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宇宙艦隊オッパリオン  作者: 桐生スケキヨとYOM
【第1部】【第2章】「Zリーヌンス篇」
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【第2章】宇宙艦隊オッパリオン040話(前編)「超光速戦闘(前編)」

いつも応援してくださっている皆様、ありがとうございます。

YOMです。


今回は「宇宙艦隊オッパリオン」初の試み!!

ワープ中での戦闘です。

スケキヨ氏(ワープ戦闘原案)がうまいこと考え、導き出したワープ戦闘がここに!!

長い戦いになるので分割して、今回は前編です!!

よろしくお願い致します!!

【〇四〇 超光速戦闘(前編)】


「周辺宙域の安定を確認しました。ニュートレースジャンプが可能と思われます」

「わかった。機関部へ準備を伝えて最大艦速にジャンプの用意を進めます。よろしいですね艦長?」


 クァード副艦長のスオリーが言うと、アリメルは頷いた。


「はい。ジャンプに入りましょう。後続の追撃はどうでしょう?」

「依然一定の距離のまま追尾を続けています」

「ふむ……」


 思案するアリメルにスオリーが言葉を挟む。


「相手もここがジャンプ可能宙域であることは察知していると思われます。追いかけてジャンプしてくることも考えられますがジャンプ先が惑星ラメルとは予測してはいないでしょう」

「そうかもしれないですね。そうしたらそのまま振り切れますね」

「おそらくは」

「機関部より。母乳機関出力安定とのこと」

「わかりました。全艦へ通達、本艦はこれよりニュートレースジャンプに入ります」

「全艦へ通達、ニュートレースジャンプ体制」

「了解」


 艦橋よりクァード内全艦にニュートレースジャンプに入る旨が伝えられる。



 ◇ ◇ ◇



『本艦はこれよりニュートレースジャンプに入ります。揺れなどが予想されるため各員は物の固定などを進めてください』


 翔平と奈菜のいる部屋にもアナウンスが流れた。


「翔平、聞いた?」


 ベッドの下に寝ていた奈菜が上の翔平に声をかける。

 なんとなくゴロゴロしてはいたが、ふたりとも寝てはいなかった。


「ああ、聞こえた。これで海賊艦も振り切れるといいな」

「うん……。この先、翔平は不安じゃない?」

「不安は……ないって言えば嘘になるかな。自分が狙われているわけだし」

「なんで翔平なんだろう……」

「それは……わからないな。いつもいきなりだからな」

「そうだよね」

「また奈菜を巻き込んじゃったな」

「ううん。今回は自分から来たんだもの。勝手についてきちゃってごめんね」

「あやまることじゃないだろ。もしなにか危険があっても、奈菜くらいは守ってみせるよ」

「え……?」

「奈菜と自分くらいは守れないとな。せっかくの力があるんだし」

「……ありがとう」


 勝手についてきてしまったことを負い目に感じていた奈菜だったが、翔平の言葉に少しだけ心が温かくなった。しかし足手まといや重荷にはなりたくないという思いも奈菜にはあった。


