宇宙艦隊オッパリオン029話「決着」
今回のオッパリオンは最終回二本立て。
まずは29話の更新です。
長らく続いてきたオッパリオン軍とマーラ軍の戦いも終わり、翔平はスタティアへと無事帰還する。
翔平と奈菜の運命はいかに。
オッパリオンを巡る戦いのラストも宜しくお願いします。
果たして、母乳力の先に何が待ち受けるのか!?
【〇二九 決着】
「翔平っ!」
スタティアに帰還し、コクピットハッチを開けると共に奈菜が飛び込み、抱きついてきた。
「うぉっ、奈菜?」
「心配したんだから……! もう!」
「なんとか上手くやってきたよ」
「うん、博士からそう聞いたよ。でも……心配だったんだからね」
「奈菜のいるこの艦も守らないといけなかったしね。なんとか無事に帰ってこれたよ」
「うん……」
抱きついている奈菜をそっと離すと、奈菜は涙ぐんでいるように見えた。
「ナナさん、ご心配をおかけしました」
そんな奈菜にアティも言葉をかける。
「い、いえ、心配はしましたけど……皇女様もありがとうございます! 翔平と一緒にいてくれて」
「それはこちらの言葉です。ショウヘイさんには多大な力をお借りしました」
アティは後部座席を離れ、奈菜の手を握る。
「この戦いの結果はオッパリオンの未来を大きく変えることになるでしょう。ありがとうございます」
「お、お礼ならショウヘイに……」
「ナナさんにも勝利を願ってもらっていたので」
と、アティは奈菜に微笑んで見せた。
するとハッチにはミィアルーンが姿を見せた。
「皇女殿下、お疲れ様でした。皇女殿下の母乳力は思いのほか強力に効果を発揮してくれたようです」
「それは喜ばしいことです。ミィアルーンもご苦労様でした」
「いえいえ。さぁ皇女殿下、ショウヘイ、艦橋へ行こう。提督たちもすでに向かっているよ」
「まだ戦闘があるんですか?」
「いや、もうないと思うよ。帝国軍は撤退を開始しているようだよ。あれだけの戦力を失ってはもう戦線の維持は難しいだろうからね。でも、戦闘の事後処理のようなものがあるよ。提督は追撃はしないようだけどね」
「わかりました。ショウヘイさん、一緒に艦橋へ行きましょう」
「はい。奈菜も一緒に」
「う、うん」
ハッチから外に出ると、機動兵器を整備するスタッフたちで格納庫は賑わっていた。全機が一斉に帰投したということもあり、すぐに修理などが行われはじめている。
「機動兵器は常にベストな状態で動けるようにしておかないといけないからね。戦闘はないかもしれないけど、あるかもしれないという想定しておかないといけないんだ」
「そうなんですね。ゼータリオンもお願いします」
「スタッフに伝えておくよ。わたしは別にやることがあるから、皇女殿下と共に艦橋へ向かってくれ」
「わかりました」
ミィアルーンに見送られ、翔平たちは艦橋へと移動する。
艦内は戦闘の時ほどの慌ただしさはなかったものの、どこかまだ緊張の糸は緩んでいるとは言えない状態のままだった。
「翔平、疲れてない?」
途中、奈菜がそんなことを聞いてきた。
「大丈夫だよ。って、まだ実感がないだけなのかも。皇女様の方が疲れてるんじゃないかな」
「わたしの方も大丈夫です。母乳はかなり搾られましたが、思いのほか疲労感はないですね」
「ふたりともすごい活躍したみたいだから、心配で」
「大丈夫。もう戦闘はないみたいだから」
「うん」
そうこうしていると艦橋の前にたどり着く。
扉を開くと、中はまだ緊張した空気が張り詰めていた。
「帝国の残存艦隊、引き続き撤退を続けています。侵攻前の前線より後退している模様」
「敵旗艦は?」
「敵旗艦は健在。離脱した海賊艦隊も存在を確認できました」
「旗艦は叩き損ねたということね」
言うミストレアはどこか悔しそうだった。
「あ、アティ様。それにショウヘイも」
アーリアがこちらに気付く。
「アーリア、よく戻りましたね。そしてご苦労様です」
「ありがとうございます。ショウヘイのおかげでこの戦闘は征することができました。アティ様の協力にも感謝します」
「あなたの手柄も大きいわアーリア。それにスタティアの皆さんの働きも。それで、帝国軍の動きは?」
「今のところ撤退の一手です。主戦力を失い、このまま戦闘を続ければ全滅は免れない状況なので、帝国軍は賢い判断をしています。追撃も可能ではありますが、こちらも万全とは言えない状態なのでそれは避けました」
「懸命な判断です」
中央のモニターを見ると帝国軍を示すシンボルは一斉に後退しているのがわかった。
縮図の程度から考えて、オッパリオン軍が作る戦線からかなり離れていた。
「帝国軍はもう仕掛けてこないんですか?」
「これほどの戦力を失った以上、反撃は不可能ね。帝国もそこまで愚かではないでしょう。あの海賊艦も一緒に後退しているところを見るに、Zリーヌンス奪取は諦めたと見ていいでしょうね」
