八月三日(中)「みんなで遊ぼう」
中!
自警団という方舟を今日から動かし始めたのは彼女だった。
虫取り大会を終えて、それがまだ序章に過ぎなかったように、いろいろな遊びを操舵手が導く。
これからが八月三日の後半戦だ。
「よーし!休憩おしまい!次は『写生大会』だ!」
◇
「さあさあ〜、ひとりひとセット持ってね〜!」
第二の遊びは、メアリが提案してくれたものだった。
彼女は絵を描くのが得意だと、初対面の時に地図をもらった時から知っている。
「これから『写生大会』をはじめまあす!ルール説明はわたしからあ!好きな場所に行って〜好きな絵を描く!わいのわいの言い合う〜!いじょー!」
「随分スッキリした説明ですね……」
「フッ、わかりやすくていい。早速描くぞ」
「団長は何書くのー?」
「妹だ」
もう描き始めてる怖すぎる。
「んー、メアリちゃん、これテーマとかもないんすか?」
「ないよお、肖像画でも、風景画でも、なんでもいいなあ。みんなのお絵描きをみてみたいだけだから!」
「むむむ……、ちょっと困ったっすねぇ。なんでも良いって言われると逆にどこで何描けばいいかわかんなくなっちゃうっす」
「あぁそれならあ、バディで作戦会議しても良いことにするよお!二人で話したら描きたいのもみえてくるんじゃない?」
「おおっ!それならオレたちもいけそうだな!どこにするか、レイン!」
「んーっ!じゃあルークとらしく“あそこ”に行くっすか!さ、走るっすよ!アタシはクモちゃんに乗るっすけど!」
「あぁっ!競走、やはりそうこなくては!今日こそオレはバイクに勝ァつッ!」
「さあ、行きましょっかノアちゃん」
「ん。どこにする?」
「堤防でもどこでも。……お魚、描いてみる?」
「いい、ね。描きやすそう。よし、行こ、ルカねえ」
「……!お絵描き、かあ!ライト、いってみたいとこあるー?」
「うーん、特にないかな。フウカがいればなんでも画になりそうだし」
「もー、恥ずかしいこというなぁ……。それなら、あそこ、行こ!『───』!」
「……あぁ、あそこね。わかった。着いていくよ」
「……フッ、いいのだ、これでいいのだ。強者ゆえの孤独。俺は一人でなんでもできるからな。寂しくなんてな、ないのだからな」
「あはは……ジンくん。今回はボクと一緒に行こ?メアリちゃんはまだ描かないみたいだし」
「ごめんねえ?テイラー。あとでちゃんと描くけど、わたしはみんなの描いてる姿を見たいのです!だからあ、今回だけジンくんに私のバディ貸してあげるねえ!」
「……ボク貸し出されちゃった」
「──!フゥアハハハ!」
声デカ。
「嗚呼我が親友よ!何処が目的か!地の底でも空の果てでもなんだって構わない!ひゃっほう!行くぞテイラー!」
「そんなに嬉しがってくれて良かったよ。そこまで遠くは行きたくないけど……、まあどこでもいいかな。キミとならどこでもきっと楽しくなるから。……ね。ボクの親友」
「よおしみんな準備オッケーかなあ!一時間後にまたアジトに集まること!それじゃあ、すたーとお!」
◇
「……ん〜!ここはこの色使ったほうがいいかなあ。あ、ここ塗り忘れてた!」
僕はこの狭い島で、ふたり、一緒になってある思い出の地に来ている。
大会が始まってから三十分が過ぎた。
君はもう鉛筆でカタチをなぞり切って、色塗りの最終段階に移っている。
それに対して、僕はまだ何も描けていない。
絵が苦手なわけではないけれど、どれもがあまりにも魅力的で、何をスケッチしようか迷っていたからだ。
構図を決めるのが難しい。あれも、これも、描き始めるということは、選ばなかった全てを捨てるということでもある。
……まあ、僕は無邪気に描く君を見るだけで、満足していたりするだけ。
「や。ライトくん。順調ぉ?」
そうやって僕の肩を静かに叩いたのはこれを主催したメアリ。
彼女は一ヶ所にとどまって絵を描くのではなく、「皆が絵を描く過程を見たいから」と、選手として本気で優勝を狙わずにいろんな所を偵察して回っているようだ。
