狐のフォルク
「フォルク! 良かった、まだ息をしてる……グリュエールさん! 回復薬を! 回復薬をこの子に使っていいですか!?」
「……使っていいよ。その代わり、後でちゃんと説明してくれるかい?」
「はい! わかりました!」
マリーはそう言うと、僕を地面に置いてから、回復薬を取り出してフォルクと呼んだ狐にかけてあげた。
「これで大丈夫かな……? ちゃんと呼吸もしているみたいだし……」
心配そうにフォルクの様子を見てる。
あ、そうだ!
「ねえ、マリー。その子に“クリア”を使ってあげようか?」
「うん……お願いできるかな」
「わかった! “クリア”!」
フォルクが光に包まれて汚れが落ちると、黄金色のキレイな毛並みが輝いてる。
尻尾もモフモフで気持ちよさそう!
「ありがとう、ウル。さっきはごめんね」
「さっきって?」
「いきなり掴んでいったのもそうだし、鞘も投げちゃったし。それに魔法を使おうとしたウルに怒鳴っちゃって」
「大丈夫だよ。でもなんで魔法を使っちゃダメだったの?」
「この子に影響があるかなって思っちゃったんだ。火炎魔法を使おうとしたでしょ?
この子に直接当たるなんて思ってないけど、燃えたゴブリンがこの子に向かって倒れたりしたらって思っちゃって……」
「そっか! そこまで考えてなかったよ。止めてくれてありがとう!」
「ふふっ……ありがとうはこっちのセリフだよ。ウルのおかげでフォルクを助けられた。ありがとね」
マリーにお礼を言われちゃった!
それにしても、火炎魔法は使った後のことまで考えなきゃダメなんだね。気を付けないと!
「ほれ、ウル。鞘を持って来たぞ」
あっ! モーティマが鞘を拾ってきてくれたんだ。
「ありがとう、モーティマ! 鞘に収めてもらえる?」
「おう」
モーティマが地面に置かれている僕を拾った、その時……
「あっ……」
「どうした?」
衝動が少し強くなった。
斬りたいって気持ちが少しずつ湧きあがってくる。
でも我慢出来ないほどじゃない。
これ……あの時と似てる。
衝動と会話できた、あの時と。
あの時よりまだ衝動が弱いような気もするけど……
それでも、話せるかもしれない!!
ねえ、聞こえる?
魔王様? 魔王様なの?
ねえ、返事してよ!
「おい、ウル。どうしたんだ?」
返事してほしいのは、モーティマじゃないんだよ!
ねえ、聞こえないのかな?
ダメ……なの?
「おい、本当にどうしたんだ? 大丈夫か?」
「うん……モーティマに持たれたら、衝動がちょっと強くなった気がして……
だから、もしかしたら話せるかなって思ったんだけど……ダメだった」
「なんだって!? 衝動が強くなった!? モーティマが持ったからかい? 人族の血と近ければ近いほど、衝動が強くなる……?
あー……ウルのことも気になるけど、今は先にマリーの方だね。
マリー、その子のこと話してくれるかい?」
「はい」
マリーが話しだす前に、モーティマが僕を鞘に収めてくれた。
グリュエールがこっちを見て、ソワソワしてるけど……
今はマリーの話、聞くんだよね?




