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宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第1部】【第2章】「Zリーヌンス篇」
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【第2章】宇宙艦隊オッパリオン040話(後編)「超光速戦闘(後編)」

今回も宇宙艦隊オッパリオンの更新がやって参りました。

前回に引き続き、第40話の後編となります。


前回のお話は。

翔平と奈菜を乗せたクァード艦は、追手である敵艦グアデリアの搭載していた新型兵器「ニュートレースミサイル」の攻撃でピンチを迎えていた。

超光速航法「ニュートレースジャンプ」中での攻撃は前代未聞であったからだ。

そんな絶体絶命とも呼べるピンチの中、フレイア隊の機動兵器パイロットのレマスは、この窮地を打開するための秘策を編み出す。

果たして、クァード隊は翔平と奈菜を、目的の星である「ラメル」まで送り届けることができるのだろうか。

オッパリオンとマーラの戦いは続く!!

【〇四〇 超光速戦闘(後編)】


「キャプテン、相手は健在のようだぞ」

「そのようですな。二発食らったようですが速度が少し落ちた程度だ。あの付録艦、かなり頑丈にできてますな」


 命中を観測したグアデリアから見たクァードはかなりの耐久性を誇っていた。もっとも、この超光速弾は破壊力と追尾性能を犠牲にして速度を得ているので、一発二発での撃沈は望めるものではなかった。


「それにしてもここまで被害が軽いとはな。相当な強運でも持ってるんだろう」

「そんな悠長なことを言ってる場合かねキャプテン。弾はあと何発あるのだ?」

「次の六発が最後ですな。なに、発射と機動のデータは取れてる。次は機関部へ当てて止めて見せましょう」

「やってもらおうか。足止めをするなら、その後は私の出番かな」

「そうなりますな」

「超光速弾座標入力完了。次弾、発射可能です」

「よし、次で確実に仕留めていくぞ。超光速弾、撃てぇっ!」


 アルガノスの声に応じ、グアデリアのミサイル発射管からは最終六発の超光速弾が発射された。

 ニュートレースジャンプの技術を用いたこのミサイルは短時間短距離ではあるがミルキィーフィールドを展開することで超光速で飛翔することができる。そのミサイル群は軌道を修正しつつ、真横を航行するクァード目がけて飛んで行った。

 その様子を、アルガノスやドロアズは主モニターで伺っていた。



 ◇ ◇ ◇



「ミサイル接近! 数六! 直撃軌道です!」

「ギリギリまで引きつけます」


 アリメルはそう言いながら、無意識にこぶしを握った。艦橋に緊迫が走る。


「上手く行くと思う?」


 極限とも言える緊迫状態の中、フレイアがとなりに座るレマスに聞く。


「もちろん。ボクの考えたやり方だよ?」

「すっごい自信。ま、それくらいがいいのかもしれないけどね、パイロットって」


 レマスはフレイアが見る限り平然としている――が、そもそもにしてレマスは平然としているかはしゃいでいるかくらいしか見たことがなかった。


「着弾まで一五、一四、一三、一二、一一、一〇!」

「機関停止! 舵を切って! 総員衝撃に備えて!」

「総員耐衝撃!」


 着弾一〇秒前、クァードは急停止をかけると同時に艦体を九〇度回頭させる。


「くぅううう!」


 急激な減速と負荷が座っているフレイアにかかった。その負荷は艦全体にかかり、艦そのものが斜めになる。

 外から見るとクァードは横向きになり、速度を急激に減速させる形となった。。

 舵を握る操舵士は負荷に体を引き離されそうになりながらも、必至に操舵桿を握る。


「航路を手動に強制移行!」

「ミサイルは!?」

「本艦前部の通過を確認! 旋回軌道に入り再追尾に入る模様! 本艦の位置から測定して着弾まで六〇秒と推測されます!」

「速力減速! 通常航法に切り替わりました! このままではミサイルに追いつかれます!」

「機関最大出力! 再度ニュートレースジャンプへ入ってください!」


 停止から一気に最大出力にするも、艦載の大型母乳機関にそこまでの瞬発力はなかった。


「ダメです! 出力上がりません!」

「艦内部にZリーヌンス反応! 母乳機関にエネルギー回路接続されます!」

「来たっ! やってくれたわ!」


 その報告にアリメルは思わず喜びの声を上げた。


「機関出力増大! 加速かけられます!」

「最大艦速でニュートレースジャンプへ!」

「ミサイル接近! 着弾まで三〇!」

「出力急いでください!」


 急停止したクァードは一転して急加速をかける。――急減速からの急加速、これがレマスが進言した打開策だった。だが機関部への負荷が大きく、減速はともかく急加速ができるかはZリーヌンス頼みの戦術となっていた。