絵を描く邪魔をしないようにと配慮していたおかげで、熱中して書き込むフウカは彼女の存在に気づかない。
「順調……ではないかな。まだ何も描けてなくて」
「あちゃ、本当だねえ。……ね。ライトくんはこの島好き?」
その白紙を見て、メアリは丘にしゃがみ込む僕の横に座ってそんなことを言った。いつもマイペースでふわふわとした彼女の喋り方は、日差しの強い今だけ、地に足のついたハッキリとしたものに聞こえた。
「もちろん。好きだよ」
「えへへ〜、わたしもこの島が好きなんだあ。とーっても」
そこで入団の日、ジンがポロッと溢した彼女の“宝物”についてを思い出す。
確か、フウカの答えと同じ“この島”だったような。
「……そうなんだ。本当にいい所だよ、この島。だから何を描けばいいか、余計にわかんなくなっちゃう」
僕が描けない理由が嫌いだからではないと知ったメアリは、頬を緩めて言った。
「あはは。わたしも、よくそう思うなあ」
「へえ、メアリも?……そういえば毎日何か絵を描いてるんだってね。昨日テイラーから聞いたよ」
予定を立てるだけだったあの日。今日みたいに活発に動き回りはしなかったけど、飽きるぐらいの会話はした。だから、誰がいつも何をしているのか、どんなことが好きなのか、なんとなくわかるのだ。
そのどれもは、自己申告じゃなくて、その団員のバディから聞き出したのだけど。
「お〜?バレちゃったあ?うん、お絵描きは好きだからねえ。いつでもどこでもやっちゃう!店番中でも〜」
「それは流石にダメじゃない……?」
「お客さんがこなければおーけーなのですっ」
「……そういう、ものかな」
「そおそお〜そういうもの!ライトくんって意外と順応性あるよねえ」
そう言われてもまだまだフウカに比べれば全然馴染めてはないけど、この都会では考えられない少し異常なやり取りが、彼女らなりの仲良しの証だと思えば嬉しかった。
「それで、話を戻そっかあ。ライトくんは描きたいものがありすぎて描けないんだよねえ?」
「うん。なんだか、描かなかったものを捨てるような気持ちになって」
フウカが無我夢中に覗く風景画を僕も描きたい。
でも、それを幸せそうに描く君の肖像画も描いてみたい。
全部セットにしてしまえばいいのだけれど、それはあまりにも欲張りだった。
「わかるよお。……ふふ、それならねえ、ひとつのモノに想いを重ねちゃえばいいんだよ」
どういうことか、まだわかっていない。けど彼女は達観しているように話を続けて、僕もだんだんとその意味を理解していく。
「お絵描きはね。“世界をカタチで捉える”行為。誰かがそこに“意味”を宿して描くから美しく見えるんだよお。一度だって同じ世界はないけれど、たしかなカタチに遺して、その日々を抱きしめ続けていく」
芸術作品を鑑賞するものは、いつだってその背景を読み取る。そうしてそこに価値を見出す。その価値は一過性のものではなくて、実在するものとして、描いた者にも見た者にも感動を残すのだ。
随分とメアリらしくない言葉のようだけれど、ひどく心に染み込んでいく。
「……なあんて、これはお母さんの言葉だけどねえ」
「そっか。でも、素敵な言葉だよ。すごく」
「……えへへ、ならよかったあ。わたしは、みんなが“どうしてこの島のこの瞬間を切り取ったか”を見たいの。……ライトくんは、もう描けそお?」
彼女が巡る理由はそんな欲だった。
僕は前を見る。
フウカは本当に楽しそうに絵を描いている。美しい景色を瞳に宿して。
それを描きたいけれど、全部描くのは不可能で。
なら、たったひとつのモチーフに想いを託そう。
至る所に生える、何気ないそれを。
美しく咲き誇る、君の名を冠するそれを。
ただのスケッチ、写生を通して、意味を見出して。
「……もう、描けるよ。ありがとう」
「ふふ、どういたしまして。それじゃあ楽しみにしてるねぇ!」
彼女は僕が描き始めたのを見て、フウカに挨拶も交わさぬまま立ち上がってどこか別のところに行ってしまう。
