしもうかがいました。パイロットである、フレイアのこと」

「申し上げにくいのですが……生け贄のことでしょうか?」

「そうです。うかがった時は驚きましたが……前線を行くあなた方には伝えておくべきことがあったと思いました」

「皇妃陛下はリネイのことをご存じなのですか?」

「いえ、存じません」


 皇妃は緩やかに首を振った。


「存じませんが、皇家に伝わる歴史というのがあります」

「それはオッパリオンの神話とはまた違ったものなのでしょうか?」

「……そうです。神話の中のオッパリオン人は、チッパリオン人、デカパリオン人ともに平和を愛する温厚な民であったとされていますが、実際のオッパリオンの統一前は、争いの絶えない星だったのです」

「っ!?」


 奈菜は思わず驚きを顔に出してしまった。


「驚かれるのも当然と思います。初代オッパリオン王がオッパリオン統一を成し遂げたのは、母乳力を使う武器の開発によるものでした」

「……驚きましたが、わたしの生まれた地球の歴史でも、同じような話はありますし、地球では未だに統一が成されていません」

「それも正しいあり方のひとつなのでしょう。……オッパリオン王は武力と、もうひとつ、あるものを提言したことで、オッパリオン統一を成し遂げることとなりました。それは、外敵の存在を伝えたと言われています」

「外敵……オッパリオン以外の……それはもしかして、ケレブルムのような……」

「その通りです。初代オッパリオン王は、宇宙を脅かす存在、ケレブルムの兵について、どういういきさつかは知りませんが、知っていたとされているのです」

「そのことを皇女殿下は――」

「先日、オッパリオンを発つ前に伝えてあります。オッパリオンと、ケレブルムには浅からぬ因縁があると」

「そう……でしたか……」


 争いが避けられないことが、長い歴史によって証明されてしまった瞬間だった。奈菜は、思わず落胆してしまう。


「残念ではありますが、我々とケレブルムとの戦いは避けられません」

「いえ、覚悟はしていました。いましたが……」

「そうですね。マーラ帝国との戦争がようやくの終わりを迎えたというのに」

「はい。しかし皇妃陛下、ケレブルムは宇宙全体の脅威となると聞いています。もし、それに立ち向かえる力があるのなら……わたしは最前線に立つ身ではありませんが、立ち向かわなければならいとも思います」

「その通りです。かつて……Zリーヌンス王はケレブルムと戦いました。ですが、この詳細は皇家にも伝わっておりません」

「遺跡にもほとんど伝わっていないのです。とても大事なことだと思いますが、どうして言葉を残さなかったのか、ノール教授とも議論になっています」

「なぜ残さなかったのか……そのことについて、わたしには思うことがあります」


 奈菜は固唾を飲む。皇妃の言葉を待っていると、皇妃はゆっくりと口を開く。


「危険――だからです」


 皇妃の答えはシンプルであり、明確なものだった。それは奈菜も思うことだ。


「リネイはパイロットに命を捧げるよう要求しました。リネイはケレブルムと戦うための兵器。ケレブルムと戦うためには、命すら捧げよとのこと。つまり、言葉の通り、命を使わねば、ケレブルムに対抗するのは不可能ということ。Zリーヌンス王は多くの犠牲を払い、それでいて、ケレブルムを追い払うことしかできなかった、そうではないかと」

「それは……わたしも考えていたことです。ケレブルムを撃退することはできたものの、犠牲の大きさ、Zリーヌンス王自身の力の強大さを危険に思い、遠い宇宙の果てに封じたのではないかと」


 奈菜の意見に、皇妃は頷く。


「理論的な解釈です。正しいのではないかと、わたしも思います」

「……解読された情報の中には、意図的に母乳力の扱いを隠すような文言が見られるのです。過去のオッパリオン人は、まるで母乳力を隠したいかのように」

「……Zリーヌンス王の時代かはわかりませんが、皇家には、母乳力を扱う技術は争いの中で洗練されたと言われています」

「それは……やはり、母乳力を戦いに使っていたということですね」

「そう思います。そしてそれらは封印され、忌避された。しかし近年になり、再び使われるようになった……」

「母乳力は安全という認識がわたしにはありました。マーラ星を再生させたのも、母乳力の持つ癒やしの力による部分が大きいと」

「ナナさん、母乳力にも、油断してはなりません。リネイの一件のように、母乳力は使う果てには命まで刈り取るものなのです」

「そう……ですね。すみませんでした」

「いえ。母乳力も、Zリーヌンスも、自身の命を根源にしている力なのかもしれません。そして、それに由来する兵器は……おそらく、我々の想像を超える力を持つのでしょう。それでも、ケレブルムを撃滅するには至らなかった……その結果、今、今日この時の脅威となってしまった……。これは、誰かが立ち向かわねばならないことです。その時が、我々の生きる時代におとずれてしまったということ」

「今、みんながその準備をしています。マーラ帝国との講和も、そのひとつだと思います。わたしは……できると信じています。だから、自分もできることをしているつもりです」