 しかし、格納庫で起動したゼータリオンからZリーヌンスの恩恵は受けることができた。


「速力、通常の一五〇%まで上昇! ニュートレースジャンプ可能速度を突破します!」

「ミサイル着弾まで一〇秒! 九、八――」

「全艦ニュートレースジャンプ!」

「了解! 全艦ニュートレースジャンプ!」

「着弾まで四、三、二――」


 着弾一秒前、クァードはニュートレースジャンプに入り、Zリーヌンスの影響を受けて迫るミサイルを超える速度まで一気に加速する。

「ぐぅっ」


 猛烈とも言える急加速に、艦内全体に負荷がかかる。フレイアも機動兵器に乗っている時ですら感じたことのない負荷を体に感じた。


「ミ、ミサイルの追尾を振り切りました!」

「航路再計算、誤差修正確認、引き続きラメルを目指します」

「艦内の被害は?」

「一部積み荷が崩れたとの報告がありますが、人員への被害は出ていません。機関部もZリーヌンスを受けて増幅稼働中とのことです」


 その報告を受け、アリメルはひとまず安堵の息を吐いた。


「上手く行った……ってことね?」

「ほら、やっぱりボクが言った通り!」

「レマスさん、お手柄ですね。ですが危険な賭けではありました。Zリーヌンスがなければ母乳機関が暴発していたかもしれませんので」

「ショウヘイがやってくれたってことね。やるじゃない、あの人」

「あるものは使っていかないとね」


 やはりパイロットは度胸の据わり方が違うと、アリメルはひとり思った。


「でも、アリメル艦長がこの方法に乗ってくれるとは思わなかったかな。こういう思い切ったことはしないって思ってたから」


 フレイアはそんなことを言った。


「最善と思ったから決断したまでです。好き好んで無茶なことをしたわけではありませんので」


 アリメルはフレイアに笑顔を向ける。


「これは失礼」

「後続の海賊艦を引き離します。海賊艦に加速の兆候は見られません」

「でしょうね。通常のニュートレースジャンプの三倍近い速度ですもの。さすがに追いつける艦はないでしょうね」

「ですが艦長、Zリーヌンス反応で行き先はトレースされてしまいますね」

「それは仕方ありません。ですがラメルに入れば海賊は容易に手は出せないはずですから。対策はそこで考えるとしましょう」


 スオリーにそう答え、アリメルは艦長席に深く座り直した。


「全艦、戦闘態勢を解除お願いします。ですが相手は未知の兵器を使って来ました。ジャンプ中も対空監視を継続してください」

「了解しました。全艦へ通達、戦闘態勢解除――」



 ◇ ◇ ◇



「ふぅ……すごい衝撃だったけど、上手く行ったっぽいかな?」


 翔平がそうつぶやくと、衝撃に耐えながらぎゅっと目を閉じていた奈菜が目を開いた。


「お、終わったの?」

「戦闘態勢解除だから上手く行ったんだろうね。Zリーヌンスも上手く発動したし、やるじゃないかショウヘイ。上手く制御できているよ」

「それならよかった」


 コンソールを見ると、エネルギーの出力先がクァードの母乳機関に接続されていることが表示されていた。クァードの母乳機関の出力は三〇〇%となっており、通常の三倍近い出力が出ていることがうかがえた。

 Zリーヌンスを発している翔平にはさほど自覚はなく、体がやや熱くなっていると感じる程度に留まっていた。

 ゼータリオンの機関も数値が安定している。


「どんどん馴染んでくる気がする……」


 おぼつかなかった力の制御が徐々にできるようになっていく感覚に、翔平は慣れを感じていた。それは母乳機関などの改良もあってのことなのか、前よりもスムーズにできたような手応えがある。

