宇宙艦隊オッパリオン030話(1章完結)「地球への帰還」
長らくお付き合い頂きました読者の皆様ここまでありがとうございます。
YOMとスケキヨのオリジナルおっぱいSFファンタジー小説をご覧頂き誠に感謝感激です。
それでは、最終話へさっそく行きましょう!!
母乳をかけた宇宙の戦いも最後。
そして、宇宙に新たなる母乳力が生まれる・・・。
【〇三〇 地球への帰還】
オッパリオン首都で補給と機関部の修理を受けたスタティアは翔平と奈菜を送り届けるため、水平の銀河――太陽系銀河へ向けて出航した。
その間、オッパリオンを包囲していた帝国軍は撤退しており、オッパリオン本星へはすぐに進軍できない距離へとなっていた。
帝国軍の撤退に合わせオッパリオン軍は前線を押し上げ、衛星軌道よりやや離れたところに強固な防衛ラインを築くに至っている。
侵攻状態であった帝国は一転、休戦の状態へと変化したのであった。
そのため、スタティアが水平の銀河へ向けて出航した際も追跡を警戒したものの、追跡の艦影は現れなかった。
スタティアは一度目のニュートレースジャンプを終え、通常の航行速度で二度目のジャンプに備えていた。
◇ ◇ ◇
「次のジャンプを終えれば水平の銀河、キミたちで言う太陽系銀河に出るね」
艦内にある休憩室で、ミィアルーンがそんなことを言った。
「博士にもお世話になりました」
「ふふ、本音を言うと研究対象が去ってしまうのは心残りがあるね。Zリーヌンスはまだ解明されていないことが多いからね」
「自分でもまだ信じられませんが……これって母乳力を必要とする場合でないと効果は発揮されないんですかね」
「正直それはわからないな。オッパリオンの古文書の中にZリーヌンスで稼動する機関のデータはあったのだけど、Zリーヌンスがエネルギーであることに変わりはないからね。もし自分の星に戻って生活をしたとして、Zリーヌンスがなにかしらの影響を与えることはあるかもしれないね」
「そうですか……。気を付けないといけないかも」
「とは言うものの、現状では母乳機関がなければそのエネルギーを有効活用することはできないだろうね。キミ意外にその力を発現させることはできないのだから、汎用性のあるエネルギーというわけでもないし。海賊たちがキミの力を欲しがっていたけど、手に入れたところで果たして活用できたかどうかは怪しいところではあるかな。一緒にスタティアやゼータリオンまで手に入れられたとしたらまずいことにはなるだろうけど」
「なるほど。じゃあ、地球に帰っても普通に生活はできそうですね」
「よかったね、翔平」
『全艦へ通達。本艦はこれよりニュートレースジャンプに入ります。総員、衝撃に備えてください。繰り返します、本艦はこれよりニュートレースジャンプに入ります――』
艦内アナウンスの後、艦全体に微妙な振動が起こった。
安定した宙域でのニュートレースジャンプはほとんど振動を起こさない、快適なものだった。
「博士、オッパリオンの人たちは地球人と接触するんですか?」
「その件なのだけど――」
ミィアルーンが言いかけた時、休憩室の扉が開いた。
「おや、提督」
そこにはアーリアがいた。
「平和な航海は久しぶりね。拍子抜けするくらい。いいものね」
言うアーリアに緊張感はなく、リラックスしているように見えた。それでも、翔平から見ると十分に凜々しく感じられる。今回自分たちが無事に帰れるのは、間違いなくアーリアの働きによるものだろうと、翔平は思っていた。
「提督、ショウヘイたちを送って行った時の我々なのだけど――」
「そうね。わたしたちはショウヘイたちの住む地球へは近づかないわ」
「え、そうなんですか?」
「ええ。アティ様とも相談したのだけど、わたしたちはまだ地球の人たちと接触するべきではないと考えたわ。帝国とのことも終わっていないし、今地球と接触して交流を持ったとして、帝国が地球へ侵攻を開始する可能性が出てきてしまうわ。だからそれを避けるためにも、今はわたしたちとの交流はするべきではないかと」
「……なるほど。そうかもしれませんね」
「せっかくの異星文化なのに……」
奈菜はどこか残念そうな表情をした。
「わたしたちと交流することでショウヘイたちのいる地球の技術レベルは上がるかもしれないけど、危険も高まる可能性があるわ」
「異星文化交流とはそんなものなのかもしれないね。わたしがショウヘイから聞いた話から察するに、地球という星の技術力はオッパリオン星系と比べて三〇〇年くらいの差があるかもしれないと思っているよ」
「さ、三〇〇年!? そんなに!?」
オッパリオンとの技術の差に、奈菜は思わず驚きの声を上げた。
「超光速航法も確立できていないようだからね。いわゆる外宇宙へ進出もできていないとのことだったから、それくらいかなと」
