セイラの覚悟
セイラはドルフの背に乗り、ほかの竜に乗って逃げる市民の護衛にあたっていた。
一緒に任務にあたるのは、同僚騎士のオラリエと相棒の紫竜、ロブ。
市民は、護衛中に街の上空を飛んでいるうちにどんどん増え、今では十人前後を超える大所帯になっていた。
ここまで、増えれば敵にとっては格好の的になるのは言うまでもない。
そして実際、セイラたちは空中で六人の敵に囲まれていた。
敵は、種を蒔く者の信者たち。
六人のうち三人は、竜の国の民。残りは他国の者だ。
他国の者は、以前ルーキスを誘拐した密猟団が使用していた機竜艇に乗っていた。
オラリエが竜や他国の攻撃を障壁で全て防いでいるが、それもどれくらい保つかわからない。
市民だけでも逃がしてあげたいところだが、それも難しそうだ。
「オラリエ、ロブの障壁はどれくらい保ちそう?」
セイラは通信石に触れてオラリエに何度も聞いた質問を口にする。
『さぁ?どれくらいだかわからないが、そんな保たないとだけ言っておく』
「…そう」
今もなお、障壁を破壊しようと躍起になって攻撃を続けてくる敵を、セイラは忌々しそうに見つめた。
敵の数よりも圧倒的にこちら側の人数も多く、戦力となる竜もいる。
全員で戦えば何とかなるかもしれない。
だが、集団で戦う訓練をしていない竜は戦場では足を引っ張るだけなうえに、彼らの相棒である人間が余計な指示をしたせいで、戦況が悪化する可能性もある。
「どうする…?」
誰かに尋ねるわけでもなく、ポツリとセイラは呟く。
すると、ドルフが首を動かしてセイラの顔を覗き込んだ。
【どうするって、もうセイラの中では答えが決まっているんだろ?なら、それをやるしかない。…だろ?】
ドルフの言葉にセイラは頷く。
そう、今の自分に出来ることはただ一つだけ。
そして、それが人々を助ける最善の道だ。
「ドルフ…付き合わせてごめん」
セイラがそう言うと、ドルフは笑って首を横に振る。
【謝る必要はねぇよ。俺たちは相棒だろう?こういう時は互いに命を預けあって戦うもんだぜ?】
「そうだね。…ありがとう」
セイラは笑って言うと、ドルフの背を撫でた。
それから覚悟を決めて、通信石に触れる。
「オラリエ。よく聞いて──」
セイラがそう言った瞬間、婚約者であるゼンの顔が思い浮かんだ。
すぐにセイラは唇を噛み締めて、頭の中からゼンを叩き出す。
どうせ、ゼンだって自分と同じ立場ならきっと同じことをするだろう。
なら、きっと文句は言われないだろうし、言わせない。
『セイラ?どうした?』
通信石から聞こえてくるオラリエの声で、セイラは我に返る。
「ごめん。…オラリエ、貴方は障壁を張りながら市民を学校へ避難させて。この六人は私たちが引き受けるから」




