【第2章】宇宙艦隊オッパリオン035話「海賊艦グアデリア」
今回の更新は海賊話。
火星ステーションで、再び海賊艦に襲われることとなった翔平と奈菜。
二人は、フレイアと名乗るオッパリオンの少女に窮地を救われる。
そしてフレイアの僚機であるシュレンとリアリィの援護もあり、無事に戦闘艦クァードに帰還を果たすこととなった。
その頃、急な撤退をした海賊部隊は・・・。
【〇三五 海賊艦グアデリア】
「ドロアズ機の収容を確認。コクピットから直接回線が来てますがどうしましょう?」
「繋げ」
「了解」
アルガノスはどこか渋々と言った面持ちでそう告げた。海賊艦グアデリア艦橋のメインモニターの隅にはドロアズが映る。
『キャプテン、命令には従うがどうして撤退命令を出したのだ?』
「わかっているとは思いますが後続の機動兵器がもう活動限界近かったのです。ドロアズ殿単機で戦わせるわけにはいかんでしょう」
アルガノスがそう答えるとモニターの中のドロアズは笑みを浮かべた。
『それは余計な気を遣わせてしまったな。輪っか付きの付録ごときに私が遅れを取るとでも?』
「そうは思っちゃいませんよ。実際に輪っか付きをやったのはあなたですからね。ですがチームワークというものもあります。自分は立場上味方に損害を出すのは避けたいものですからな」
『今回のところは懸命な判断だったということにしておくよキャプテン。だが次からは機動兵器部隊の撤退は私の判断に従ってもらうことにしよう。みすみす宝を取り逃すようなことはこれで最後にしたいものだな』
「受け入れましょう。しかしあなたももう少し早く出撃なさっていれば戦局も変わったかもしれませんな」
『言ってくれるなキャプテン。私が出ずとも目的は遂げられると思ったことは私に非があるのはたしかだ。だから今回の件は報告しないでおくとしよう』
「そりゃ助かります」
『引き続き追撃を頼む。Zリーヌンス殲滅が我々の任務なのだからね』
「わかってますよ」
そう残し、ドロアズからの通信は閉じた。
「やれやれ、陛下の勅命とは言え厄介なお方だ」
アルガノスは思わず本音を漏らした。
「いいんですか、そんなこと言って」
「聞かれなければかまわんだろう。告げ口でもするか副長?」
「とんでもありません」
「なら問題あるまい。まったく、Zリーヌンスに関わるのはこれだから面倒だ。あの力を甘く見るとどんな目に遭うかわからんからな」
「ドロアズ殿はそこを理解できておらんのでしょう。オッパリオン星侵攻作戦にも参加されてませんでしたし」
「輪っか付きには化け物じみた破壊力があるからな。正面切っては戦いたくないものだ。あの付録艦にもどんな隠し能力があるかもわかったもんじゃない」
アルガノスは慎重な姿勢を見せていた。しかし同乗するドロアズはそうではなかった。自身の受けた任務まっとうのため、勇み足でことに望んでいる。
「機動兵器の扱いは天賦の才があるようだが、実戦はもっと慎重に進めてもらいたいものだな、あの青二才には」
「問題発言ですな、キャプテン」
「聞かれなければ問題ない」
そう言い、アルガノスは笑みを浮かべた。
「付録艦の追尾はどうなっている?」
「付録艦、加速をかけている模様。短距離ジャンプをするかもしれませんね」
「そうか。まぁどこに行ってもお宝を載せている以上追撃はできる」
「輪っか付きと合流するのではないでしょうか?」
「そうすれば輪っか付きの居場所もわかる。こちらとやり合う準備が整わなければ合流はせんだろう」
「ではどう動きますかね、あの付録艦は」
「ふむ……。お宝を載せたまま宇宙遊覧をして回るとは思えんが……個々にオッパリオンに帰るとも思えんな。オッパリオン人には予言者がいて予言をすると言うが、今回連中が我々の動きを察知したのも、あながちそんな馬鹿げたことに起因するのかもしれんな」
「予言、ですか」
「にわかには信じられんがな。まぁここは連中を追撃して合流前にもう一度叩くとするか。短距離ジャンプをするならその地点に先回りして待ち伏せをしかける。ジャンプ速度はこのグアデリアの方が出るからな。母乳の消費量は多いが」
「了解しました。あの青二才も納得するでしょう」
「ふん、まったく面倒だよ。陛下はお宝を殲滅しろと仰ったが殿下は未だに奪取を望んでおられる。中間管理職になんてなるものじゃないな」
「青二才をうまく使ってやりましょう」
「そのつもりだ。輪っか付きの捜索に残した艦からの連絡はないか?」
「依然ありません」
「通常通信がきかないですからね。マシウスとディジル隊が残っているので心配はありませんが、こちらも機会を見て合流した方がいいかもしれませんな」
「そうだな……。連中の航路を見て挟撃を仕掛けるか。一隻ずつ潰していくのが定石だろうな。超光速通信で連絡を入れておけ」