「ねぇ翔平」

「うん?」

「わたしも母乳が出たらみんなの力になれるかな?」

「ぼ、母乳?」


 奈菜の突然の言葉に翔平は思わず体を起こした。

 そんな時、艦全体が緩い振動をはじめる。


「ひゃっ」

「ジャンプがはじまったのかも」


 しかし――。


『全艦に通達、総員戦闘配備。繰り返す、総員戦闘配備』


 緊迫感を持ったアナウンスが流れる。


「なんだって?」

「ど、どういうこと?」

「わからない……。ジャンプ中は安全じゃなかったのか?」

「でも戦闘配備って……」


 艦橋に行きたい気にもなったが、自分たちがいっても邪魔になるだけかもしれないと翔平は思いとどまった。



 ◇ ◇ ◇



 その十数分前――。


「ニュートレースジャンプ開始」


 クァードは超光速航法であるニュートレースジャンプを開始した。

 これで追っても撒けるはずと、艦橋にいた誰もが思った――のだが。


「か、艦長!」

「どうしました?」

「後続の海賊艦もニュートレースジャンプを開始しました。加速をかけて距離を縮めてきています!」

「なんですって?」


 ニュートレースジャンプ中は通常レーダーは使えないので光学スコープによる実写観測になる。


「このクァードに追いついてきているの?」

「速力さらに加速中! 追いつかれます!」

「全艦戦闘配備!」


 アリメルはほぼ反射的にそう叫んだ。


「艦長、ジャンプ中ですよ?」

「敵艦は接近してきています。なにか仕掛けてくるかもしれません」

「わ、わかりました。全艦戦闘配備」

「りょ、了解! 全艦に通達、総員戦闘配備!」


 クァード艦内に警報が発せられる。


「海賊艦本艦に並びます。距離役二〇〇〇!」

「どうする気でしょう? 超光速中では光学兵器は使えませんよ?」


 スオリーの言うことは理にかなっていた。超高速中では機動兵器も使えなければビーム等の兵器も効果的な運用はできない。


「わからないわ。乗り移るにしても不可能ですし、なにか策があるのかもしれません」


 アリメルがそう言った時、艦橋の扉が開きミィアルーンが飛び込むように入って来た。


「アリメル艦長、ジャンプ中にどういうことだ?」

「あ、博士。敵艦がジャンプ中に加速をかけ本艦に並んできたんです」

「馬鹿な。帝国はジャンプ速度でもこの艦に並んだというのか」


 アリメルの報告にミィアルーンは驚きを露わにした。

 しかし事実である以上、ミィアルーンはすぐにそれを受け止める。


「まったく、帝国もやるものだよ」



 ◇ ◇ ◇



「輪っか付き付録艦を補足。同航軸固定、右舷につけました」

「よし、めずらしく聞いたとおりの性能が出たな」


 クァードを追う海賊艦グアデリアの中で、アルガノスは満足げに顎を撫でた。

 すると艦橋にドロアズが入ってくる。


「キャプテン、ジャンプ中になにをやっているのだ?」

「わかりませんか? 攻撃をしかけるんですよ」


 アルガノスのその言葉に、仮面の下でドロアズは目を丸くした。


「正気かな? 通常兵器は使えんのだぞ? まさかぶつける気ではないだろうな?」

「そこまで切羽詰まっちゃいませんよ」

「ではどうする気かね?」


 ドロアズがめずらしくいらだっている様子がうかがえた。少しだけしてやったりという思いになり、アルガノスは笑みを浮かべた。


「まぁ海賊ですからね。海賊には海賊らしい戦い方ってのがあるもんです」

「乗り込むつもりか?」

「それもできんでしょう。なに、この艦に積んでる試作機はあなたの試作機だけじゃないってことですよ」

「……ほう。私の知らない兵装があるということか」

「切り札――というには使う場面は限られますがね。ですが相手は都合よくジャンプしてくれたわけです。まだ実戦データはない兵器ですが、ちょっと変わり種を積んでましてね」

