火花
2話ではどうなるのかー
◆◆◆
始まりはあの日だった。私の大親友の天谷礼ちゃんが深刻な顔で相談をしに来た。
「ねえ、火花ちゃん……」
「うん、どうしたの?」
一拍、置いた後に礼ちゃんはゆっくりと喋り始めた。
「わたしね……毎日、電車で痴漢……されてるの」
その言葉を聞いた途端私のはらわたは煮えくりかえった。礼ちゃんはいつも馬鹿力でガサツな私を笑わず馬鹿にしなかった。それが私にはとても嬉しかった。そんな礼ちゃんのことを痴漢しているなんて許せない。いや、許されるべきではい。万死に値する!
早速私達は計画を立て始めた。
礼ちゃんと私は同じ電車に乗り、痴漢野郎が礼ちゃんに近づこうとしたら私の取り柄でもある馬鹿力で捕まえることにした。
次の日、私達はその計画を実行に移した。
礼ちゃんは車両扉の近くの手すりに捕まり、私は反対側の車両扉から見張っていた。
だが、なかなか礼ちゃんに近づいて怪しい動きをしている男を見つけることはできないまま、自分たちの降りる駅が近づき、電車内は徐々に混雑していった。
まずい!混みすぎて礼ちゃんが見えない!
そして、そのまま学校近くの降りる駅に着いてしまった。
でも、その時だった。電車内をかき分け礼ちゃんに近づこうとする男を見つけた。
私も男のように電車内をかき分け礼ちゃんに触れる前にその男の手を掴んでやった。
「アンタが礼ちゃんをいつも触ってる痴漢野郎だな?」
ガシっボキっ
やばっ、力込めすぎたかもっ。
手の中で何かが「ボキッ」と嫌な音を立てた瞬間、男が変な悲鳴を上げた。
「ぐぁあ!!」
……あれ? 思ってたより声が高い。しかも痛がり方が尋常じゃない。
でも今はそんなこと考えてる場合じゃない。礼ちゃんを守るために捕まえたんだから、絶対に離さない。
そこで私が掴んでいた手に男は手を伸ばして来た。
はあ?こいつ私のことも触ろうとしてんの?キモ!
そこで私は伸ばして来た男の手も握り潰してやった。
ガシっボキっ
「っっつあ!!!」
男の悲鳴が一段と大きくなった。周りの乗客たちがざわめき、視線が一気に集中する。いい気味だ。痴漢なんてみんなの前で晒してやればいいんだから。
「とりあえずお兄さん、電車……降りよっか?」
私は冷たく言い放ち、男の腕を引いてホームに引きずり出してやった。すでに外には人だかりができていて、みんな好奇の目でこっちを見ている。人生終わったな、この変態。
「火花ちゃんちょっと待って!」
礼ちゃんの声がして、人混みをかき分けて走ってくる。
「なに礼ちゃん? 痴漢相手に遠慮なんて要らないんだからね!」
私は勝ち誇ったように言った。ようやく礼ちゃんを守れた。馬鹿力の取り柄が役に立った瞬間だ!
「違うの! その人痴漢じゃない!」
「……え?」
頭の中が真っ白になった。
礼ちゃんが慌てた様子で、私の腕を掴んでいる男を指差す。
やばいやばい!!痴漢冤罪やっちゃった!!!
私はとりあえず手を離した。
えっとえっと、痴漢冤罪やっちゃった時、どうすればいいんだっけ!?
「ごっ、ごめんなさい!!!」
頭が下がる。いや、下がるしかない。地面に額を擦りつけたいレベルだ。
「まさか私の勘違いだなんて思わず、本当にごめんなさい!!!」
男は両手をぶらぶらさせながら、苦笑いを浮かべた。痴漢冤罪されたのになぜか怒っていない。むしろ呆れたような、諦めきったような顔をしている。そして、とんでもなく目が死んでいる。
「あはは、まあこんな不幸には慣れてるから大丈夫大丈夫」
「で、でも!」
大丈夫なわけない。
周りに集まっていた人だかりは、礼ちゃんの説明で徐々に散っていく。冤罪だったことが伝わったようだ。それでも私の胸のざわつきは収まらない。
男は少し考えてから、ふっと息を吐き、私を見た。腫れた両手を軽く持ち上げてみせる。
「じゃあさ、お願いがあるんだけど……“手”骨折したみたいでさ。病院まで付き添ってくれない?」
「へ?」
その言葉に男はキョトンとした。でも、そんなことで許してくれるなんて全然ありだ。
私と礼ちゃんは男について行くことにした。
※痴漢のサラリーマンは後日、私が捕まえました。
別視点で追体験って好きなんすよ




