少年漫画ヲタは中二病がわからない。
俺たちはいつの間にか霧に包まれていた。
何だこの霧は。俺たちはずっと霧が出るなんてありえないような草原を歩いていた。何で霧に包まれてるんだ。
「こ、これは女神様がビームとかを使ったときと同じ感じがします!多分魔法です!あまり吸わないでください!」
暗城さんがそう言った気がする。既に俺は意識が遠のいて聞こえなかったみたいだ。
俺は気が付くと真っ暗な空間にいた。
「やあ、え~っと、輝崎太陽って読み方で合ってる?」
目の前に肌色の肌で黒い角を二本生やした人間か悪魔かよくわからない奴が出てきた。
なんなんだこの女。髪は紫色で肩よりちょっと下まで伸びてる。そして水着のようなずいぶん大胆な衣装を着ている。こんな奴知らない。
「悪いけど自己紹介は省かせてもらうよ。僕は君たちをより深い仲にするためにやってきた。」
あーあ。なんか含みのある言い方だったよ。絶対嘘じゃん。絶対仲をぶち壊すために来たじゃん。
「で、何この空間?」
「すぐにわかるさ。」
そう言った瞬間、真っ暗な空間が突如見覚えのある空間に変わった。その空間には机と椅子があって黒板がある。教室だ。俺は異世界にいたのに突如教室に。察したこれはこの悪魔みたいな女の幻術的な技だろう。
廊下の方から騒ぎ声が聞こえる。廊下の方を見ると見覚えはあるが自分とは縁のなかった制服を着た者が歩いている。あの制服は中学校の制服だ。俺がいた中学ではない近所の別の学校。時計を見ると8時を指している。ということはさっきの廊下の子は登校してきたのだろう。
ガラガラガラ
この教室にも生徒たちが集まり始めた。
「今日小テストあったっけ?」
「やべー宿題忘れた見せて!」
「おはよう~。昨日のドラマ観た?」
学校にいる学生らしい声がいくつも聞こえてくる。この悪魔みたいな女はこんな光景を見せて何を企んでいるのだろうか。
ガラガラガラ
「皆の者、待たせた。今日も暗黒の城よりこの私暗黒姫が降臨したぞ!」
なんか学校の学生らしくないセリフが聞こえた。どちらかというと異世界の魔王軍のようなというか漫画とかでも出そうなセリフだった気がする。
「さあ、お出ましだ。」
俺をはめようとしている悪魔みたいな女が『さあ、お出ましだ。』というのならこれからがコイツの作戦なのだろう。気を引き締めていこう。
だがこの引き締めた気は一瞬で緩んだ。
先ほどの学生らしくないセリフの主は今よりも少し小さな暗城さんだったからだ。
「ふふふふふふふ、滑稽だな、あの姿まさに中二病って感じだな。」
少し小さな暗城さんは右目に眼帯をし右手に包帯を巻いている。
「ははははは!今日も来たぞ暗黒姫!」
「サイコー!」
クラスの人たちが暗城さんの登場に騒いでいる。
「ふふふ、クラスの者たちに笑われているぞ!ヤバいこと言ってるって自覚はないのかあの娘。 どうだ普段高校では1人でクールにふるまっているが中学では人気者だぞ。」
「なあ、教えてくれよ。」
「なんだい?何を教えてほしいんだい?この魔法についてかい?まあ教えないけどね。」
悪魔みたいな女は俺を馬鹿にしてそうな目で見ている。俺が教えてほしいのはそんなことじゃない。それに魔法について聞いたって教えてくれないのはわかる。それ以上に気になることがあるんだ!
「そんなんじゃねーよ。俺が聞きたいのは“何で暗城さんはあんなかっこいい格好をしているのか”ってことだ!」
右目に眼帯、右手に包帯かっこいいじゃないか!なぜ学校にそんな格好!もしかしてこの学校はこういう格好をしていても許されるのか!だとしたら俺は入る中学を間違えた!俺もこんな格好したかった!
「は?彼女は中二病だったんだよ。何でこの状況でわからないんだ。女神に選ばれたヲタクだろ?」
「チュウニビョウって何だ?病気?」
マジでこの悪魔みたいな女が何を言ってるのかわからない。異世界関係の言葉なのだろうか。『女神に選ばれたオタクだろ?』ってことはヲタクなら知ってるってことか?
「本気で言っているのか?」
「ああ。」
そんなやり取りをしていたらいつの間にか教室では1時間目の授業が始まっていた。
「君は本当にヲタクなのか?アニメにも出るだろ?まあいい、説明するよ。まずこれは病と付いているが正式には病気ではない。簡単に言うと独自の世界観を作りその中でも自分は特殊能力に目覚めている。そして暗黒だの爆炎だのちょっとかっこいい単語を使ってくるんだ。見た目まで変えてしまうあの娘はかなりの重症だろうね。」
なんとなくわかった。
「暗城、解いてみろ!」
先生から指名されている暗城さん。どうやら数学のようだ。暗城さんは前に行き黒板に答えを書いている。
「見ててごらん。アイツは答えを書くだけでなく必ず何かやらかす。」
「よしさすが暗城、正解だ。席に戻れ。」
暗城さんが描いた答えは当たっていたみたいだ。数学の先生が暗城さんを褒め席に戻るように指示した。こんなのよくある光景だ。
「教諭、また何かあったら呼んでくれ。いつでもこの暗黒姫が手を貸そう。」
「お、おう」
数学の先生が返事をした。
クスクスとクラスの人たちの笑い声が聞こえる。
「先生のこと、教諭だって……。」
「アイツ面白すぎる。」
「『この暗黒姫が手を貸そう』って言ってて恥ずかしくないのか。」
「ここまで笑いものにされているのに本人は一切気付いていない……。」
悪魔みたいな女がそう言ってこっちを見てきた。
「だから何だ?」
「いや、君、あの娘の事おかしいと思わないのか。笑えるじゃないか。」
なんとなくこの悪魔みたいな女の目的がわかった。
「あっもしかして俺にこれを見せればこのクラスの子たちみたいに暗城さんを笑うとでも?それでこの夢の世界が終わっても俺が暗城さんを笑って関係がうまくいかなくなるとでも思ってんのか?」
「チッ!それじゃあわかったよ。もう一つ見せてやるよ。」
悪魔みたいな女が舌打ちをしてから言った。