「それはなにかね?」

「まぁそこで見ていてくださいよ」

「わかった。できれば私の出番は作ってもらいたいものだな」

「それはどうでしょうな」

「付録艦との相対速度同調」

「よし、では仕掛けるとするか。発射管を開け。そんなに数は持ち合わせてないんだ、難しいとは思うが照準は慎重に固定しろよ」

「了解。発射準備にかかります」



 ◇ ◇ ◇



「艦長、どういうこと?」


 クァード艦橋にはフレイアとレマスが飛び込んできていた。


「見ての通りに海賊艦につけられています」

「ジャンプ中に攻撃なんて非常識にもほどがあるでしょ。体当たり意外じゃ攻撃なんてできないはずよ」

「それでも仕掛けるそぶりを見せてきたってことはなにかあるってことだよフレイア。艦長、クァードはもっと加速できないの?」


 レマスの質問に答えたのはミィアルーンだった。


「現在が最高速度さ。これ以上はZリーヌンスでも使わない限りは不可能だろうね。艦体強度としてはまだ耐えられるだろうけど」

「……なるほど」


 その言葉にレマスは納得する。


「そうか、そうかもしれない」


 そんなレマスの顔を見て、ミィアルーンはひとり頷いた。


「博士?」


 アリメルが首を傾げる。


「いや、すまない。超光速戦闘に関する研究は帝国でも行われていてね。あくまで机上の空論にすぎなかったのだけど、あれから進めていたのかもしれない。だとすると――」

「か、艦長!」


 センサー士の慌てた声に、集まっていた面々の視線が集まる。


「敵艦より複数の飛翔体の発射を確認! 全部で五、いえ、六! ミサイルのようです!」

「なんですって!?」

「超光速で接近!」

「この状態で撃てるだなんて!」

「艦長、ミルキィーフィールドは艦首に集中展開中です! 今直撃を受けたら――」


 スオリーのその言葉を遮るようにアリメルは叫ぶ。


「回避!」

「ジャンプ中です! 操舵は危険です!」


 操舵士の判断は賢明なものだった。超光速時はあらかじめ障害物を回避した航路を自動で進んでいるため、手動に切り替えて舵を取れば小惑星などに衝突する危険性があった。


「ミサイル着弾します!」


 直後、艦が大きく揺さぶられる。


「被害状況は!?」


 揺れが収まらない中でアリメルが問う。


「艦首前方に着弾。被害は……え? あ、被害ありません! ミルキィーフィールドによって防げた模様です」

「なんですって?」

「なるほど、そういう兵器か」


 報告を受け、ミィアルーンがひとり納得する。


「どういうことですか博士?」

「あの超光速ミサイルはミルキィーフィールドをまとって射出されるんだ。しかしミサイルは母乳転換炉などを搭載しているわけじゃないので、フィールドはあくまで光速を突破するためだけの短時間なのだろうな。つまり、フィールドを中和するような能力は持っていないということになる」

「それじゃ欠落兵器じゃない? なんでそんなのを撃って――あっ」


 言いながらフレイアには気付いたことがあった。


「その通りだよフレイア。ジャンプ中ならフィールドを中和する必要はない。なぜならジャンプ中は艦首にフィールドを集中させているからね。艦の胴体なり機関部に当てればフィールドがないからそのままダメージを与えられる」

「今のは運良く外れたということですね」

「そういうことだよ。さて、次弾はどうなるか」


 ミィアルーンの言葉に、艦橋は一瞬沈黙に包まれた。



 ◇ ◇ ◇



「超光速弾、全弾艦首部に命中した模様。フィールドの効果に阻まれて損傷は与えられなかった模様」

「なんてザマだ。貴重な初撃をミスるとはな」


 アルガノスは舌打ちする。

 この兵器は史上初の実戦投入となる。できれば初出のまま機関部に当てて足を止めたかったが、運はクァードに味方したということになった。


「初の使用で照準もデータなしじゃあんなものでしょう。次弾装填急げ」


 副長が攻撃を促す。


「ほほう、そんな兵器が積んであったとはな。我が帝国もなかなかにやるではないか」

「まぁ試作らしいですがね。ですが対艦としちゃいっぱしの威力はあるようです。あの付録艦、今の一撃でこの兵器の弱点に気付いてないといいが……それは無理だろうな」

「キャプテン、ジャンプ中に機関部に当てたらどうなる?」

「前例がないのでわかりませんが予想としてはフィールドの消失と急ブレーキの衝撃で艦体は木っ端微塵になるでしょうな」

「それは素晴らしい。が、撃沈確認が面倒になるな」

「でしょうな。できれば機関部に損傷を与えて徐々に減速させるのがのぞましいのですが」

「その必要はない。艦側面に命中させればいい。相手は反撃できないこの状況を活かし、次の一撃で撃沈するべきだな」


 ドロアズの進言は戦術としては正しかった。今、グアデリアは圧倒的有利な状況にある。

 しかしアルガノスとしてはZリーヌンスの奪取が頭にあったため、木っ端微塵に撃沈するよりは機関部へのダメージが好ましかった。


「それではドロアズ殿の出番がなくなってしまいますが?」

「それは惜しいが任務達成が優先だろう。同じような失敗をするような私ではないので、機会は活かしたい。砲撃士、照準を艦側面へ固定」

「いいのですかキャプテン?」


 砲撃士が聞き返してくるが、アルガノスは頷くしかなかった。


「ドロアズ殿の言う通りに、だ。……次は外すなよ」

「発射後のデータが取れました。照準修正で次は当てられます」

「なら……頼む」


 ――アルガノスは胸中、初撃を逃れたクァードの幸運に賭けた。艦側面を狙うが、逸れて機関部へ当たってくれと願う。


「照準固定確認!」

「よし、超光速弾、撃て!」


 アルガノスの命令で、クァード目がけ二撃目の超光速弾が発射される。



 ◇ ◇ ◇



「――というのをやるしかないでしょ、艦長」

「しかしそれは……」


 対応を迫られる中、レマスからひとつの提案がなされていた。


「あたしはそれに賛成。機動兵器も使えないんじゃそうするしかないって。博士としてはどう?」

「いち科学者の立場からするとあまりおすすめはできない。機関部が損傷したらそれこそ終わりだからね。だけどそのリスクを負ってでも試す価値はあると思うね。いい案だよ。実行するにせよ別の案にせよ、ショウヘイに伝えてくる」


