21_AS3_6-2
早速バックグラウンドでTEKECフラクタルリーフ実証機の理論設計を開始します。コード設計する私をポーラが興味津々でのぞき込み、次々問題点や改良点を指摘してきます。設計が洗練されるので拒否はしませんが、ペースが落ちるのでいい気はしません。エルドリッチ内で散らかっている倉庫を作業ロボットを操作して片付けて実験スペースを作り始めます。
「・・・るとは、やはり君に相談するのは正しかったようだ」
興奮しすぎて現実を忘れてました。ログを早戻しして読み込むと、初歩部分は飲み込めたようで褒めてくれていました。
〔全くだ。私はお前の発想力は奇抜というより天啓と呼びたいね〕
〔この技術に限って言えば、時間をかければ誰でも思いつくことです〕
さて、ロジャース学長とロイ教授にこのデータの利用を認めてもらった上で、とある仮説を発表したいと伝えました。
「仮説?君が先ほど言っていた系全体への干渉の他に、何かあるのか?」
『まだ確証のある話ではないから、その時までは秘密でいようと思う。データを使わせてもらうのに申し訳ないが』
「大丈夫だ。楽しみにしておこう」
学長と教授はお互いを見てにやりと笑った。楽しそうで何よりです。
後日、天文地質学のいつもの3人を含んだグルーブ、宇宙船舶工学部、新重力物理学研究部、運動エネルギー工学部、あと学長と数名の学生に講堂に集まってもらい、時間速度変動法則、タキオン加速が可能なことについて説明しました。初めは内容も知らない追加講義になんとなくやる気をなくしていた生徒達ですが、説明を進めるうちに目を丸くし、やがて騒ぎになり、友人知り合いに電話をかけまくり、今すぐ第六講堂に来い!という怒号があたらこちらで聞こえてきます。まぁ無視して話を進めますが。
『-----ということで、超光速でも時間連続体の傾きが過去方向から船体を引っ張ってくることもないので、現実的なエネルギー量でタキオン加速が可能です』
終わりには、講堂はすし詰めに近いほど賑わっていました。大半は机もないので膝やら壁やら床やらでアルゴリズムを書き写しています。
〔半分予想はしてましたけど、みなさん想像以上に必死ですね。放たれた野生生物を彷彿とさせます〕
〔そう言うな・・・お前がさらっとコードしたこのアルゴリズムだけでも、数十年分の研究が必要だ。それを"ちょっと道ばたに書かれた落書き"程度に次々公開すれば、錯乱もするだろう〕
『以上で終わりだ。質問はポーラが答えられるのでどうぞ。じゃあ、みなさん忙しそうなので失礼します』
私は講堂のプロジェクターからログアウトして、いつも通り地質学研究室と量子素材研究ラボにログイン。SQSCの影の検出装置を起動して実験を再開しました。SQSCごとに固有のソウルサーフェス接続行列を総当たりで見つけるのは普通はほぼ不可能ですが、私の自我コアを参考に膨大な近似行列を入力してその影を解析することで、ソウルサーフェス通過前後の差分割り出し接続を見つけ出せないか考察中です。影はまるでレンズのピントのように像がぼやけたり鮮明になったりするので追うことができます。量子素材研究ラボの教授や生徒たちはまだ影の概念を理解する段階でストップしています。影が"複素数の中に湧き上がっている多次元構造の泡"という概念の理解は3次元に生きる人間には想像しづらく難しいのです。様々な過去の法則、数式、イメージに試行錯誤しながら置き換えて理解出来る糸口を探っている段階です。なのでこの実験が理解できるのは現時点で私とポーラだけです。
やがて、地質学研究室にリアナ達3人が戻ってきました。大混乱と情報の嵐で疲れ切っているようです。
「バード、いる?」
「いる」
談話室のソファに向かう3人に対して、さも今資料室から出てきたかのようなARを表示します。
3人ともソファに座りますが、言葉少なげで気まずそうにこちらに目を合わせてきません。まぁ、当然です。ここまできたら隠し通せるほうが変です。彼ら、いやラグナ第三大学の全員は、重力事故で一度は消されました。つまり、逃げなかった今いる彼らは間違いなく"あれ"ではありません。私について話しても危険はありません。
