すれ違い
やっぱりルーキスを死なせる事なんて出来ない…。
話し合いをする前にもう私の答えて決まってるんだよね…。
「ねぇ、ルーキス」
ラーシャは肩に乗るルーキスに声をかけた。
【どうした?】
「あのね、ルーキスに聞いてほしいことがあるんだけど」
【なんだよ?】
ラーシャは立ち止まった。
「あのね、私、夢諦めようかなって思う」
【なっ…!】
ルーキスは飛び立ち、ラーシャの前に来ると顔を顰めた。
【オレと契約するとき、竜使いになって一緒に世界を巡ろうって言っただろ?それを辞めるってことか?】
「うん」
【オレが…戦えないからか…?】
ラーシャは少し考えてから否定した。
「うーん、て言うか私に才能無いのかも。…私の指示が下手くそでルーキスを不安にさせちゃうのかもしれないのかなって」
傷つけないように言葉を選んでルーキスに告げる。
だが、ルーキスは首を横に振った。
【嘘つくなよ。お前に問題はない。…今日の暴走を見てフラウが諦めろって言ったんだろ?】
「…」
ルーキスの問いにラーシャは目を逸らした。
【黙るって事は、認めるって事なんだな?】
ラーシャは手を握りしめた。
ルーキスに誤魔化しは効かないとわかると、ラーシャはため息をついて本当の事を話すことにした。
「まぁね。でも、ルーキスは戦う事が好きじゃないでしょ?…私の夢がルーキスを苦しめてるなら諦めようかなって」
【お前が夢を諦める必要は無い。オレがお前を認めたんだ。お前の夢を一緒に叶えよう】
ルーキスは優しすぎる。自分の事よりも私を優先しようとしてくれている。
このままでは、ルーキスは無理をしていつか本当に死んでしまう。そんなの嫌だ。
ラーシャは首を横に振った。
「私の夢を叶えるにはルーキスが戦わなきゃいけないんだよ…?」
【わかってる。…大丈夫だ。ラーシャが卒業するまで克服する】
「2年間も危機回避訓練して来て1度もまともに試合出来てないのに?」
【絶対に克服する】
ルーキスがそう力強く断言したが、ラーシャは顔をクシャッとさせて今にも泣きそうな顔になる。
「無理だよ!」
ラーシャは思わず怒鳴り声を上げていた。
それがきっかけで想いがどんどん溢れてきて、歯止めが効かなくなってしまう。
「ルーキスは戦えないじゃない!戦えないのに世界を巡るなんてそんなのルーキスを死なせるようなものだもん!私が死ぬ分には構わないよ?自分の夢を叶えて死ぬんだから!でもルーキスが私の夢のせいで死んじゃうのは絶対に嫌!だから私は竜使いになんかならないっ!!」
ルーキスは目を見開き身体を震わせる。
それを見てラーシャも自分の失言に気づいて身体をこわばらせた。
【なんだよ…それ…】
「ルーキス、お願い聞いて…」
【オレが戦えないから諦めるんだな】
「違う…」
【でも、オレが戦えないから諦めようとしてるんだろ?】
「違う!!」
【さっきからずっとそう言ってるだろ!】
「…ちが…」
【何も違わないだろ…!】
ルーキスは吐き捨てるように言った。
「わた、私は…!ただ…」
【もういい。契約を解消しよう。それにオレは自分が死んでもいいってやつは嫌いだ。ちゃんと戦えてお前を守ってくれる竜と契約し直せよ】
ルーキスはそう言ってラーシャの前から飛び去っていってしまった。
「ルーキス!待って!!!ルーキス!!!!!」
ラーシャの声はルーキスに届かず、その場に膝から崩れ落ちた。
「お願い…ルーキス…私はただ、ルーキスと…一緒に、いたいだけなんだよぉ…」
ラーシャの声を掻き消すように雨が一雫ポタリと落ちてくると、段々と雨は激しさを増して降り注いだ。