 ミィアルーンは結論を待たずに艦橋を出て行った。

 フレイアの視線の先には悩むアリメルがいる。


「艦長、決断して。時間がないわ」

「わかっています。しかしそんなことが本当にできるのか……」

「理論的には可能だよ。この艦を信じて」


 レマスが進言する。


「敵艦、速度同調。次弾発射の可能性があります!」

「次は当ててきますよ艦長」

「わかっていますスオリー。なら――レマスが言った方法を試してみるしかなさそうね」

「ありがとうアリメル艦長」

「言ってみるものね、レマス」


 緊張感のある中、フレイアとレマスは笑顔を向け合った。


「進路上の情報収集を急いでください」

「了解しました。――ですが本当に可能かどうか……」


 操舵士はコンソールを操作しつつ、そうつぶやいた。


「大丈夫、この艦の幸運が味方してくれます。きっと」


 アリメルはそう、操舵士に声をかける。


「速度は限界まで上げてください。少しでも敵艦との距離を取りましょう」

「了解です」

「敵艦よりミサイルの発射を確認! 数は六! 速度は前回と同じで当艦を目がけてきます!」

「最大加速!」


 アリメルの声に応じるように、操舵士は加速スロットルを最大まで解放する。だがすでに最高速を出していたクァードの加速は微々たるものだった。


「艦長!」


 フレイアが叫ぶ。


「まだ準備ができていません! この一撃はやりすごします!」

「どうやって!?」

「ミルキィーフィールドで受けるしかありません!」

「……祈るしかないってことか……」


 フレイアはそう呟くと、壁際にある椅子に座り体を固定した。レマスもそれに倣う。


「ミサイル接近! 艦側部への軌道!」

「総員対衝撃姿勢!」

「全艦へ通達! 総員! 対衝撃姿勢!」


 艦長の言葉に全員が体を強ばらせる。


「着弾します!」


 センサー士のその言葉の直後、クァード全体が激しく揺れ、大きく傾いた。


「当たったの!?」

「ちょっとマズい揺れだったよ」


 フレイアとレマスが言う。


「ひ、被害は!?」

「右舷下方部に二発の被弾を確認。装甲板が破壊されましたが内部への損傷は軽微の模様。側面の砲門も外れてくれました」

「進路方向に影響が出ています。――が、誤差修正軌道に自動補正されます」

「全弾受けていたらマズかったですね。重くなると不評だった追加の装甲板が役に立ってくれたようです」


 スオリーはどこか安堵したようにそう言った。


「壊れた装甲はパージしてください」

「了解。艦体勢復元します」


 損壊した装甲が廃棄され、クァードの傾きが修正されて水平姿勢を取り戻す。


「ふぅ……本当に幸運艦ね、このクァードは」


 フレイアも胸をなで下ろす。


「でもまだ油断はできないよ。次も来るって」


 レマスが注意を促すとアリメルは頷いた。


「次に仕掛けて来た時に勝負を仕掛けます。格納庫の博士に連絡してください。そちらの準備はどうでしょう?」

「確認してみます」

「敵艦速度減速、当艦に同調してきます。再び側面に並びます」

「三発目を撃ってくる気ね。そう何度も通じるものですかっ」


 フレイアが息巻くが、その言葉にアリメルも頷く。


「次の一撃でレマスさんの言っていた方法を試してみます。うまくいけばこの状況を打開できるはずですから」

「うん、お願いします、艦長」

「あーもう! 機動兵器が使えればこんなじれったい思いはしなくて済むのに!」


 フレイアは椅子に体を固定したまま、やりきれない思いを募らせていた。



 ◇ ◇ ◇



「そんな方法を試すんですか?」


 格納庫へ向かう途中、翔平と奈菜はミィアルーンに現在の状況とその打開策を聞かされていた。


「この不利な状況ではそれくらいしかできないからね。帝国の技術力も見上げたものだよ。超光速ミサイル、言うなればニュートレースミサイルってところだろうね。そんなものを完成させていたなんて」

「ほ、本当に大丈夫なの――きゃあっ!?」


 奈菜が不安な声を漏らした直後、艦が大きく揺れて傾いた。


「奈菜!」


 翔平は慌てて奈菜の体を支える。


「おっと、これは直撃を受けたね」


 ミィアルーンはそう分析したが、物言いは落ち着いていた。


「だ、大丈夫なんですか博士?」

「このくらいの規模の艦だからね。ビームの直撃はマズいけどミサイルの一発二発はたぶん大したことはないよ。少し減速はするだろうけど、すぐ復元する。アスタリア型の艦は頑丈に作ってあるって聞いたよ」