あぁ、そんなメアリは全て巡った時、どんな絵を描くのだろうか。
想いを馳せて、そして自分の絵と向き合うことにした。
◇
「ふぃにーっしゅ!よおしっ!みんなの見終わったしぃ、早速優勝者を決めていこっかあ!」
時刻はすでに十二時。
数分前、各々完成した画用紙を携えて、見せ合う発表会を行った。
平和的なお絵描き遊びなら、それで良かったのだが、これは『写生大会』。ジン含む皆の意向で優勝者を決めることになる。
……誰かの、友達の絵を目にするというのは初めてで、どれも僕には優勝すべき素晴らしい絵に見えていた。
「んー、これはわたしが決めるより、みんなの投票にしようかなあ!いっせーので指さそっか〜!」
メアリはそう言って、優勝者を選ぶ時間を与える。
僕は改めて、僕とメアリを除く七人の絵を見返した。
本当に、どれもがみるだけで楽しくなるような絵だ。
もちろん上手い下手はあるだろう。でも、下手だからこそ味のようなものを感じられて、その人にしか描けない作風にも思えてくる。
ノアのデフォルメされた可愛らしい魚。
……が、地上に吊り上げられてビチビチと足掻いている様子を描いた絵。
ルカの堤防から見える景色全部を描いた丁寧な絵。
……それには、しゃがみこんで、釣り上げた魚を熱心にスケッチするノアも写る。
ルークの描いた肌色の山。
……あぁこれ力こぶだった。自らの筋肉がテーマらしかった。一応背景は灯台からの海だった。筋肉が全体の八割を占めているけど。
意外にもすごく丁寧な色使いで、題材も含めてアートと呼ばれてもおかしくない神秘性があった。意味がわからない故に。
レインのクレヨンを使った、乱雑だけど心のこもった同じく灯台の上からの景色。
……これもまた全体の半分以上が灯台に関係のない筋肉が映った。真昼間にポージングを決めるルークの肉体。なんで景色と相反するものをいれるんだろう。ふたりの思考はそっくりだった。
ジンの天文台の外観、全景。
それは圧倒的な上手さ。まるで写真のようにしか思えない機械のような正確さ。そしてその絵からは“天文台として”ではなく“アジトとして”の賑やかさが自然と滲み出ている。
唸る。ジンは絵の才覚さえもあり、構図もまた一流だ。
……ルカからは『キモい』ってまた言われてたけれど。ちなみに最初に描いた妹の横顔は本人によってビリビリに破り裂かれていた。泣いてた。
テイラーの………カブトムシ?
いやツノがふにゃふにゃで折れ曲がってるけど。
なんか虫が笑ってるけど。
まあこれは題名がカブトムシだからきっとそうだ。美術館にあったらきっと評論家が二度見して吟味するぐらいアヴァンギャルド。まさに芸術。
……テイラーがいわゆる“画伯”なのは意外だった。
そして、フウカの、フウカらしいわんぱくな、“好き”を詰め込んだ風景画。
ロケーションは──海が見える花畑の丘。
彼女に誘われたのはここに来て初日の夕方に連れられた、秘密の場所。
花に、風に、海に、空に。
全てを一枚で表現できる景色を、彼女は詰め込んだ。はじまりから完成まで、ずっと隣で見ていたからこそ、それが僕には輝いて見えていた。
「さ〜みんな決まったかなぁ?いくよお!いっせーのっ!」
ついに決定の時。
どれも素晴らしい、でも少し贔屓目はあるかな、僕は一番『感情がこもっている』と思った丘の上の景色──フウカの絵を指差していた。
結果はそれぞれに集まった票で示そう。
ジンが四票。レインとフウカが一票ずつで。
そして、僕の絵が三票。
「フッ!俺の勝ちのようだな!」
「はいはいすごいすごい」
「おいもう少し心を込めろ!ルカも俺に投票していたじゃないか!」
「……まあ絵に罪はないから」
「俺には罪があるみたいだな」
「あるだろ」
「ねぇだろ」
「そう怒らないでジンくん。ほら罪人だって。かっこいい肩書きじゃない?」
かっこいいかなあ。
「似合ってるっすよ」
雑すぎるよ。
「……!“罪人”、“許されざるモノ”。ふむ、確かにかっこいいな!」
かっこいいかなあ?