 奈菜の言葉に、皇妃はハッとなった。


「ナナさんのおっしゃる通りですね。アティも、アーリア提督も、皆が準備をしている……それは頼もしくも心強くもあるのですが……ナナさん、これはZリーヌンスとオッパリオンの歴史を探究されているナナさんにだから言うことなのですが、どうか、母乳力とZリーヌンスを、自分たちの味方だと思い込まないようお願いします」

「そ、それは――」


 皇妃の言葉は衝撃的だった。奈菜は思わず言葉に詰まった。

 皇妃はジッと奈菜を見つめる。その目は優しくもあり、悲しくもあった。


「使い方を間違ってしまえば、ケレブルムを滅ぼす前に自らを滅ぼす力になってしまうこともあると思います。また、ケレブルムを打ち倒せたとしても、自らが滅んでしまったらそれは意味をなしません」

「皇妃陛下は……母乳力やZリーヌンスがそれほどに危険なものだとお考えですか?」


 皇妃は黙って、しかし力強く頷いた。


「ものごとには裏表があります。星ひとつを再生させるほどの力が、もし自身に仇なす力となって返ってきたら……そう思うと、心穏やかにはいられません。その可能性はゼロではないのです。しかし、母乳力を信じ、Zリーヌンスに支えられ、前線を駆けるものたちには到底言えません。ですがナナさん、あなたは、どうかこのことをお忘れにならないでいてください」

「わたしが――」


 どうして自分なのか。奈菜はふとそう思った。母乳力もZリーヌンスも、自分にはない力だ。その自分が、どうしてこのふたつの力を制御できるのだろうかと。

 そんな奈菜の胸中を見透かしてか、皇妃は言葉を続ける。


「母乳力を持つものと、Zリーヌンスを持つもの、その間に立つナナさんだからこそ見えるもの、感じるものがあると思います。ナナさんに宿った疑似Zリーヌンスの力は、この両者のバランスを保つ力ではないかと、わたしは感じています」


 奈菜は思わず自分の胸に手を置いた。


「バランスを保つ力――」

「その力を知る鍵も、オッパリオンの歴史の中から見いだせるやもしれません。オッパリオン星には宇宙史に明るい学者はあまりいません。この先、さらなる探究をしていくには、宇宙史に詳しい協力者が必要になるはず――しかし、ナナさんたちの願いと行動が、その協力者と巡り合わせてくれることでしょう」


 そう願う皇妃の表情は優しく、奈菜はそれが自信に感じられた。


「わかりました。皇妃陛下のお言葉、忘れることのないよう、心にとめておきます」

「ありがとうございます――わたしはもう、ここで祈ることしかできません。すべては、あなた方の願いと行動にかかっています。無責任な皇妃であることを、どうかお許しを」

「と、とんでもありません! わたしたちが行動できるのも、皇妃陛下の祈りがあればこそのことです。翔平にも、目を覚ましたら伝えておきます」

「よろしくお願いします。――わたしからの話は、以上になるのですが、ナナさん、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか?」

「は、はい、なんでしょう?」


 奈菜は思わず背筋を伸ばした。


「ナナさんの所作振る舞いは見事なオッパリオンの礼儀作法のかなったものでした。一体、それをどこで身につけられたのですか?」

「こ、これは……ここに来る前に、リマから習いました」

「リマさん? たしかヴァツルド殿下の……」

「そうです、そのメイドです」

「そうでしたか。リマさんはマーラ人でありながらオッパリオンの礼節にも通じているとは……驚きました」

「リマはレーナ隊長に習ったと言っていましたが、おそらく自分で調べたものも多いのかと思います」

「ふふ、とても興味がわきました。リマさんに会い、そのことを詳しく伺いたいですね」

「機会がありましたらぜひ。たくさん協力もしてもらっています」

「仲間が増えるのはよいことです。さてナナさん、せっかくの機会です、昼食でもご一緒していってください」

「そ、それは光栄です。でも……」

「でも? なにか?」

「リマに教わった作法も完璧ではないので、あまりいると急いで覚えたのがバレてしまいそうです」

「ふふふ、大丈夫です。わたしもわたしの周囲のもののもそのようなことにはこだわりませんから。さぁ、行きましょう」


 そう言い、皇妃は立ち上がった。それに倣い、奈菜も立ち上がる。

 穏やかな空気ではあったが、今日ここで得た警告は重たかった。

 母乳力もZリーヌンスも、味方であると思ってはいけない――その言葉は、奈菜の心にしっかりと、そして深く強く刻まれた。


母乳力とZリーヌンス。

圧倒的なこの力達が齎す未来。

その先に待つのは、奈菜の持つ力こそが知るのか!?

皇妃の話と想いを胸に、奈菜は明日の為、この宇宙の為に前を向く!!

戦え奈菜!!


桐生スケキヨ次回予告。

ラメルに向かう皇女艦ミルアティルス。

そこに乗る皇女親衛隊ではある試みが行われようとしていた。

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