グリュエール先生②
「なんで!? なんで魔法が弱くなったの!?」
グリュエールが使った“ウインド”よりは強かったけど、それでもその前に僕が使った“ウインド”よりは弱かった!
「あたしの師匠が言ってたことをやっと理解したよ。魔法は想像して創造しろってね。思い描くことが大事だったんだ。どんな魔法を使いたいのか、どんな威力にしたいのかを。
あたしは師匠の魔法を見て、同じ魔法を使おうとしていた。だから、師匠と同じ様な魔法しか使えなかったんだ。“ウインド”なら、これが“ウインド”なんだって思い込んでた。
想像すれば良かったんだよ。あたしの作りだした風の刃は、あの木だって折ることができる威力なんだって。ま、そんな簡単にはいかないと思うけど」
想像……
僕の“ウインド”をもっと弱く……
小さい風の刃が飛んで行くだけ。
木にぶつかったら消えちゃうような、そんな風の刃……
「ちょっとやってみる。“ウインド”!」
小さい風の刃が出現して、木に向かって飛んでいく。
木にぶつかると、小さい傷を作るだけで風の刃は消えていった。
「出来た! 出来たよ!! 弱い魔法が使えた!!」
そっか……
僕の魔法は魔王様を基準にして使ってたんだ。だから魔王様と同じ様な威力の魔法を無意識に使ってたんだね!
「ウル、あんた凄すぎないかい? 話を聞いただけですぐ出来るなんて」
「そんなことないよ! 凄いのはグリュエールの方だよ!
あ、弱くすることが出来るってことは、逆に強くすることも出来るよね? グリュエールも強い魔法使えるんじゃない!?」
そうだよ! グリュエールだって、強い魔法を使いたいから調べるんだって言ってたもんね!
「うーん……時間をかけて想像を膨らましていけばもしかしたら出来るかもしれないけど……」
「けど?」
「ウルほどの魔法を使うには、たぶん魔力が足りないと思うんだよね。魔法の威力を弱めるなら出来るだろうけど、強くするのにはもっと魔力がないと、使った直後に倒れちゃうかもね」
そう言われると、魔法を弱めた時に使った魔力は少なかったような気がする。
威力に強弱をつける方法がわかっても魔力が足りないんじゃ意味ないのか……
「なあなあ、想像すれば俺にも魔法が使えるようになるのか?」
野営の準備が終わったのか、途中からモーティマとマリーも僕達の話を聞いていた。
モーティマの言葉を聞いて、マリーもうんうんと頷いている。
「どうだろ。出来るかもしれないけど、巨人族は体内に保有している魔力は少ないって聞くから、魔法を使った瞬間に倒れたり死んだりしちゃうかもしれないよ。後は適性もあるしね」
「適性ってなんだ?」
「簡単に言えば、その人がどんな魔法を使えるのかってことだよ。それを調べる為の魔道具があったりすんだ。あたしは風土魔法に適性があったけど、他の属性は無かった。だから風土魔法だけが使えるって感じかな」
「魔力が無けりゃダメだし、適性ってのもないとダメ……俺にはやっぱり使えないのか……」
「私も無理かな……」
「えっ? マリーは魔法を使っているようなものだろう?」
「え? 私が魔法を?」
「気付いてなかったのかい? マリーは馬車でも索敵しているときに魔力を耳や鼻に集めて強化させていただろう?」
「あれって魔法だったんですか!?」
「うーん……魔法と言えるかどうかはちょっと微妙なんだけど。ただ、魔力を使って何かしらの効果を発することを魔法とすることもあるし、マリーの使っているものも魔法のようなものなんじゃないかい?」
「そうだったんだ……お父さんに教えてもらった方法だったんですけど」
「獣人族は特殊な方法で体を強化させたりするって聞いていたからね。親から教わって伝わっているなら納得だよ」
マリーも魔法が使えてたんだね!
「俺だけ……無理なのか……」
あ、一人だけ魔法が使えないモーティマが落ち込んでる。
「魔法が使えないくらいで仲間はずれにしないから大丈夫だよ、モーティマ!」
「……ウル、おまえはいい奴だな!」
モーティマが少し元気を出してくれた。
魔力が少なくても使えるような魔法があればいいのにね。
「さて、ウル。あの薪に“ファイアーボール”で火をつけてもらってもいいかい?」
モーティマと話している間にグリュエールが薪を組んでくれた。
よし、やるぞー!
弱い炎。
小さい火の玉。
薪に燃え移るくらいの小さくて弱い炎……
「“ファイアーボール”!」
薪に向かった小さい火の玉が飛んでいく。
薪にぶつかると……
薪が燃え上がった。
数秒ですべての薪が燃え尽きちゃった。
「まだ強いね。火の玉は小さくなったけど、もっと威力を弱くできるかい?」
「うん! やってみる!」
もっと弱く。
威力を弱めて……
僕が想像している間に、グリュエールが薪を組み上げる。
準備が出来てグリュエールが離れた。
よし、今度こそ!
「“ファイアーボール”!」
薪に当たると……
また薪は燃え尽きちゃった。
「いいよ、更に弱くなってた! どんどん行くよ!」
よーし、絶対に成功させるんだ!