ミィアルーンはどこか楽しげな笑みを見せた。
「ナノマシンとかもオッパリオンの技術は進んでましたしね」
「ああ。もしキミたちが帰って血液を調べられたとしても、我々のナノマシンを解析して模倣するということもできないはずだよ。なにかわからないものが機能している、くらいしかね」
「そういえば、ナノマシンはこのままで大丈夫なんですか?」
「問題ないよ。一度注入したナノマシンは体内で自己メンテをしつつ半永久的に機能するけど、長く使われない場合は休眠状態に入ることになってる。日常生活に支障はないし、困ることはないよ。その代わり、ナノマシンの活用もできなくなるから日常生活が便利になることもないけどね」
「じゃあ、本当に元の生活そのままになるってことですね」
「そういうことだ」
奈菜の言葉に笑顔のミィアルーンが頷く。
「ではショウヘイ、ナナ、あなたたちが帰るためのシャトルへ案内するわ」
「わかりました」
「翔平、操縦できるの?」
「ふふ、そこは心配いらないよナナ。ショウヘイは機動兵器の操縦もできたんだから。シャトルの操縦はさらに簡単さ」
ミィアルーンは楽しそうにしている。
「そういうことだね。ナノマシン制御だからほとんど自動で操縦できるよ。ショウヘイたちを回収した位置でスタティアから離れる航路を予定しているよ」
「木星圏からか……結構遠いな」
「キミたちの航行技術だと片道に一五日ほどかかると聞いたけど、オッパリオンのシャトルなら三日くらいで帰れるはずだよ」
「そうね」
ミィアルーンの説明にアーリアも頷く。
「シャトルは着陸後に機関を停止させたら主機関や電子部分は自動的に破壊されるようになっているから、母乳転換炉の技術が地球に漏洩する心配もない。異星文化交流になる心配はないよ」
「ま、待ってください博士、アーリアさん」
奈菜が少し慌てた様子で言葉を挟む。
「わたしたちがみんなと交流を持ったことを話すのもダメなんですか?」
「それは大丈夫ね。ショウヘイやナナが見聞きしたこと、体験したことを話す分にはなんの問題もないわ」
「ほっ……それならよかったです。こんな貴重な体験ができたんだもの。異星文化交流学の役に立てなくちゃ」
「まぁ信じてくれれば、だけどね」
「もう、そんなこと言わないでよ翔平っ。シャトルがあるんだもの、信じてくれるわよっ」
「ははは、まぁそれくらいの物証はあってもいいだろうね。地球という星がオッパリオンを目指してくれるようになるなら、それはそれでいいことかもしれない。外宇宙には危険も多いけど、得られるものも多いと思うからね。科学者としての意見だけど」
楽しそうに語るミィアルーンを尻目に、アーリアは扉のところまで移動する。
「さぁ、ついてきて」
「わかりました。行こう、奈菜」
「うん」
「どれ最後の見送りだ、わたしも行くとしよう」
と、座っていたミィアルーンも腰を上げた。
◇ ◇ ◇
機動兵器が立ち並ぶ格納庫には一機の小型シャトルが固定されていた。
「オッパリオンにある旅行用のシャトルね。機関部を博士が母乳転換炉にしてくれてあるわ。大気圏突入もできるし、数ヶ月は快適に過ごせるくらいの居住性もあるわ」
「ありがとうございます。こんないいものまで用意してもらって」
「あなたにもらったものを考えると安いものよ」
アーリアに機内を軽く案内してもらった。このサイズのシャトルでも重力を発生させることができるらしく、機内では快適に過ごせるということになっていた。
コクピットに通されるとそこは思いのほか広く、機長席と副機長席があった。
「操縦はさっきも言ったようにナノマシン制御で行えるわ。航路は目標の星を指定すればそこまで安全な航路を取ってくれるわ。水平の銀河の情報は古い情報しかなかったけど、たぶん大丈夫なはずね。ちょっと見てもらえるかしら?」
「わかりました」
アーリアに促され、翔平は席に座った。
操縦桿の前にあるコンソールモニターに海図が表示されると、そこには木星と表記された海図が表示されていた。
「えっと、木星がここだから……地球はここか」
海図にはしっかりと地球が表示されている。そこを指定すると、航路が自動で設定された。
「スタティアを離れて星の圏内に入ったら通信装置を使って手近な空港か基地に呼びかけてみて」
「はい。たしか宇宙遭難者を受け入れる決まりがあるんで、それでどこかの空港に降りられるはずですので」
「なら安心ね」
「アーリアさん、海賊から助けてもらった時からお世話になりました。本当にありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらの方よ」
「もしまた俺の力が……Zリーヌンスが必要になったら、いつでも地球に来てください」