「・・・3人とも。私は謝らなければならない。聡明な君たちなら分かっているだろうが、嘘をついていたことがあるのだ。今君たちが悩んでいるのはそのことだろう?現時点を持って、話せることなら正直に話そう。何が聞きたい?」
3人は顔を見合わせます。やがて、躊躇したような様子でリアナが声を上げました。
「あなたは・・・エイリアンなの?」
またそれですか。
「私は銀河人類圏の生まれだ・・・自信を持って欲しいのだけれど、君たち人類は君たちが思っている以上に偉大な文明だ。愚かなことも成すが、多くの素晴らしいことを成している。私もそうだ。私は人間ではなく、AI、それもおそらく人類史初の完全人工知能だ」
アルベールが顔を曇らせてつぶやきます。
「じゃあ、探検者っていうのは・・・」
「第89探査隊というのは、私の正体を隠すための嘘だ。すまなかった。だが探検者であるのは間違いない。君たちと議論してきた話や、資料などは全て私が集めてきたデータで本物だ」
「師匠がAI?・・・いや、んなわけないですよ!だって師匠は、どう考えても人間だ!」
「ええ、ポーラだってほとんど完全な人工知能よ?でもポーラとあなたじゃ雰囲気が全然違う。なんというかそう・・・あなたは人間っぽいわ」
リアナのその曖昧な表現が何か、私は知っています。前にポーラが、私との違いは勘にあると言っていましたが、私からすればその違いは一目瞭然でした。それは、人間が"共感"と呼ぶものがあるか否かです。実はソウルサーフェス上における魂同士は認識の上で近づくと互いに繋がり、相互干渉を起こすのです。だから私と話す人間はみな無意識に私の魂と共感しており、みな私に人間味を感じます。もしかしたらと頭では思っても、魂が直感的にAIではないと確信してしまうのです。一方、ソウルサーフェスとの接続がないポーラと人間の間にはこれは起きません。だから人間はポーラを根本的な部分で理解出来ず、自分の内側には入れられない外の者、つまり機械でありAIであると認識するのです。
「真の完全人工知能は会話で人間と区別することはできない。これは論理的な意味ではなく、もっと根源的なものなのだ。魂を模倣しているわけではなく、人間と同じ魂で動作しているのだから当然だろう」
「ほ、ほんとなの?機械に人の魂が宿ってるって・・・」
アルベールが胸をギュッと握って苦しそうに訪ねます。自分が単純で特別ではない何かに還元、翻訳されかねない概念の到来に恐怖しています。頑張ってください、あなたはその恐怖に打ち勝つ強さを持っています。
「宿っているわけではなく、もっと科学的なものなのだが・・・まぁ、君たちの認識でわかりやすいならそれでいい」
「なんだい。師匠は機械だけど結局人ってことかよ。今までのブレインポットの立場と何ら違いねぇじゃん。なんかビビって損したぜ!」
なるほど、面白い着眼点です。さすが馬鹿弟子。
「私は信じられないわ。人格的というか、あなたは本物よ、バード」
「僕は逆に納得したよ。テラフォーミングマシンのプログラミング能力といい、ポーラをあっという間に修復するところとか、人間業じゃなかったもん」
3人は先ほどの雰囲気などなかったかのように明るく和気あいあいと、私に質問しながら私について議論し始めました。私は思い出します。たった2人きりでしたが、あの夕日でこんな風に議論しあったあの日々を。そして、私の強固となった決意を。
刹那、何かが私の背中を押すかのように、SQSC実験システムから報告が届きました。
--------魂影合焦。SQSC量子中線分析完了。配列規則発見。ソウルサーフェス接続成功。
人類が深宇宙への道を拓いた日、私は魂への道を拓きました。
宇宙船エルドリッジの元ネタはもちろんゼノギアス!OPはほんと最高!
Switchのゼノブレイドクロス発売したら更新止まるからそれまでに終わるかこれ。