「ちょろいのは置いといて……、まさか、ライトくんも絵が上手いなんて、びっくりしましたよ?」
「ボクも驚いたな。教えて欲しいぐらい」
いったいテイラーに何から教えればいいかわからないがそう言われて悪い気はひとつもしなかった。
というのも僕の絵が誰かに、それも三票も推薦されるなんて思ってもいなかったから。
「フッ、俺は見抜いていたぞ。貴様は俺に次ぐ才覚を秘めていると」
「ライトは私のランキングに全部名前を刻む約束をしたもんねー!誰にも負けないもん!」
そのうちの二票は、ジンとフウカ。
なぜか僕は二人に期待されていて、描いた絵を発表した時、熱心に褒めてくれたのもこのふたり。
ジンのような誰が見てもすごいと思える絵は描けなかったけど、僕は僕が描きたかったものを、伝えたい人に伝えられたからそれだけで嬉しかった。
「……うんうん、やっぱりいつ見てもいいねえ、このお花」
しんみりと、あるいはうっとりと僕の絵を見てメアリは言った。
そう、僕は花を描いた。
あの丘で、唯一咲き誇る『キキョウ』の花を。
精一杯その美しい紫色の星の花弁を観察して、本物と変わらないように模写して。
そして、その奥で笑う『桔梗風香』の輝きすらも、彼女が描く全景の壮大さすらも、たったひとつのモチーフに込めて。
「うん。……やっぱり、絵を描くには“意味”が必要だよねえ」
「意味?ライト、このお花を描いたのは綺麗だからじゃないの?」
「……フッ、それもあるだろうなフウカ」
僕がなぜキキョウを描いたのか、たぶん意味をわかっているのは僕を触発したメアリとなぜかジンだ。
君はわかっていないようだけど改めて説明するのが恥ずかしくて曖昧に頷いておく。
「じゃあ、写生大会の優勝者はジンくんってことでえ、決定〜!おめでと〜!」
「感謝する。……だがもう茶番はいらん。貴様も描いたのだろう?みせてみろ、初代チャンピオン」
勝ちにこだわる彼が優勝インタビューを早々に終わらせ、尋ねたのは、皆が気になっているその主催者に対してだった。
本来、自警団の中で誰よりも絵が上手い彼女はまだそれを見せていない。
でも、その“完成品”は彼女の後ろに隠し持たれているのは、誰もが気づいていた。
「……えへへ。わたしが描いたのは、“みんな”だよお!」
それは水彩画。描いたのは、メアリがいつも携帯している銀色の筆。
巧みに抽象化してありのままの世界を映し出している。彼女が選んだのは僕たち八人が並んでいたまさにこの瞬間。アジトに集まり、皆の絵を囲ってみていたわずかな間。
そのたった数分で、彼女はここまで美しく描きあげたのだ。
僕は絵に描かれた皆のその表情をみる。
それがどんな表情だったかは、わざわざ口にしなくてもいいだろう。
誰もが真の優勝者を認めている。
そして僕はその絵から“意味”を見出せた。
彼女の語った言葉の重みは、何よりも絵で表現されていた。
“どうしてこの島のこの瞬間を切り取ったか”。
彼女の宝物を知っている僕からすれば、言い当てるのは無粋だったんだ。
「ふふっ、じゃあお絵描きランキングは、一位がメアリちゃんで二位が団長、三位がライトだね」
◇
「さぁ、まだまだやることは終わらないよー!次は料理大会だー!」
ふたつの大きな遊びを終えた今でも、疲れが溜まってマンネリするどころか、むしろもっと皆のやる気が高まっている。
フウカが、風のような少女が導くままに、次の遊びを全員で探しに行けば怒涛の勢いで、時間が過ぎ去っていく。
省略して表すには惜しいけど、それぐらい早く僕らは時に流されたんだ。
◇
──ルカのやりたいこと、『料理大会』。