 それに微かではあるが力の発動を感じ取れている。そしてこの発動しているという感覚は翔平に充足感のようなものを与えていた。翔平はほとんど無意識ではあったが、確実にそれを感じている。

 そのことを少しの違和感として覚えていると開けっぱなしのコクピットハッチにリアリィとリクサーヌが姿を現した。


「やったねショウヘイ。これがZリーヌンスかぁ。はじめて見たけどすごい力だね、噂通りの」

「クァードの出力は三〇〇%だって。余剰エネルギーが出てもいいように設計されてるって聞いてたけど、本当にこれだけ出るなんて驚き」


 二人とも驚きはしていたが、実際に目の当たりにするZリーヌンスの効果にどこか喜びを感じているようだった。


「これってわたしたちの機動兵器もパワーアップするんでしょう?」


 リアリィのその問いに答えたのは座席の後ろから体を出して来たミィアルーンだった。


「そうだね。そういう仕組みになってるよ。どの程度パワーアップするかは未知数だけどこの感じを見るに相当の出力は上がると予想されるね」

「すごい……」


 リクサーヌは感嘆の声を漏らしていた。

 そこにミィアールンが体を出し、コクピットハッチに立った。


「Zリーヌンスは母乳機関もそうだけど母乳力そのものを増幅させる効果があるんだよ。母乳力を持つキミたちオッパリオン人は何らかの形でZリーヌンスを感じられると思うんだけど、どうだい?」

「うーん」

「そう言われても」


 リアリィとリクサーヌは顔を見合わせる。


「そう言われるとなんとも言えない盛り上がり感があるような?」

「でもそれって作戦が上手く行ったからなのかもって感じもするし」

「なるほど。まぁ機動兵器に乗って母乳機関と繋がっていればまた少し違った感じ方になるかもしれないね。さて、わたしは機関室の方を見に行ってくるよ。ショウヘイは体の負担を感じなければまだここに残っていて欲しいけど、いいかい?」

「もちろんです。目的地に着くまではここにいます」

「じゃあわたしも」


 奈菜も翔平に付き合うつもりだった。


「ありがとうショウヘイ、ナナ。リアリィとリクサーヌはここで待機かい?」

「そうだね。いつなにがあるかわからないし。ジャンプ中に仕掛けてきたんだから、まだなにかあるかもしれないしね」


 言うリアリィにミィアルーンは頷いた。


「賢明だよ。じゃあわたしはこれで。ショウヘイ、なにかあったら機関室へ連絡をして欲しい」

「わかりました」


 ミィアルーンはコクピットハッチを蹴り、ゼータリオンから離れて行った。



 ◇ ◇ ◇



「付録艦をロスト。レーダー圏外への離脱を確認」


 センサー士のその言葉にアルガノスはため息をついた。

 グアデリアも減速をかけ、ニュートレースジャンプを中断させて通常航法に切り替わっていた。


「してやられましたな」


 副長の言葉に、アルガノスは認めたくはなかったが頷かざるを得なかった。


「ジャンプ中の急停止なぞ自殺行為だぞ。下手をすればそれだけで艦がバラバラになりかねん。あそこの艦長は正気なのか……」


 愚痴のようにも聞こえる言葉を漏らすアルガノスに、ドロアズが体を向ける。


「急停止はまだわかるがそこからの再加速のあれはなんだ……。艦船があそこまで急加速できる性能を、メルクコアどもは持っているということなのか……」


 ドロアズは驚きを露わにしていた。

 グアデリアから観測されたクァードの加速は一秒かからずに光速を超える速度、超光速弾をも超える速度まで加速していた。その加速性能は常識では考えられない範疇となっている。ドロアズがうろたえるのも無理はなかった。


「あれがZリーヌンスを持っているということですな」


 アルガノスの声が静まり返った艦橋に響いた。


「あれがか――」

「あの力はメルクコアの力と合わさるととんでもない力を発揮するんです。それは常識では考えられないことをする。前回の首都上空戦で帝国は戦力の過半数を一気に失う被害を出しました。それもあのZリーヌンスと輪っか付き一隻がやったことと言われてますな」

