弟子
円形の刃は左右からリライを挟むように飛んでくる。
リライは体を仰け反らせて回避した。
避けられた円形の刃は、空中で軌道を変え再びリライに向かって襲いかかってくる。
それを見て、リライは思わずニヤッと笑みが浮かぶ。
「…面白いな」
リライは仰け反ったまま、地面に手を突き勢いよく跳ね上がる。
跳ね上がった体の下を、円形の刃がギリギリで通過してクレアの手元に戻っていく。
「いつまで避け切れるかしらねっ!」
今度は、円形の刃を投げるタイミングをずらして攻撃を放つ。
一歩身を引いて一枚目を避け、間髪入れずに二枚目が迫る。
「…っと」
前に一歩踏み出して二枚目を躱した瞬間、背後から最初の刃が襲いかかる。
リライはしゃがみ込み、それを回避するとそのまま勢いよく飛び跳ねた。
戻ってきた二枚目が通過する瞬間、それを蹴り、足場にするとクレアの間合に飛び込む。
「はぁ!?」
リライが逃げ回っていたせいで、まさか攻撃を仕掛けるとは思っていなかったクレアは慌てて二枚の円形の刃を消し去る。
それと同時に、自分とリライの間に鉄の板を作り出す。
「甘いな」
リライは左手で鉄板に手を付くと、それを軸に勢いを殺さずにクレアの後ろに回り込んだ。
地面に着地すると、クレアが反応するより前に強く踏み込み彼女の背に向かって剣を下から振り上げる。
「…っ」
間一髪のところで気づいたクレアは、慌てて後ろに飛び退く。
同時に刀身を十本作り出してすぐにリライに向かって放つ。
それを後ろに回転しながら、リライは避けると最後の一本は剣で叩き落とした。
それでも、全く息を乱していないリライを見てクレアの背中に冷たいものが流れ落ちる。
「本当になんなの!?このおっさん…!」
リライは剣を一度空で振ると、再びクレアに切先を向けて肩を竦める。
「お前は、自分の能力を過信し過ぎて鍛錬を怠り過ぎだな。…まるで戦いがなってない。これなら、俺の弟子たちの方がまだ強いな」
その言葉にクレアは顔を真っ赤にすると、拳を強く握りしめた。
「何言ってるわけ?私を弱いって言ってるの?」
「そうだ。現に俺は全く疲れてない」
「ふざけないでよね!?ここまでは、ただ暇つぶしなんだからっ!」
クレアはそう怒鳴るとリライの周囲をぐるっと取り囲むように何千という針を作り出す。
それを見て、リライはため息をついた。
流石にこれを避けきるのは、骨が折れそうだ…。
リライが眉を顰めると、クレアが苛立ちを隠そうともせずに喚き散らす。
「私は生まれてからずっと、戦闘だけを叩き込まれてきたのよ?その私のことを弱いだなんて…!!絶対に許さないから!」
「弱いとは言ってない。俺の弟子の方が強いと言って…」
「弱いって言ってるのと同じよ!」
リライの言葉を遮って、クレアは怒鳴ると一度大きく息を吸ってゆっくりと吐き出す。
「いいわ、わかった。なら、わからせてあげる。鉄の国の執行人の実力をっ!!」
クレアはそう言って、右手をリライに向かって突き出す。
それを合図に、千本以上の針が一気にリライに襲いかかった。