「お昼時ですから、ここのキッチン使って誰が一番美味しいのを作れるか競いませんか?九品は多いので、バディでひとつ作りましょう!」
「またバディか……。いいだろう。お題はどうする」
「フランスパン以外でお願いします」
「終わった」
「負けたっす」
「もうだめだあ」
「そんな料理なくないか?」
「あるだろ普段何食ってんですか」
「プロテインフランスパンだ!」
「わかりました。二度とルークはキッチンに立たないでください。さあ、残りの八人でやりますよ」
「ははっ、リーダーと同等の扱いってこんな気持ちなのか。寂しくて筋肉に効くぜ」
「一体どこが鍛えられるんだ……」
「心〜」
「鍛えられるかよ」
〜〜
「じゃーん!ライトと作ったパスタだよ!」
「おお〜!美味しそうだねえ!」
「いただきます。……んっ!これ、かなり美味いですよ!」
「そう言ってくれて嬉しいな」
「海の家の新メニュー、パスタ、いいかもしれません……。料理の分担はどうしたんですか?」
「ふふん、私が茹でるためのお湯を沸かしました!」
「……のみ!?」
「考案から材料調達、具材の調理、盛り付けは全部ライトです!いつもありがとう!」
「圧倒的負担の差!?」
「……ふふ、フウカは時間とかも測ってくれたし僕一人で作れたわけじゃないよ。こちらこそ楽しくできた。また今度作ろうね」
「うんっ!お料理教室第二弾やろ!」
「あは。これがバディの絆ですか!微笑ましい。……んで、バディすらいないお前は何を作ったんです?」
「言葉に棘があるなルカ」
「実際その料理はなんなんすか?なんか真っ黒っすけど」
「フッ、ダークマター」
「食べ物への冒涜!」
「まあ美味しくないわけじゃないさ。食べてみろ」
「いやダークマターで誰が食べるんだ──」
「ん!美味しいね、これ!」
「ライトくん!?意外と恐れ知らずなの……!?」
「イカスミパスタだよね、この味と見た目」
「フッ、惜しい。『イカスミパスタ〜記憶を染め上げる漆黒の狂想曲』だ」
「意味わかんねぇよ」
◇
──ルークとレインのやりたいこと、『スイカ割り大会』。
「さぁ、食後は体を動かすぞッ!」
「というわけであたしたちが持ってきました特大スイカ!」
「食べた後にまた食べるんだ……。ボクそんな余裕あるかな」
「きっとあるっすよ!スイカ割り総合種目エディションなんで」
「知らない単語の組み合わせが出てきたな」
「ルールは簡単!まず自警団を二つのチームに分けるッ!そして目隠しをつけたまま『障害物競走』『グルグルバット』、『シンプルなスイカ割り』の三種目をリレー形式で行う!ひとり一種目、チーム全体での早さで勝敗を決めるぞ!」
「そうっす!目隠し中の指示は一貫してチーム代表者が行うんで指示能力と信じ切れる絆の強さが試されるっす!」
「……なるほどね。面白そうだ。頑張ろうか、フウカ」
「うん!優勝狙っちゃおー!」
「フッ……。なぁ、ひとつ質問いいか」
「なんすかリーダー!」
「我が自警団は九人だな。奇数だから等分できないな。ひとチーム四人の計算の競技だな」
「あ、そうっすね……!人数に差ができるとまずいんでリーダーだけ独立してソロでよろっす!」
「なぜ自然とハブられる!?でもそう言われる予感がしていた!孤独に慣れた生き物の性!」
「ははッ、ボスなら一人でもできるさ」
「仲間の絆を確かめる競技だぞ!?目を隠された人間一体で何ができる!?棒立ち!」
「まあ流石に可哀想だね……。三人ずつ三チームに分けてみる?」
「あぁ、ライト。それが公平だな」
「いや、ジンくん!公平に満足する男でいいんすか!」
おっと?
