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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
卒業と試練と騎士団
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後悔は無い

 ラーシャは職員室に向かう途中でフラウを見つけて声をかけた。


「先生!!」


 フラウはラーシャの声に気づいて立ち止まると振り返って驚いた顔をする。


「ラーシャ、もうみんなと帰ったのかと思った。どうした?忘れ物か?お前も卒業して大人の仲間入りしたんだから、もっとしっかりしないとダメだぞ」

「違うっ!先生に会いに来たの!」

「俺に?」

「そう!」


 ラーシャはそう言うとため息をついた。


「お礼を言いたくて」

「なんの?」

「二年前、私に竜使いを諦めた方がいいって話の事」


 フラウは目を丸くする。

 正直あの話はラーシャに恨まれててもおかしくないと思っていた。応援するのではなく、諦めるように言ったのだから。

 現にあれ以来ラーシャはこの話に触れようしてこなかった。


「それは…お礼を言われるような話じゃないよな?」

「ううん、先生が真剣に私とルーキスの事を考えて言ってくれているのはわかってたから。それに先生がそう言ってくれたから、いろいろ覚悟をする事が出来たの。ありがとうございました」


 ラーシャはそう言って頭を下げた後、ニコッと笑う。


「私、ルーキスと竜使いになる夢を一緒に叶えるよ。絶対に」


 フラウはラーシャを眩しいものを見るかのように目を細めて頷いた。


「…あぁ、きっとラーシャとルーキスなら乗り越えられるよ」

「へへ、ありがとう。…あ、そういえば先生」

「ん?どうした?」

「先生の知り合いは教師になって幸せ?」

「どうして?」

「先生の知り合いが夢を諦めても幸せだったらいいなって思って」


 ラーシャの言葉にフラウは苦笑するとその頭をポンポンと撫でた。


「もちろん幸せだって言ってたよ」

「そっか…!よかった!」

「ほら、今日はニア達とご飯に行くって言ってただろ?行ってこいよ」

「はーい!」


 ラーシャは頷くと窓をガラッと開けて足を掛ける。


「ラーシャ、そこは玄関じゃなくて窓だぞ。しかもここは二階だ」

「わかってるよ?」

「窓は出入りするところじゃない」

「今日だけ!今日だけ!」

「ダメだって…」


 ラーシャを止めようとするフラウの前にルーキスが現れた。


【フラウ、今までありがとうな。感謝してる】

「…あ、ああ…」


 フラウの後ろでパタパタ飛んでいる赤竜にルーキスは頭を下げると、ラーシャを超えて窓の外に出ると身体を大きく戻した。


「じゃあ先生またね!」

「あ、おい!!」


 ラーシャは窓から飛び降りると、待っていたルーキスの背に乗ると颯爽と飛び去っていった。


「…全く」


 フラウは眉間の皺を揉みほぐしながらため息をつくと、赤竜のアンバーが窓枠に留まった。


【フラウ、あの子に私たちのことを話したの?】

「ん?ああ、ちょっとだけな。名前は伏せたけど」

【そう】

「俺たちの話でラーシャの背中を押せたならよかったよ」


 そう言って笑うフラウをアンバーは不安そうな顔をして見つめる。


【ねぇ、フラウ…。貴方、私と契約して後悔してるんじゃない?私が臆病じゃなければ貴方は騎士団の夢を叶えることができたのに】

「アンバーと契約して後悔なんかした事ない。後悔があるとすれば、ラーシャ達みたいにお前ともっと話していればお前を危ない目に合わせないで済んだのに、って事かくらいか」

【だけど…】


 まだ不安そうなアンバーの頭をフラウは撫でる。


「それに教師になってよかったって思ってるよ」


 小さくなってしまったラーシャとルーキスの背中を見つめながら、フラウは満足そうに笑う。


「子供の成長をこんな特等席で見れるんだ。こんな最高な仕事、他にはないだろ?」


 アンバーはそんなフラウを見てから、ラーシャ達の方に視線を移す。

 ルーキスが戦うのが好きじゃないのにこのまま、ラーシャに竜使いを目指させてしまってもいいのだろうか。とずっと悩んでいたフラウを思い出す。

 自分たちと似てるから、ラーシャが戦いになった時に自分と同じ恐怖を味合わせたくないとよく言っていた。

 そんな彼女達が、悩んだ末の決断が夢を諦めずに進むことだった。

 その決断に行き着くまでに何があったのかはわからないが、確かに前よりも頼もしく見え彼女達の成長を感じられた。


【そうね。確かに最高の仕事かもしれないわね】


 フラウとアンバーはそれから、ラーシャ達が見えなくなるまでずっと窓から見送った。

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