「だといいんですが……急ぎましょう」

「うぅ……」


 奈菜は不安そうに翔平の手を取る。

 少し格納庫に通じる角を曲がった辺りで艦が水平に戻った。


「博士っ、ゼータリオンを動かすって?」


 格納庫に行くなりリクサーヌが声をかけてくる。


「あぁ、ちょっとした実験みたいなものだよ。実戦の最中だけどね」

「ついに!」


 リクサーヌはどこか楽しげな様子だった。


「翔平、こっちへ。ナナとわたしもコクピットに入った方がいいね。リクサーヌも機動兵器の中で待機した方がいい。どんな機動になるかわかったもんじゃないからね」

「え? りょ、了解。リアリィやシュレンにも伝えておく」


 リクサーヌは速やかにその場を移動していった。

 翔平たちがゼータリオンへと向かうと、コクピットハッチは開かれていた。


「なんだか懐かしい……」

「Zリーヌンス機関とコクピットはいじってないよ。その他は少しいじらせてもらったけどね。さぁ、ナナも入って」

「う、うん」


 奈菜が先に入ると、ミィアルーンも座席後部に身を潜らせた。続いて翔平が乗り込み、シートに体を固定する。


「ショウヘイ、今のゼータリオンは完全に停止しているんだ。まずはその起動からはじめないといけない。コンソール下にあるスタータースイッチを押し込んでみてくれ」

「これかな」


 言われた通り、コンソールパネルの下部にあった大きめのスイッチを押し込む。するとカチリという感触の直後、機体が微妙に震えだした。


「起動成功だ」


 モニターはすぐに点灯し、チェックの文字列が少しだけ流れた後は外の様子を映し出した。コンソールパネルにもアイコン群が表示される。


「今は予備の母乳転換炉で動いている状態だね。ここからショウヘイがZリーヌンスを発動させればZリーヌンス機関に動力が切り替わるはずだよ。そして余剰エネルギーがクァードにも供給されるようになってる。この外部にエネルギーを供給する能力は前回より改善されて専用の回路のようなものが確保されているんだ。だから、クァードや近くにいる機動兵器には前回以上の恩恵があるのさ」


 ミィアルーンは嬉しそうだった。


「よ、よし……」


 翔平が操縦桿を握り気合いを入れようとした時、側面モニターに艦橋の通信士が映る。


『艦橋よりゼータリオンへ。起動を確認しました。Zリーヌンス解放のタイミングまで現状のままで待機願います』

「りょ、了解。まだ待ってなきゃダメだ」

「相手に悟られるわけにはいかないからね。上手くコントロールしてくれ、ショウヘイ」

「やってみます」

「博士、これってわたしに母乳力があれば翔平と一緒に動かせるんですか?」

「そうだね。ゼータリオンは母乳力と一緒に使うことで真価を発揮するようになってる。でも誰の母乳力でもいいというわけではなさそうなんだ」

「そうですか……」


 奈菜とミィアルーンがそんなやり取りをしているのを聞きながら、翔平はコンソールのエネルギー表示を見た。今の出力は一〇%程度で、母乳転換炉と表示されていた。


「奈菜がゼータリオンに乗ることはないよ。これは俺に任せておけばいい」

「で、でも……なにもできないってのも嫌よ。わたし、母乳の出し方をオッパリオンの人に聞いてみる」

「き、聞いてわかるものなのか?」


 そんな疑問が頭をよぎる中、モニターには艦長のアリメルが表示された。


『クァード艦長のアリメルです。本艦はこれより敵艦の攻撃を回避し、追撃を振り払う行動に出ます。ですが本行動は前例のない行動になり、高いリスクを伴うことを乗組員に通達します。各人、周囲の物と体を固定し、艦橋からのアナウンスに注意してください。危険な賭にはなりますがクァードには度重なる幸運がついていますし、今はZリーヌンスの恩恵もあります。復元後には各員の奮闘が必要となりますが、今この時は、皆の命運をこのアリメルに預けていただきたく思います』


 艦長の真剣な言葉に、翔平は操縦桿を握りしめた。

 奈菜は無意識にとなりのミィアルーンの腕を掴んでいた。


「怖いかい? ナナ?」

「博士は怖くないの?」

「科学者の性分なのか、前代未聞ということにわくわくしてるというのが正直なところかな。なに、万が一艦がバラバラになってもゼータリオンで外に放り出されるくらいだろう」

「そ、そんなの嫌ですよ!」

「俺だってそれは困ります」

「ははは、じゃあ成功を祈ろうか」


 ミィアルーンの言葉にはまるで緊張感がなかった。

オッパリオン人と翔平と奈菜を乗せたクァードがとった作戦は果たしてうまくいくのか!?

緊迫のワープ戦闘はまだまだ続く!!

果たして、クァードは無事に目的地である惑星ラメルに到着できるのだろうか。

次回もご期待ください!!

宇宙艦隊オッパリオンまだまだ続きます!!


評価・感想・レビューいつでもお待ちしておりますので、併せてよろしくお願い致します。

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