「……ただの噂ばかりと思っていたが」


 ドロアズははじめて目の当たりにしたZリーヌンスの効果に、脅威を感じていた。

 あの大きさの艦船を一秒以下で超光速まで加速するというのは理論的には不可能と言われていることだ。


「臆しましたかな?」


 アルガノスが言うと、ドロアズは目を伏せた。


「いや――任務を受けている以上敵に臆することなどはないよ。だが、あれほどの力を意志を持つ人が使うなど……陛下が排除せよと命じられるのも納得がいく」

「と言いますと?」

「あれがメルクコアの手にある以上、我々にとっては無二の脅威となることは間違いない。我々の繁栄と安寧を妨げる要因となる。母乳力だけでもその可能性があると言われているのに、さらにあのような力を得ようなどと……メルクコアはなにを考えている……」

「それはわかりませんな。しかしあれがある以上帝国のエネルギー戦略も一筋縄ではいかんでしょう」

「その通りだキャプテン。私は自分に与えられた任務の重要性を完全に理解はしていなかったようだ。だが今は違う。脅威となるメルクコアの力を実際に見て変わった。あの力は人風情が持ってよいものなのではない。神などは信じていないが、あれはまさに神の力だろう。この宇宙にあってはならない力だ」


 仮面の下からもドロアズの強い意志を感じた。


「……欲しくはなりませんか?」


 アルガノスは思い切ってそうたずねてみた。

 ドロアズは即答する。


「馬鹿な。あれは人には強大すぎる。強大すぎる力を持ったものは自滅するのがことわりだ」


 その言葉に、アルガノスはドロアズの信念のようなものを感じた。


「あんな力を使おうとするメルクコアどもはそう遠くなく自滅するだろう。しかしメルクコアは貴重なエネルギー源となる。自滅されては困る」

「そこは同感ですな」

「ならばそうなる前にあのZリーヌンスとやらを潰す必要がある。どんな手を使ってでもだ。帝国と宇宙を守るために。頼むキャプテン、そのために力を貸して欲しい」

「……もとよりそのつもりです。遅れはとりましたが付録艦の追撃に入ります。ラメルには入られてしまいますがね」

「致し方ない。ラメルの件については本国に打診する必要があるな。条約の都合、海賊が入ることはできん」

「そこはご安心を。すでに手は打ってあります。海賊には海賊のやり方があるのです」

「ほほう。ではその手腕に期待させてもらうとしよう。できることならラメルで仕留めたいものだな」

「ですな。あまり飛び回られてはこの大飯食らいのグアデリアでは効率が悪くてしょうがない。次はドロアズ殿にもご活躍願います」

「なんでもやろう。もう容赦することはせん」

「よし――グアデリア、進路をラメルに向けろ。準備できしだい最大艦速でニュートレースジャンプだ」

「了解」


 命令が下り、艦橋内が慌ただしさを取り戻す。


「しかしキャプテン、キャプテンは前回もZリーヌンスと対峙したわけだが、あの力をどう感じたのかな?」

「……正直に言うと恐ろしく思えますな。ドロアズ殿もおっしゃいましたがあれは人智を超える力を発揮します。それをどうにかしろというのは無茶のようにも」

「ふむ、正直だな。だがやりようはあるだろう。強大な力を持つものは必ずおごりが生まれる。そうすれば隙もできよう」

「そう願いたいですな」

「グアデリア速力安定。ニュートレースジャンプ、準備完了です」

「うむ、ニュートレースジャンプ開始」


 アルガノスの号令でグアデリアはクァードを追い、ニュートレースジャンプを開始した。

 目指すのはクァードが向かっている惑星ラメルだった。

無事に危機を脱したクァード艦。

一行は、引き続きラメルを目指す!!

海賊アルガノスもまだまだ秘策を持っている模様・・・。

この戦い、一筋縄ではいかない予感。

次回もご期待ください!!


いつでも評価や感想・レビューお待ちしております!

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