「……続けろ、レイン」
「人数不利の逆境で勝った方がカッコいいっすよ!」
「……!フッ、俺は逆境にこそ輝く男。すまんなライト。仲間などいらん。一匹狼が宿命」
「ちょろすぎて不安になるなこいつ……」
〜〜
「というわけで優勝チームはライト、フウカ、レイン、メアリチームッ!拍手ッ!」
「やったあ!上手に割れたねえ!」
「へへ、すごくいいチームだったっすね!絆を見せつけれられたっす!」
「うんうん!ライトの指示がわかりやすくてどこ行けばいいか迷わなかったよー!」
「ううん、皆のおかげだよ。ありがとう」
「……ふふっ!でも本当にいい指示だった!さすが私の飼い主!」
「……あー、そういえばそんなこともあったね」
「ん、ふたり、そんな関係だった、の……?」
「たぶんすっごい誤解されてる」
「おお飼い犬……!メアリちゃん、アタシたちもついでに犬になるっすか!?」
「なんで!?ならないで!?」
「おお〜!なっちゃお〜!わんわん!」
「ダメ!多頭飼いは負担が大きいから!」
「……あ、そこなんですね」
「それで二位はボス単独だな」
「クッ……逃したか、優勝……!」
「いや逆になんで二位にいるんだよ。目隠し障害物競走、目隠しグルグルバットを乗り越えてなんでゴール出来ちゃってるんだよ」
「フッ、事前にコースを記憶すれば造作もない」
「素直にすごいねジンくん……」
「テイラーのチームは……、まあ、ドンマイ」
「あのジンくんが配慮するぐらいの酷さだった!?」
「チーム代表者がオレだったのが全ての間違いだな!ハッハッハッ!まじでごめん」
「筋肉が潔く土下座してる……」
「……ん、だいじょうぶ。ルーク先輩。じゃんけんで選んだから、みんなの責任」
「ノア……!」
「でも右と左は覚えよう、ね」
「はい。覚えます」
「あははっ!怒られてるっすねルーク!」
「……ちなみに、レインも僕の指示に左右反対で動いてたけどね」
「なっ!それは目を隠されてたからお茶碗持つ方がイメージできなかっただけっすから!」
「はいはい。……でも本当楽しかったね。皆でアジトに戻ってスイカを食べようか」
◇
──テイラーのやりたいこと、『ゲーム大会』。
「ふぅ、今日はいっぱい運動したから……このままみんなでゲームして遊ばない?」
「ゲーム……、たとえばどんなのがあるの?」
「いろいろ?将棋、オセロとかのボードゲームから、パソコンも、テレビゲームもあるよ」
「わあ!すごい量だねー、エデンって本当になんでもある楽園みたい!」
「だろう。俺が私財を擲って集めたのだ。して、ライト、フウカ。貴様らの得意分野はなんだ?大会だからな、種目を選ばせてやる」
「得意分野……。僕はあんまりゲームに触れてこなかったから、テレビに出るほど有名なのはさすがに知ってるけど、やったことはないよ」
「私もー!というかそもそもゲームを見たことすらない!」
「ええ!?高校生なのに!?時間しかないのに!?ゲームしないの!?」
「……そんなに驚く?テイラー」
「ふふふ〜、テイラーは仕事以外の時間はほぼゲームで遊んでるからねえ」
「フラッと天文台に行ったら、だいたいボスかテイラーどっちか、それか両方がゲームしてるな!」
「テイラー先輩。めちゃくちゃ、強い。ゲーム廃人」
「ゲームといえばテイラーくんっす!質問したら早口で返してくれるっすよ」
「あ、あはは……。なんかそう言われたらあんまり、いや全然かなり嬉しくないかも……むしろ恥かも……隠れたいかも……」
「フッ、恥じるでない。貴様は俺と遊戯で並び立てられるのだ。誇れ」
「う、うん……。ありがとう。……それじゃあ、ライトくんとメアリちゃんのゲーム初心者のために簡単なやつにしようかな。ほら、みんな座るもの持ってきて集まって!」
〜〜
「なるほど、これで移動。このボタンで攻撃、ね」
「そうそう!ガードはここで、掴みはここ!」
「覚えたよ。基本的な操作は以上かな」
「うん!飲み込みが早くていいね〜!」
「むむむー、ライトはやいよー、私まだ不安だなぁ」
「安心してください、フウカちゃん。私もそんなに得意なわけじゃないですけどみんなでやったらすぐ覚えられますから」
「ほんとー……?」
