少年漫画ヲタは異世界の歩き方がわからない。②
ファイアラビットとかいうアホ兎の仲間が近寄ってきている。
「た、戦うぞ!暗城さん!」
俺は立ち上がり今日持ってきた漫画のキャラクターのイメージを始めた。
今日の能力ならあのアホ兎の大群より多くなれるはず。それに加えて暗城さんも戦ってくれれば負けることはない。
「い、嫌です。」
今なんて言った暗城さん。嫌?
「あんな可愛いファイアラビットさんを討伐なんてできません!」
どうやらこの戦い俺VSアホ兎の大群と暗城さんの連合軍らしい。暗城さんと戦うのはごめんだ。よし逃げよう。
「わかったよ、暗城さん逃げよう。」
俺は走り出した。しかし暗城さんはついて来ない。
「あ、あのファイアラビットさんは捕らえて飼います。」
何言ってんだ暗城さんは!まあ暗城さんがあの兎飼ってるところ想像したら見た目だけは可愛いけど噛んだら炎出す奴だからね。ていうかさっき自分で『元の世界では安全という認識の動物でも異世界では凶暴ってこともある』とか言ってて飼うって何。説得するのは難しそうだ強引に連れて行こう。
なんとか俺は暗城さんを強引に連れてアホ兎から逃げることに成功した。
なんか今の数分で暗城さんの知らなかった部分を知れた気がする。一般的な女子高生のようにかわいいものに目がない……。
「はぁ…」
ため息をついてる暗城さん。どんだけ飼いたかったんだ。
あとどのくらい歩けばいいのだろうか。スマホがなきゃ自分がどれだけ進んだのかもわからない。
ブオオオオオン!!
今度は何でしょうか。なんか轟音がどこかから聞こえる。まるでバイクのエンジン音のような音がまあバイクなんてあるわけないよなこの中世みたいな世界に……。そう思っていたのに前から現れたのは……
「バイクですね。」
冷静に言う暗城さん。もしかして異世界にバイクがあるのは普通なのだろうか?
「えっと?暗城さん。異世界にバイクがあるのは普通なの?」
俺は異世界がわからないだから暗城さんに確認のため尋ねた。
「普通というと少し違いますね。おそらく私たちが来る前に他の転移者が持ってきた物、もしくは作り方を提供したといったところでしょうか。」
てことはこのバイクを持って来たもしくは作り方教えちゃったのもアニメイゾの店員か……。まあ確かにこんな世界で現代科学の物で商売したら儲けられそうだもんな。
「って分析してる場合じゃない!突っ込んでくるぞ!」
俺たちにはとある確信があった。この世界に俺たちより前に転移してきた者つまりそれはアニメイゾの店員。そしてアニメイゾの店員が魔王軍幹部である現状、彼らが提供したであろうバイクが“誰”の手に届くか。十中八九それは魔王軍だろう。
俺は暗城さんの手を引っ張り、俺たちは突進を避けることができた。
ブオオオン! ブオオオン! ブオオオオン!
あれ?おかしいな。バイクは今避けて後ろにいるはずなのにエンジン音が前から聞こえる。
「いっぱい来ましたね。」
「ああ、いっぱい来たね。」
さっきのアホ兎の大群が可愛く見える。20台近くのバイクが来ている。ついでに運転してるのは明らかに悪魔って感じの奴。
「輝崎さん、5分くらい時間稼げますか?稼いでくれれば一撃で倒せます。」
暗城さんが敵に聞こえないように小声で言った。なんかすごい自信ありげな表情している。
「そこまで自信があるなら見てみたい。5分だな。やってやる!」
そう言った俺は両手の人差し指と中指だけを伸ばし体の前にそれで十字架を作る。
「影分身の術!!」
俺は20人くらい出そうと思ったが4人しか出なかった。どうやら20人分のイメージが足りてなかったみたいだ。
「おおお、なんだコイツ!増えたぞ!」
悪魔みたいなやつらが驚いている。どうやらコイツらの標的を俺に移すには十分だったみたいだ。
「コイツ面白い能力持ってやがるぞ!捕らえて魔王様のところに連れて行くぞ!」
どうやら俺が5分稼げない場合、俺が誘拐されるのが決まったみたいだ。しかも囲まれてしまった。
さあどうするか。俺は分身のうち1体に突撃させた。
「うおおおお!いっけー!」
「本体かもしれねぇ!死なない程度に突っ込め!」
ブオオオオン!
見事に俺の分身は轢かれてしまった。まさか人生で自分の轢かれた時の表情を見ることになるとは思わなかった。
ボンッ!分身が煙を立てて消えた。
「な、なんだこの煙は煙幕か!姑息な手を使いやがって。」
「あまり近寄るな毒ガスかもしれねぇ!」
「ま、前が見えねぇ!」
「うわあああああ!」
どうやら分身が消えた後のおまけの煙が敵を混乱させてるらしい。なんか悲しい。少年漫画の主人公ならきっと分身消されずに分身として活躍させて5分稼ぐだろう、いや時間稼がずに普通に倒すかもしれない。でも俺の場合、分身が瞬殺されてその反動で出た煙が相手たちを混乱させている。まあでもこれで5分稼げそうだ。
「輝崎さん、お待たせしました!そこから離れてください!」
どうやら5分経ったみたいだ。100m位離れたところで暗城さんが赤黒いオーラの玉を作っている。
「よし!」
残りの分身を全部消して煙で敵が混乱してるうちにそこから離れた。
「詠唱は考えてなかったので次回までに考えます!喰らってください!爆殺魔法!」
爆殺魔法!それは知ってるぞ!暗城さんが貸してくれた『あのワンダフルな魔界に宿泊を!』に出てきた魔法使いが使う1日1回きりの必殺技だ!ん?1日1回?
「ちょ、待って!あんじょ」
ボオオオオオオオオオオオオオオオオン!
俺が気付いたころにはもう遅かったみたいだ。魔法は発射されさっきまで俺がいた場所は業火に包まれている。いやそれより問題なのはさっきまで自信満々の表情で立っていた暗城さんが地面にうつぶせで倒れていることだ。




