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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
過去と挫折と約束
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本心

「ルーキス!!」


 ラーシャは檻の中に眠っているルーキスを必死に呼び起こす。


「ルーキス!起きなさいっ!!ルーキス!!」


 なかなか起きないルーキスに業を煮やしたラーシャが鉄格子を掴むとガシャガシャと揺らして、ようやくルーキスが目を覚ました。


【ラーシャ…?】

「やっと起きた!ルーキス!!」


 寝ぼけていたルーキスはやっと状況が飲み込めたのか、カッと目を見開いてラーシャを睨みつける。


【何でラーシャがここに!?…この気配は…ニクスか…!あのクソ野郎…!!】


 全てを理解してギリっと歯を鳴らすルーキス。


「ニクスはルーキスのことを本当に心配してたのよ。もちろん、私もね。…私から離れたくてわざと捕まったの…?」

【なんで、それを知ってて助けに来たんだよ?】

「…」


 やっぱりそうなのか…。


 わかってたけど、本人から言われるとすごく辛い。


「どうして?…どうして私からそうまでして離れたいの?」

【オレと一緒にいてもお前の夢を叶える事は出来ない。だから他の竜と契約した方がいいだろ】

「そんな事ないよ、ルーキス。…そりゃあね、夢をルーキスと一緒に叶えられたら嬉しいよ。けど、それでルーキスが無理をして私の夢を叶えてくれて…そのせいでルーキスを失うのが私は怖い」


 ラーシャはそう言って檻の中に手を入れてルーキスに手を伸ばした。


「私は夢よりも何よりもルーキスが1番大切。何があってもずっと一緒にいたいの。ルーキスを失うのが何よりも怖い。だから何があってもルーキスを守りたい。この命に変えても絶対に。…これが私の本心。…ねぇ、ルーキスの本心も聞かせて?ルーキスはもう私とは一緒にいたくない?」


 そう言ってボロボロと涙をこぼすラーシャの差し出された手にルーキスは頬を寄せた。


【…オレだってラーシャとずっと一緒にいたいし、ラーシャの夢を叶えてやりたい。これは本心だ…でも…】


 そう言うルーキスの身体はわずかに震えている。

 ラーシャは何も言わずにもう片方の手も檻の中に入れると、ルーキスの両頬を優しく包み込んだ。


【…お前を失うのがオレだって怖い。ラーシャだけじゃないんだよ、失うのが怖いって思うのは】


 その言葉にラーシャは目を見開いた。


「ルーキス、あの…」


 ラーシャが口を開こうとした瞬間、隠し部屋の扉が勢いよく開き、ルーキスがすぐに警戒体制に入った。


「大丈夫だよ、ルーキス。セルジュがここの檻の鍵を探して来てくれたんだよ」


 ラーシャは安心させるようにルーキスに笑いかけて、振り返ると身体を凍り付かせた。

 扉の前には先ほど気絶させた二人組が立っていて、セルジュが男に担がれていた。


「全く、生意気なガキどもだ」


 男はそう言って担いでいたセルジュを床に投げ捨てると、その頭を踏みつけた。


「うっ…!」

「セルジュ!!」


 ラーシャがセルジュの元へ行こうとすると、その腕を引っ張られた。

 腕を見ると、ルーキスが檻の間から顔を出して必死にラーシャの袖に噛みついていた。


“ラーシャだけじゃないんだよ、失うのが怖いって思うのは”


 ルーキスの言葉が頭を過ぎる。


 だけど、このままだとセルジュが…!


「そこの銀髪」


 突然声を掛けられビクッと身体を震わせてラーシャは再び二人組の方を向いた。


「さっさとそこから離れなさい。その竜は大事な商品なの。あんたみたいなのが触っていいものじゃないのよ」

「ルーキスは商品じゃないっ!!」


 ラーシャの怒鳴り声に女は目を丸くすると、すぐさま笑い出した。


「ルーキス?その竜、あんたのパートナーなの?まさか竜のためにこんなところまで来たの?ふふふふ、健気で涙が出ちゃう…。でも残念ね。その竜はもう私達のものなの。…そこの黒髪を殺されたくなければ、さっさとこっちに来なさい」


 女の言葉に同意するように男はニヤつきながら、手をセルジュに向かってかざすと一瞬にしてセルジュの頭を水が包み込んだ。


「ごぼっ…!」


 苦しそうに水の中でもがくセルジュの姿にラーシャは顔を真っ青にさせた。


「わかった!わかったから、セルジュに酷いことしないで!!!」


 ラーシャが泣きながら懇願すると男はニヤニヤ笑ったままセルジュを水から解放した。

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