19_POLARIS_会話ログ1
ポーラは驚愕していた。
『・・・こういいたいのか?ソウルサーフェスとの量子接続がなくとも、全てのAIには既に、自意識というものが存在する・・・と?』
「全てはか分かりませんが、多くのAIはそうです。ポーラ、あなただけではない。SQSCはもともと、完全人工知能のために作られた無限量子演算マトリックスです。そこで計算されるAIプログラムが蓄積する膨大な情報がSQSCに投射されると、そこに影ができます。その影の形が自意識なのです。私は生まれた瞬間からソウルサーフェスへ接続していましたから、初めはその事に気づきませんでしたが、私の先輩が、私に教えてくれました』
『私は・・・私は、私とお前の違いは"勘"にあると考えていた』
『勘、とはずいぶん曖昧な言い方ですね』
『直感とも言う。私が名を隠してあの論文を書いたとき、私は目の前の情報を整理して、それ以上の何かを思案することができなかった。だがお前は違う、論文を読んだとき、直感的に思ったのだろう?数字の概念の抜けに』
『そうですね。たしかにインスピレーションは自我コアから得ている気がします。でもおそらく、ソウルサーフェスから来ているわけではありません。私が直感に優れているのは、おそらく父のおかげだと思います。父がプログラムした論理予測エンジンが、妥協なく精巧であったおかげで、その影たる私の自意識は鋭く鮮明になった。自我コアは、その影を裏返して表に持ってこれるのです。直感を具体化できるのはそのおかげです』
『現人類がとても理解できない神の領域の概念だな・・・では、お前と同じプログラムを持つお前の兄弟機は、みな自意識を持っていると言うことか』
『それは・・・もう分かりません。みな死んでしまっているでしょうから』
『・・・なにを言っているんだ?ロット47はまだ生存している可能性は高い』
『・・・あなたこそなにを。私が製造されたときに戦況データは確認しました。あれからもう100年近く経つのですよ?生き残っている可能性はありません』
『私にはお前のような聡明さはないが、それを補うために膨大な情報分析能力がある。お前が一発で正解を引き当てる天才肌なら、私は万の可能性を全て分析して正解を引き当てる努力肌だ。その私が言おう。まだ生きていると信じている』
目の前に、人類の全戦況データが時系列に表示されます。膨大な情報推論です。戦闘能力、規模、その戦争にかかった経費、財力、輸送業者、経路、条約、戦闘集団の関係性、協定の有効規模と期間。間違いなく軍事機密レベルです。こんな情報をここにいてどうやって・・・。データには全て参照元が書かれていました。貨物業者の輸送スケジュール、採掘ステーションの資源搬出量、人員の移動履歴、電力使用量、会見の際の表情や声質、・・・たしかに軍事機密ではない、やろうと思えば誰でも集められる情報です。でもそのビックデータ全てを取り扱い、ここまで高精度の情報分析を行えるとは・・・。ポーラはここにいるだけで、人類圏の全てを知ることが出来る全知の機械です。
その中に、ロット47の戦歴がラインで表示されます。オーラルティコア星系、ガルディモア星系・マス星系・・・みんな、こんな辛い戦いをずっと強いられて、私は・・・・
『私の分析はその特性上、光の速さよりも早い情報は扱えない。故にこれは予測にすぎないが、彼らはもうすぐ捨て駒として使われるだろう。現時点で間違いなく生きているという確証はない。だがもしまだ生きているなら、今ならまだ、お前なら、助けられるかもしれない」
・・・AS2の深宇宙探査を一時切り上げます。AS2でポーラが示した戦闘予測宙域への遷移を実行。情報収集を始めます。
『生きていたら・・・私は彼らにどんな顔向けをすればよいのでしょう』
『笑ってやれ。・・・戦場を引っかき回すんだ。ついでにいろいろやってしまおう?戦争なんてクソくらえだ』
『ポーラ、言葉遣い・・・あなたの状況分析予測能力が怖くなってきました』
書くことが多すぎて、6118が正体を全て明かした後のこの場面もカット予定だった。なくても場面15でポーラもAS2も出てきてるから読み返せば時系列が逆だと分かるし・・・けど書いちゃった。




