マリーの暴走
次の日も、その次の日も馬車での旅は続く。
そして、とうとうテッド村まであと一日かかるかどうかって所まで来ていた。
ラーウルフに襲われてからは、モンスターにも会わずに順調に進んでいたけど……
「この先から変な音がします……モンスターかな?」
「どんな音かわかるかい?」
「なにかをぶつけ合ってるような……そんな音です」
「そうかい。馬車の速度を落として、ゆっくり近付いてみようか」
「はい」
今、御者台にはマリーが座ってる。
マリーが馬車を御しながら、前の方に集中してると……
「なにか見えてきました! ……ゴブリンが踊ってる?」
街道から少し外れた平原でゴブリンが五匹、円を作って踊っているのが見えてきた。
なんであんな所で踊ってるんだろ。
「ああ、あれはゴブリンが獲物を捕まえたときによくやる動きだね。喜びの踊りなんじゃないかって言われているんだ。あの円の中心に捕えた獲物がいるはずだよ」
喜びの踊り……?
グリュエールにそう言われて、円の中心を見てみると狐のような獣が倒れているのが見えた。
「そうなんですか。……あ! あの子!!」
マリーが狐を見て慌てだした。
どうしたんだろ。
「あの子を助けます! ウル、手伝って!」
「えっ!?」
マリーは返事も聞かずに、馬車を停めたと思ったら僕を掴んでゴブリンに向かって走り出した。
「ちょっと、マリー!?」
グリュエールが後ろから声を掛けてきたけど、マリーには聞こえてないみたい。
走ってくるマリーに気付いたゴブリンは、踊るのをやめてこっちを威嚇してくる。
マリーはそんなゴブリンの威嚇を気にも留めず、僕を鞘から抜き、鞘は投げ捨てて両手に持ち直して駆け寄る。
モーティマが近くにいるからかな?
ちょっとモヤモヤした気持ちになるけど……でも、そんなことを気にしている場合じゃない!
棍棒を持ったゴブリンが一匹、マリーに向かってきた!
そのゴブリンへ向けて、マリーは僕を横薙ぎに払う!
棍棒ごと、ゴブリンを真っ二つに。
一撃で終わるなんて思っていなかったのか、残りの四匹が慌てだした。
マリーは近くにいるゴブリンに向かって、下段から僕を振り上げる。
マリーが慌てているせいか、それともゴブリンが避けたのか。狙いが逸れてゴブリンの腕を斬り落としただけ。
でも腕を斬られたゴブリンは痛みに喚きながら、地面を転げ回っている。
「“ウインド”!」
追いついてきたグリュエールの魔法が一匹のゴブリンに当たった!
頭から血を流し、痛そうに蹲るゴブリン。
マリーはこっちへ向けられたゴブリンの頭へ、僕を叩きつける!
ゴブリンの頭は斬り落とせたけど、勢い余って僕は地面にまでめり込んじゃった!
マリーは隙だらけに!
そこを狙って、残りのゴブリンが同時に飛びかかってきた!
よし、ここは……
「“ファイア……”」
「ウル、ダメ! 待って!」
えっ!?
ファイアーボールを撃とうとしたら、マリーに止められた!?
「うらあ!」
ゴブリンの攻撃がマリーに当たるかと思った、その時!
モーティマが横から体当たりして、二匹のゴブリンを突き飛ばした!
地面から僕を抜いたマリーは、モーティマが飛ばしたゴブリンに向かって駆けだし、二匹の首を落とす。
グリュエールは腕だけ斬られて転がっていたゴブリンに止めを刺してから、マリーへと近付いてきた。
「マリー、いきなりどうしたんだい?」
声をかけるグリュエールを無視して、マリーはゴブリンに捕えられていた狐の元へ向かって行く。
「フォルク!? ねえ、フォルク!」
フォルク?
誰のこと?