「了解しました」
クァードの追撃をはじめ、海賊艦グアデリアの艦橋にも慌ただしさが満ちてきていた。
◇ ◇ ◇
海賊艦グアデリアの格納庫。ドロアズは自身の専用機、アムズガルドの中にいた。
その機体は試作機ということもあり、戦闘後はいろいろと情報を記録していくことが多く、すぐに降りるというわけにはいかなかった。
「データはもらいました。なにか不備はありませんでしたか?」
開いたハッチの外から整備員が声をかける。
「問題ないよ。瞬発力も問題ないがもう少しリミットを解放してもいいな。対艦戦になるともっと速度がいる」
「これ以上は体に負担がかかりますが」
「その程度は鍛えてあるさ。新型スーツもよく動いてくれるしな」
「わかりました。二〇%ほど解放してみましょう」
「頼んだ。私はこれでよいのだな?」
「お疲れ様です。次の出撃まで休んでください」
「今回は出て帰ってきただけだ、そう疲れてはいないよ」
「休むのも仕事ですよ」
「わかっている」
ドロアズは整備員の肩を叩き、コクピットから体を出した。
「まったく、海賊らしいというか、非正規部隊はどこか悠長なものだな」
そんなことを漏らしながらハッチを蹴り、無重力に任せて控え室へと体を流した。
すると、ドロアズの向かう先にひとりの青年が立っていた。ドロアズが近づくと敬礼してそれを迎える。
「ギドル、敬礼はよせ。ここは正規軍じゃないんだぞ」
「ハッ、失礼しました」
「なにか用か?」
「先ほどキャプテンより連絡があり、付録艦の追撃に入るとのことでした」
「ふん、そうでなければ困る」
ギドルはドロアズ直属の部下で、もとよりこの艦にいた者ではなかった。ギドルもまたパイロットなのだが、今回は控えとして待機を命じられていた。
ドロアズが足を付けると、ギドルもそのそばに立つ。
「しかし――この艦のキャプテンはなぜか消極的ですね」
「臆病なんだろう。以前にも例の宝の力とやらを見たことがあるそうだが、それに相当臆しているようだ」
「そんな人物が今回の任務に当たる理由がわかりません」
「実績ということなのだろうさ。初見の人間よりは使えるという判断なのだろうな。だがそれに不安があったので私が送り込まれたのだろう」
「それはわかりますが……」
「ギドル、歯がゆい思いをしているのは私も同じだよ」
「ハッ。ドロアズ様ならメルクコアの機動兵器数機に遅れをとることはないかと」
ギドルは笑みを浮かべ、そう言った。
ドロアズも仮面の下に笑みを作る。
「そう思いたいな。だがあの付録艦の部隊はかなりの手練れだ。連携されるとさすがに厄介に思える。できれば分断して片付けたい」
「次の機会にそうしましょう。次は私も出撃させてもらいます」
「期待しているぞギドル」
「ハッ、ありがとうございます!」
ドロアズの言葉に感激したギドルは再びドロアズに敬礼する。
「敬礼はよせ。今は海賊だ」
「失礼しました!」
「海賊らしくな。時には演じることも大事だし、この時を楽しむといい」
「わかりました」
そうは言うギドルではあったが、その態度からは堅さが抜けきらないでいた。
ドロアズは後ろの自機を振り返る。
現状のマーラ帝国で最高峰の技術をつぎ込んで開発された、最新鋭の機動兵器。その出力はオッパリオン製の機動兵器を上回る性能を持っている。だが実戦でのデータは取りながらの整備になるため、不安定な部分も残っていた。しかしそれを補ってあまりある性能に、ドロアズはかつてない満足感を得ている。この機体があればどんな敵であろうと撃破できる、そんな自信があった。
「ふんっ、輪っか付きであろうが例の提督であろうが……」
仮面の下でドロアズはひとりつぶやく。
自分の受けた勅命はお宝――Zリーヌンスとその能力を扱える兵器の殲滅。この任務が終われば、自分の出世は確実なものとなる、栄光の階段のようなものだった。いずれはマーラ帝国軍を統べたいと願うドロアズに取って、今回の任務は好機と言ってもよかった。
連れてきた部下のギドルはまだ若すぎて不安は残るものの、優秀なパイロットであることには変わらない。そして自分への信仰も抱いており、今回のような秘匿任務に連れてくるには最適と判断することとなった。
次の出番がそう遠くなく訪れることを願いつつ、ドロアズは自信溢れる態度で控え室へと向かうのだった。
次回よりクァード発進開始の予定です!
迫りくる海賊達と、個性豊かなクァード艦のメンバーとの戦いを是非ご覧ください!
評価・感想・レビュー等、いつでも受け付けておりますので、オッパリオン気に入ってくれた方がいらっしゃいましたら宜しくお願いします。
次回更新予定は水曜日です!
お楽しみに!!