「ありがとう。それはありがたいわ。けど、そうならないようにするのがこれからのわたしたちの役目でもあるからね。Zリーヌンスは強力だけど、ずっとそれに頼るというわけにもいかないわ」
「でも、必要な時はいつでも」
「そうね。その時はそうさせてもらうわ」
『全艦に通達、本艦は間もなくニュートレースジャンプを終了します。総員衝撃に備えてください。繰り返します――』
「お、もう着くのか」
「二回目の航路だからね。宙域も機関部も安定しているし、前よりも速度は向上しているわ。――ショウヘイ、シャトルを起動して。そろそろ時間よ」
「了解しました」
アーリアに促され、シャトルを起動させる。
動作を見守る穏やかなアーリアの表情に、翔平はどこか名残惜しさのようなものが感じられた。
『艦橋よりシャトルへ。起動を確認しました。離艦可能になるまでもう少しお待ちください』
「了解しました」
「――ではショウヘイ、本当に、力を貸してくれてありがとう。地球という星に戻っても元気でね」
「ありがとうございます、アーリアさん」
「ありがとうございます」
アーリアは最後に敬礼を残し、シャトルのコクピットから出て行った。
「…………」
翔平はアーリアが出て行った扉を見つめていた。
「翔平……もしかして残りたいの?」
「え? どうして?」
「なんか、名残惜しそうにしてる」
「そんなことは――ないよ」
即座にそう答えはしたものの、翔平の中には微かなひっかかりがあるのは事実だった。
自分が地球から遠く離れたオッパリオンで必要とされた理由や、Zリーヌンスという力の正体もわかっていない。
もう少しここに留まればそれもわかるのでは――そんな思いも確かにあった。
でも――自分には奈菜と帰るべき日常もある。
「帰ろう、奈菜」
「うん」
『艦橋よりシャトルへ。離艦体勢が整いました。そちらのタイミングで発進できます。――ショウヘイさん、本当にありがとうございました』
「スタティアの皆さんにもお世話になりました」
「翔平、見て!」
「うん? あ――」
シャトルの窓から外を見ると、格納庫にはアーリアをはじめ、機動兵器パイロットやミィアルーン、その他多くのスタティア乗組員が見送りに立っていた。
手を振るみんなに、奈菜が手を振る。
「じゃあ行くよ奈菜」
「うん」
「こちらシャトル、発進します」
『了解しました。旅のご無事を』
翔平はシャトルを動かし、スタティアから離れた。正面には巨大な木星が見える。それはいつか見た景色と同じ景色だった。
「さようならスタティア――」 翔平はそう呟き、シャトルを加速させた。
◇ ◇ ◇
「シャトルは無事に航路に就いていきましたよ」
アーリアが艦橋に戻ると、ミストレアはそんな報告をしてきた。
「そう、それはよかったわ。安全な旅だとは思うけどね」
「もう少し見守られますか?」
「いえ、我々も戻りましょう、オッパリオンへ」
「わかりました」
ミストレアが頷くと、それに反応するかのように、今まで静かにしていたシアが立ち上がった。
「シア?」
「Zリーヌンスはオッパリオンを救った。――でも、まだやることはある」
「珍しいわね、シアがそんなことを言うなんて」
「そう? しばらくは帝国の動きを見張る必要があると思う。この水平の銀河に来る可能性だってあるから」
「そうね。監視は続けておきましょう。――ショウヘイたちがどうなるか、予言はないのかしら?」
「わたしにもわからない。ただ――Zリーヌンスの力はまだ目覚めたばかりだから。なにかが起こってもそれは不思議ではないわ。それに母乳力とZリーヌンスは惹かれ合う、ふたつでひとつの力だから」
「……そうね。でも、もうZリーヌンスに頼るような事態にはしたくないというのが正直なところね」
「うん」
シアは頷くと、再び腰を下ろし、まぶたを閉じた。
「艦長、進路をオッパリオンへ。ニュートレースジャンプの用意を」
「了解しました。スタティア、進路をオッパリオンへ。全艦ニュートレースジャンプ用意」
ニュートレースジャンプの用意に入り、艦橋には慌ただしさが戻った。
アーリアは正面に見える木星を見つつ、不思議な感覚にとらわれていた。
それはどこか懐かしいような、またこの光景を見ることになるかもしれないという、そういう感覚だった。
だがそれは共に戦った翔平との別れが起こした一時の感傷だと思い、感情を塞ぎ込む。
「提督、ニュートレースジャンプ整いました」
「ありがとうミストレア。スタティア、ニュートレースジャンプ、目標、オッパリオン」
木星圏より、スタティアはニュートレースジャンプに入りオッパリオンへと向かって消えた。
スタティアが消えたその後には光の粒子が微かに残されていた。
そうして、この宇宙にまた新たなる母乳力が生まれる・・・。
それはきっとそう遠くない未来。
その胸に確かにある母乳力。




