骨折です。
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俺は病院で医者による診察を受けていた。
「はい、レントゲンを見ましたが両手骨折ですね」
やっぱりか〜〜。
今までの人生で10本も骨折してるから感覚でわかるんだよなあ。
やべ。隣のJK二人が青白い顔で戦慄しておる。
火花ちゃんと呼ばれていた子は、さっきまで「多分ヒビ程度だから心配しないで」と礼という子にささやいていたのに、今は完全に固まっている。茶髪の短髪が少し揺れて、唇がわなわなと震えてるのがわかる。隣の礼ちゃんも、真っ青な顔で「ご、ごめんなさい……」と小さく呟き続けている。怖いって……。
医者は淡々と続けた。
「幸い、手術が必要なほどひどい折れ方ではありませんね。ギプスで固定して安静にすれば、4〜6週間程度で回復する見込みです。ただ、両手なので日常生活がかなり不便になりますね」
そう言って医者は二人のJKを見た。
医者のおっさんの言葉と視線で空気が一気に重くなる。
火花ちゃんの肩がびくりと揺れる。礼ちゃんはさらに小さくなって「ごめんなさい……」を連発している。
俺は苦笑いを浮かべて、腫れた両手を軽く持ち上げてみせた。
「あー、大丈夫っすよ。味噌汁とか、口に運ぶ練習とかすればなんとか……」
「そんなのダメに決まってます!!」
突然、火花ちゃんが声を上げた。医者も少し驚いたように彼女を見る。
「私が折ったんだから、私が責任取ります!介助とか、全部やりますから!」
「え、火花ちゃん……?」
礼ちゃんが目を丸くする。俺も思わず「へ?」と声が出た。
火花ちゃんは顔を真っ赤にしながら、それでも真っ直ぐ俺を見据えてきた。さっきまでの青白さはどこへやら、今は覚悟を決めたような表情をしている。
すると礼ちゃんも立ち上がった。
「私も手伝います!!」
医者はホッとした表情を浮かべ書類を記入し始めた。
「じゃあ、付き添いの方として名前を書いておきますね。お名前は?」
「来栖 火花です」
来栖火花。ド派手なフルネームだ。
礼ちゃんも慌てて横から口を挟む。
「あっ、私は天谷 礼です。火花ちゃんに全部は押し付けません!」
うんうん、清楚なお名前だ。ん?
あっれ〜。気づいたら俺が知らない内に話進んでない?ウォウウォウ。
◆◆◆
診察が終わり、ギプスの姿で廊下に出たところで火花ちゃんが改めて俺の前に立った。
「あの……お名前と住所を聞いてもいいですか?」
「え?なんで?」
「私たちが介護するからです!!」
隣で礼ちゃんも「うんうん」と頷いている。
もちろん俺の答えはこうだった。
「……え、マジで?」
「マジです。私が折ったんだから当然です」
完全に逃げる気ゼロの目だ。礼ちゃんも「私も手伝いますから!」と横から食い下がってくる。これ以上拒否したら、二人とも本気で泣きそうな雰囲気だ。
俺は深くため息をついて、名前を教え、渋々スマホを取り出し(両手ギプスで操作が地獄なんだが)、住所を教えた。正直、女子高生二人を呼び込むなんてどうなんだろうと思いつつも、今の状況じゃ選択肢がない。
"親友"に毎日助けてもらう訳にもいかないからな。
「で、君たちが助けてくれるのはありがたいんだけど」
「「はい?」」
「君達学校は?」
「「あ!」」
オイオイマジかよ?学生の本分は学業なんだから忘れちゃダメだよぅ。
「先に行きなよ。俺は迎えがあるから」
「そうなんですね、安心しました。じゃあ私達はもう行きますが学校終わったらすぐ住所に向かいますね!」
「いやいや、そんな気負わなくていいからね……」
そう言うと二人は去っていった。これからことが妙に不安だ。今は妹が修学旅行でいないから助かるが……。
もし妹が家にいたら、両手ギプスの兄と女子高生二人が同じ部屋にいる光景をどう説明するんだ。想像しただけで胃が痛いのじゃ。
これは"親友"に要相談だ!
「おーい!」
おっ、病院の待合室でぼんやり待っていたが"親友"がやって来たようだ。
「よっ。大丈夫か?ほんとにお前が」
うんうん。心配してくれるのかな?
「両手骨折したって聞いて"大笑い"したぜ!」
親友は待合室に入ってくるなり、声を上げて笑い始めた。他の患者さんたちがチラチラこっちを見る中、全く気にした様子もない。
「おい、笑えよ。両手だぞ?両手。味噌汁どうやって飲むんだよ。ストローか?あははは!」
俺は呆れた顔で親友を見据えた。
「お前な……心配して来たフリして、純粋に面白がってるだろ」
「当然だろ。お前の不幸話は俺の生きがいなんだよ。朝から泥だらけになって、痴漢冤罪で両手折られて……災難だな!!」
ここで一旦、言っておこう。俺はボッチだ。意外と周りに馴染めず、一人なのだ。そんな時、俺の不幸話を気に入ったのが弐大 大作だった。
こんな歪んだ人間であるが大学では彼女もいてサークルでも人気で社会性のある人間だ。
「で?他に不幸話はない訳?」
「ふん、欲張りさんめ。そう言うと思ってちゃんと電話では加減して話したんだよ」
「そうかそうか。それで?」
そこで大作の目はキラキラと輝き出した。この話は格段に自信がある!
「なんとな、今日俺の家にJK達が介護に来るんだ!こんな恥ずかしいことはない!」
そう言った途端、大作の目の色が変わった。
いい意味ではない。悪い意味でだ。
「へえ。お前の家に?」
「うん」
「お前さあ。今まで妹以外の女に縁なんてなかったよなあ?」
「……うん」
「……」
大作はゆっくりと腕を組んだ。目の色が、明らかに「面白がっている」から「がっかり」に変わっていっている。
「まっ、今回のことはいいや。俺の車で家まで送ってやるよ」
そう言って大作は病院の出口を顎で指した。
俺は大作に肩を貸してもらいながら、病院の出口へ向かう。
「いや〜、助かったわ。両手使えないと、歩くのもなんか不安だな」
「歩くのに手関係あるか?」
「転んだ時に手をつけないだろ」
「ああ、それは確かに」
大作は納得したように頷いた。
「じゃいくぞ。鞘太」
そうして俺はド派手な大作のスポーツカーで嫌な注目を浴びながら家まで帰宅するのだった。
作者をモデルにしたと言いましたが骨折自体はしたことはまだありませぬ。




