王城
デイルとフリーラは月朧が咲き乱れる庭園を歩いていた。
「いやー、ここはいつ来ても月朧が咲き乱れてて綺麗だねー」
月朧を眺めながら呑気な声で言うデイルを信じられないと言う顔でフリーラは見つめる。
その顔色はものすごく悪い。フリーラの相棒であるリリーも心配そうだ。
「団長…よくそんなに平然としてられますね…」
「慣れてるからね。…いい加減フリーラも慣れた方がいいよ?もう五回目だよね?」
デイルの言葉にフリーラは目をカッと見開いた。
「慣れるわけないでしょ!!女王陛下にお会いになるのに慣れるとか無理!」
「全く…私なんて何回ここに来たか数がわからないくらい来てるのに」
「女王陛下とお茶飲み友達って時点で団長は可笑しいんですよ…!」
デイルは“そうかなー?”と笑いながら聞き流す。
二人がいるのは、竜の国の女王陛下が住まう居城。
つまりは王城だ。
王城を囲む庭園は虹霓竜である金と銀の竜により時を止められ、いつでもここは花が咲き乱れ美しい景観を保っている。
しかし神の所業のような、この美しい庭園をフリーラには楽しむ余裕などない。
五年前に副団長に任命されてからフリーラは年に一度、団長であるデイルと共に必ず王城へ登城しなければならない決まりがある。
その為、この時期になると女王陛下に会わなければならない緊張でフリーラの胃がキリキリと痛み出す。
これから騎士団にとって重要な会議が行われるのだ。
年に一度、行われる十の地区に分かれている竜の国の騎士団一斉入団試験の一次試験の結果報告。
一次試験は各地域、各隊が主体として行われ合否も各隊が判断しその結果を団長、副団長が女王に伝え、その後、女王と話し合い会場を決め二次試験として、合格者を集めて女王に任された隊が実技訓練をした後に再度試験を行い本採用となる。
受験者の合否発表は明日に迫っている。
会議を円滑に行うためにフリーラが出来ることと言えば…。
「私は大人しくしてますねっ!発言しませんから!」
キリッとした顔でフリーラが宣言すれば、デイルが苦笑した。
「まぁ、どうせ今年も第四騎士団が二次試験の担当だろうからすぐ決まるよ」
第四騎士団が管轄するドルアーデは気候も安定していて新米兵達の訓練にはもってこいの場所であり、第四騎士団自体も新兵訓練をよく任されている事もあって教えるのに定評がある。
今年も第四騎士団で間違いはないだろう。
「それもそうですね!私も新兵の頃は第四騎士団の方々にお世話になりましたし」
「うんうん。今更、第八でやってって言われても準備とか大変で困っちゃうよねー」
「全くお前は、相変わらず面倒ごとが嫌いな奴だな」
背後から声をかけられ振り返るとそこには第四騎士団の団長、ジェスターと副団長のディランがいた。
「久しぶりだね!」
「そうだな!」
デイルとジェスターが握手を交わしている横で、フリーラとディランが静かに頭を下げた。
「ところですぐに面倒事を他人に押し付ける癖、辞めた方がいいぜ?」
そう言うジェスターの後ろでフリーラが勢いよく頷いているのを見て、デイルは気まずそうに咳払いをする。
「そ、そんな事ないよ。…でも、ほら…!せっかく第四騎士団だって今年も自分たちが担当するって思って準備とかだって進めてるだろうし、君たちの頑張りを無駄にできないって言うか…」
「はいはい、そう言うことにしておいてやるから、さっさと行くぞ」
四人は王城に入ると、他愛の無い会話をしながら円卓の間へと足を踏み入れる。