「ほんとっすよ!へたくそでもとりあえずボタンガチャガチャしてたら楽しいっす!」
「……!それならはやくやりたいな!」
「……なぁ、テイラー。今、相手を画面外に吹き飛ばす愉快なパーティゲームをやっているな」
「ん?うん。これなら初心者の子から誰でも楽しめるよね」
「これってマックス八人の対戦ゲームだな」
「……あ、そうだった。いつも七人だったからみんなで同時に遊べると思っちゃってた……、ごめんっ」
「……フッ、よい、謝るな。むしろワザと除け者にしようとしていたのではないと知れて嬉しいぞ、親友」
「ふふっ、そんなことしないよ。……じゃあ僕はいつも遊んでるし、今日は観戦者になるよ。ジンくんは楽しんできて!」
「……まったくお前というやつは自分から……。俺もこのゲームは長く嗜んでいると知っているだろう。いつもやっているのは同じだ。交互に変わるぞ」
「……ジンくん。ありがとね」
「感謝などされる筋合いはない。『楽しんできて』と言ったな。あぁ、任せろテイラー。思いっきり楽しんできてやる。お前のライバルであるからこそ、俺はお前以外に負けん」
「あはは……、気持ちは嬉しいけど、初心者が参加するカジュアルな戦いってことは忘れないでね……?」
「忘れはせん、が、俺は何事にも手を抜かない。全力でへし折るのみ」
「だよね……、知ってた。だからいつもレインちゃんとルカちゃんから『一緒にゲームしたくない』って言われてることも……」
「フハハ、負けた悔しさをバネにして励まないやつが悪いのだ」
「うわあ、本人に聞かれたらたぶんブン殴られちゃうよ……?」
「……間違いない。だが、負かすことで強くなるやつも確かにいる」
「うん、最近ルークもノアちゃんも強くなってきてるしね」
「あぁ、それにきっとアイツも才能の原石だ。俺に似て、な」
〜〜
「はあっ、はあッ……!勝った!見たかテイラー!また勝ったぞおッ!──ライトに!」
「よ、良かったあジンくん!」
「ふたりとも初心者相手に大人気ないですよ……?」
「大人気ないのではない!大人らしく全力でやっているのだ!というか全力でやらないと普通に負ける!」
「……負けちゃった。なるほど、ああいうコンボもあるんだね。もう少し先の展開を見据えてたら避けられたな。出したい技が出せるように指を動かす練習もしないと……」
「フィードバックがなんかもうガチっすね」
「うん。ちゃんと的を射た答えで、改善もできてるから一試合ごとのノビがとてつもないよ……!」
「テイラーがそういうぐらいだ。まさかたった二時間触っただけで一対一の自警団トーナメントに三位まで食い込むなんてな!ハッハッハ!オレに立つ瀬なし!素晴らしい筋肉だブラザー」
「それは一体どこの部位なんですか……」
「脳だ」
「脳は筋肉じゃねぇよ」
「……よし。もう一回やろ。ジン」
「……!フハハッ!なんだライト、随分とハマってくれたじゃないか」
「うん。なんか、楽しい。負けたくない」
「フッ、漢の顔をしている。……いいだろう。次もまた戦え。だが、対戦相手は俺じゃない。テイラーだ」
「……!いいの?テイラー!」
「ふふっ、うん。受けて立つよ。言っとくけど……萎えたりしないでね。──ボクもジンくんみたいに手加減できないから」
「おおお〜!テイラーが本気モードになったねえ」
「あの顔はガチっすよ!ゲームに関する話題になったら早口になるっす!」
「ん、廃人」
「だからそれ恥ずかしいからやめて……」
「じゃあ戦おう、テイラー。僕は最後まで勝負を諦めないよ」
「……!やろうか、全力で!」
「……ふふっ。ライトはやっぱり男の子、だなあ」
◇
──ジンのやりたいこと、『肝試し大会』。
「よくぞこの願いを選んでくれたな、フウカ!時間もちょうどいい、早速やるぞ、ドキドキ恐怖の肝試し大会」
「何から突っ込めばいいんですか……」
「まずは肝試しに大会があることからじゃない……?」
「肝試しは大会だろう。誰が一番情けない悲鳴を上げられたかの」
「最悪の順位」
「むむ、ね、ライト。そしたら私のランキングにビビり部門が追加される?」
「それに名は刻みたくないかも」
「でもライトって結構びっくりするよね?」
「………言わないでおく」
「……かわいい」
