グリュエール先生
暗くなる前に野営の準備をする。
準備って言っても、僕は荷物を出した後は見てるだけなんだけどね。
「よし、ウル。また“ファイアーボール”を使ってほしいんだけど、いいかい?」
「えっ? “ファイアーボール”を? だって僕がやったら薪を全部燃やしちゃうよ?」
「うん、だから魔法の調節が出来ないかやってみたいんだよ。前はあまり余裕なかったけど、今ならアンカの町でもらった薪がいっぱいあるから失敗しても安心!」
魔法の調節が出来るようになれば、もっと皆の役に立てるかも!
「やる、やる! どうやればいいの!?」
「ウルは魔法を使う時、魔力の流れがわかるかい?」
「魔力の流れ? “ファイアーボール”を使った時なら、僕の剣先のほうに魔力が流れて行く感じがするよ」
「その流れる感覚がわかっているなら、流れる魔力の量を減らせば弱い魔法が使えるんじゃないかい?」
「そうなの!? やってみる! “ファイアーボール”!」
魔力の流れを意識してみる。
やっぱり剣先に向かって魔力が流れて行く。
この流れる魔力を少なく!
……って、どうやるんだろ。
いつも通りの“ファイアーボール”が完成しちゃった。
グリュエールが組み立ててた薪に向かっていって、薪をすべて燃やし尽くす。
「ねえ、グリュエール。どうやって流れる魔力を少なくするの?」
「ごめん、わからないんだ」
「えっ? やり方わからないの?」
「うん。わからない。ウルなら出来るかなって思ったんだけど、ダメだったね。
ウルは魔法ってどうやって覚えたんだい? 誰かに教わったわけじゃないんだろ?」
「目が覚めた時に、使えそうだなって思ったんだよ。それで使ってみたら出来たの」
「そうなのかい。あたし達は普通、誰かに師事して教えてもらうんだよ。こんな魔法があるよ、この魔法を使うとこんなことが起きるよってね。
教わったり見て覚えたりして、想像するんだ。想像して妄想して、そして魔法を唱える。成功すれば、体の中を巡っている魔力が引き出されて、魔法が完成するんだ」
「なんか大変そう……僕はそこまで考えてないよ?」
「覚えるのが大変なだけなんだよ。覚えるのは苦労するけど、一度覚えちゃえば忘れないからね。大変なのは最初だけさ。
後は自分の保持している魔力より必要量の多い魔法を使うと、下手したら死んじゃうから、その辺が要注意って感じだね」
「そうなんだ」
「あ、もしかして……」
「どうしたの?」
「今ウルと話していて思いついたんだ! ウルは“ウインド”って使える?」
「うん。使えるよ」
「ちょっと使ってみてくれるかい? あの木を狙って」
グリュエールは僕達の場所から少し離れた所に立っている木を指さす。
「うん、いいけど。“ウインド”!」
風の刃が木に向かって飛んで行った。
風の刃は木にぶつかると、木を真っ二つにしてそのまま真っ直ぐ飛んで行った。
「やっぱりウルの魔法の威力は凄いね。次はあたしのも見てて。“ウインド”!」
グリュエールの魔法は、僕が折った木の横に立っている木にぶつかった。
ぶつかった場所がちょっと削れただけで、木を折ることはなかった。
「どうだい?」
「どうって言われても……威力が全然違う?」
「そうだね。じゃあ、あたしが使った魔法をよーく思い出して」
「えっ? うん。わかった」
「どれくらいの大きさで、どれくらいの速さで、どれくらいの威力だったか」
僕の魔法より小さくて遅くて弱くて……
「はい! 今! “ウインド”を使って!」
「“ウインド”!」
グリュエールの魔法がぶつかった木を狙って風の刃を飛ばす。
木にぶつかった風の刃は、幹の半分くらいまでを斬り裂いて消えた。
さっきより魔法の威力が弱くなってる!
えっ!? どうして!?