「……よかった」
アーリアのその言葉に、翔平はやっと安心感を覚えた。
「オッパリオン艦隊の隊列はほぼ完了しました。損耗率は二割程度と算出されました。継戦に問題はありません」
「ありがとう。艦隊には首都防衛ラインを維持するように伝えて」
「了解しました。各艦隊へ通達――」
「提督、艦長、敵旗艦より電文が来ました」
通信士からの言葉に、ミストレアはアーリアを見た。アーリアは頷く。
「読んでもらえるかしら?」
「はい。帝国軍旗艦ガンディーグより。我ら被害甚大につき戦線より後退する。現在反撃の意志はなし。願わくば一時休戦の申出を受けられたし――とのことです」
「休戦ね。案外あっさりと下がってくれたわね」
「次元破断砲とZリーヌンスの威力に恐れをなしたのかもしれませんね」
「あの威力を見せられればそれもあるかもしれないわね。アティ様、休戦の申出は受けてもかまいませんか?」
「えぇ、もちろんです。その判断はアーリアにお任せします」
「ありがとうございます。敵艦へ返信、休戦の旨、了解したと。オッパリオンに追撃の意志はなし、早々に本国へ帰られたし、と」
「了解しました。返信します」
「オッパリオン艦隊全軍に休戦の旨の通達もお願い」
「了解です」
「しかし提督――帝国軍本隊の動きもそうですが、海賊艦が一緒に退いたのも気になりますね」
ひとまずの休戦が宣言されたとは言え、ミストレアはなにか気がかりがあるようだった。
「今までは別々に動いていたのにね。どうやら帝国も一枚岩じゃないかもしれないわね。Zリーヌンス奪取に動いていたのは別働隊の海賊たちだけのようね」
「正規軍じゃないのなら、また仕掛けてくる可能性はありますね」
「ええ。でもしばらくは動かないと思うわ。本隊の陽動がなくては少数戦力じゃ防衛ラインは突破できないからね」
「それはそうですね。Zリーヌンス争奪戦は、とりあえずわたしたちが征したということですね」
「そういうことよ。そして休戦も締結できた、これは我々にとっては勝利と呼べるものだわ。みんな、ありがとう」
アーリアのその言葉に、張り詰めていた艦橋の空気が一気に緩んだように感じられた。
「機関部の調子はどう?」
「はい、次元破断砲の副作用的効果で軽微な損傷が発生していますが通常の航行には支障はないようです」
「そう。では本艦はこれよりアティ様をオッパリオン王宮へとお送りします」
「了解しました。スタティア、進路をオッパリオン首都王宮へ。隊列を離脱します」
「さて――と」
言葉を区切り、アーリアは翔平たちの方を見た。
「これでオッパリオンは当面の危機は回避されたわ。拉致されたオッパリオン人の返還という大事なことは残っているけど、休戦になったということでこれからは交渉に移行していくことになるはず。わたしたちは予言の通り、Zリーヌンスに助けられることになった、ありがとうショウヘイ」
「いえ、オッパリオンのみんなの働きがあってこそだったかと思います」
「そう言えるショウヘイはいい人ね」
そう言って微笑むアーリアの表情が、翔平にはかつてなく穏やかに感じられた。
「今まで協力してくれて本当にありがとう。わたしたちにこれ以上あなたの自由を制限する理由はもうなくなったわ」
「ということは……?」
奈菜が翔平の顔を見る。
「ということは、俺たちは……?」
「水平の銀河へ帰れる、ということね」
「……!」
奈菜の顔に強い安堵が浮かぶのがわかった。
「一方的に力を借りることになってしまったけど、ショウヘイはもう自由よ。これ以上わたしたちに付き合ってもらうことはないわ」
「じゃあ、地球に帰れるってことですね」
「そういうことよ」
「や、やった! 帰れるよ翔平!」
「あ、あぁ。とりあえずオッパリオンが大丈夫なのはよかったよ」
「アティ様を王宮へお送りして、補給を受けたら水平の銀河へ向かいましょう。それでいいかな、ミストレア艦長?」
「えぇ、もちろんです。今度の航路は安全が保証できそうですよ、ショウヘイ」
「ありがとうございます艦長」
ミストレアも、穏やかな笑顔を見せてくれた。
艦橋の穏やかな空気感に、翔平は戦いの終わりを実感することができた。
スタティアにはもう少し世話になることになるものの、戦いが終わったということで、翔平には今さらになって疲労感が湧き上がってきた。だがそれは不快なものではなく、ひとつのことを終えたのだという達成感のようなものが感じられた。
そして思い描く地球への帰還が、どこか遠い日常のように感じられるのだった。
「宇宙艦隊オッパリオン」をご覧頂き誠にありがとうございます。
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スケキヨとYOM、引き続き精進して参る所存です!!




