村長の決断
「そうじゃな……もしわしらを受け入れてくれる場所があるならそこへ向かいたい所なんじゃが。元々半壊している状態じゃったしのう」
「いいのかい?」
「そりゃ産まれた時からあの村にいたんじゃ。愛着もあるし思い出もある。じゃが、あれを取り返すとなると、犠牲がでるじゃろ。少なくともわしらだけでどうにかできるとは思えんのでな」
「王都まで戻って報告すれば討伐隊が出るだろうけど、それまでどうするかだよな」
「ゴブリンもあそこで大人しくしているとは思えないしね。近隣の村や町にも報告しないといけないし、逃げるにしてもこの辺りに監視は残しておかないといけないんじゃないかい?」
村長のミドが逃げるって決めたみたい。
村長がそう言うならって感じで、皆も逃げる方法やその後のことを考え始めた。
皆でっていっても、ほとんどグリュエールとジェイドが意見を出し合ってるだけ。
マリーは悔しそうに唇を噛んでるけど……
「村長ー! 村長はどこに!?」
外で誰かが騒いでる?
ミドを探してるみたいだけど……
「騒がしくてスマンの、ちょっと様子を見てくる……」
ミドがテントから出て行こうとした時、外で騒いでいた人がテントの入り口を開けて中を覗いてきた。
「あっ! いた! やっと見つけましたよ、村長! 報告したいことが……」
「ケガ人が寝ているんじゃ! 静かにせんか!」
「あっ……申し訳ない……急いでいたもので……」
「いいですよ、気にしないでください。それよりどうされたんですか? すごく焦っているようですが」
アンヌが焦ってる村人を落ち着かせるように、優しく声をかける。
「そうです! 村長、大変です。オグロスとフェネックがゴブリンに連れて行かれたそうです……」
「なにっ!?」
「えっ!?」
ミドとマリーが驚きの声をあげた。
オグロスとフェネックって……
「オグロスとフェネックって誰だ?」
「……村の人じゃない?」
ジェイド達は知らないよね。
フォルクのお父さんとお母さんだよ……
「村の人だよ。私の家の隣に住んでた人なんだ。実は、ここに来る途中で二人の子供のフォルクを助けたんだ……二人はゴブリンに襲われた時にフォルクだけを逃して戦ってたって聞いたけど……」
マリーがジェイド達に二人のことを教えてあげてる。
フォルクを逃がすために戦ってたらしいけど、ゴブリンに捕まっちゃったのかな……
「見張りの者がゴブリンに連れて行かれる二人を見つけたそうなんですが、見つけたときにはもう村の近くまで行っていたようで……そのまま村の中へ入っていくところまでは確認できたそうですが……」
「生きておったか? それとも……」
「……わかりません。少なくとも意識はなかったように見えたと……」
「フォルクには伝えておらんな?」
「もちろんです。言えませんよ、こんなこと……」
フォルクの両親……生きているのかな……
逃げるって言ってたけど、二人を見捨てちゃうの?
まだ生きているかもしれないのに!
「……二人の為に大勢を危険にさらすことはできん」
えっ!?
助けに行かないの!?
「ダメだよ! 助けに行こうよ!!」
あ……つい声だしちゃった。
皆がいきなり声をあげた僕……というか、僕を持っているグリュエールに振り向く。
えっと……ごめんね、グリュエール。