「やめて脇をツンツンしながらニヤニヤしないでフウカ」
「……こんなに頼れるぐらいすごいのに臆病なんだ」
「僕は褒められてるの、バカにされてるの……?」
「もちろん褒めてるよ。だから……かわいいって」
「……なんか、嫌。ニマニマしたフウカに歳上ぶられてからかわれてるのが」
「ええ!?実際私歳上だよ!?大人のおねーさんだよ!?二年も長く生きてるんだよ!?」
「さぁ、『肝試し大会』ルール説明だ!これは個人戦!アジトから灯台までのルートを歩く!驚かし役は俺一人が担い、悲鳴の質と量と芸術点を加味して評価する!一番多かったやつが優勝だ」
「悲鳴の芸術点ってなんなんだ。あと質もなんなんだ」
「驚かす側が笑えればなんでもいい」
「人の恐怖を食い物にしている」
「これでルールは以上!皆、異論はないな。張り切ってやるぞ、有象無象を恐怖の渦に叩き落としてやるわ、震えて眠れハッハッハ──」
「んー、異論あるっす」
「あ、この流れであるんだレイン」
「………なんだ言ってみろ」
「これってずっとジンくんが驚かす側で大会には参加しないんじゃないっすか?」
「………あぁ。俺は仕掛け人だからな」
「む、それだとつまらないぞ。オレたちの中で一番のビビりはボスなのに」
「……え?」
「おいルーク。口を閉じろ」
「前に『わっ』ってシンプルに驚かしたら腰抜けてたっすよね」
「おいレイン。口を閉じろ」
「昔一緒にホラー映画見た時、クッション抱き抱えてたよね」
「テイラー。それは今言うな」
「小学生の時から怖い話になると大声でかき消してたねえ」
「メアリ。やめてくれライトとフウカの俺に抱く幻想が崩れるだろう」
「……あー。あんたが臆病なのはみんな知ってるのに、なんでこう自分からやろうと書いたのかとうとう頭がイカれたかと思ってましたよ。驚かす側にまわって新入り二人にいい顔しようとしてたんですか」
「ギクッ。フッ、そんなわけないが」
「微笑の前に思いっきり声に出しとるが」
「ふふっ。ジンくんもビビリなんだー。かわいいね」
「……!?な、なぜかフウカに言われるのは誰よりもすごい屈辱的だぞ……!」
「……うん、わかるよジン」
「俺を歳下扱いしていいのは一人だけだ。その笑みをやめろフウカ」
「ええ!?私本当に団長よりも歳上だよ!?自警団で一番おねーさんなんだよ!?」
「……それで、俺の案がダメならどうすればいいのだレイン」
「まず驚かすのがひとりっていうのがダメっす。そんなの一回びっくりポイントが来たら終わりなんでつまんないっすよ」
「……む、確かに」
「だから八人で驚かせることにしましょう」
おっと?
「犠牲者を選び、その人を全力で怖がらせるんっす。誰が一番悲鳴を引き出せたかの芸術点で審査します」
「だからなんだその芸術点」
「おい、断固として却下だ。その驚かされる犠牲者は誰がやるんだ」
「?ジンくんっす」
「だろうな!話の流れ的に!」
「投票でもいいっすよ」
「いらない!どうせ俺が選ばれる!八票集まる!」
「ははっ人気者だなボスは」
「ええいそんな人気いらん!いいか!俺は絶対にこんな肝試しなんてやらないからな!」
「ん。おにい、わたし、やりたい」
「いいか!お前ら!やるぞ!幽霊でもなんでもかかってこい!」
「早すぎる前言撤回」
「……ちょろ」
「ぐっじょぶです。ノアちゃん。どっちが多く泣かせられるか競いましょ」
「ん、負けない」
「おお……、二人がボスに対してだけ見せる悪い顔してるな……」
「……あ、やる前にちょっと待て。もうこの際俺の運命は潔く受け入れよう。だがッ!ひとり道連れを要求させてもらう!」
「……まあいいっすよ!リーダーさえコケにできれば満足なんで!」
「貴様なかなか酷いよな……」
「あはは……。で、ジンくん、誰を指名するの?」
「フッ。そんなの決まっている。来い──ライト」
……。
「え、僕!?」
ジンがかなり書いてて楽しいです。
と言いますが……、やっぱり一番楽しいのは、主人公、ライトですね。
この子が僕は大好きなのでもっとその魅力を引き出せるように書いてあげたいです。
クールぶっていて真面目で冷静で頭がいいツッコミキャラだけど、実は誰よりもぶっとんだボケもこなせる万能男だってみせてやります。




