オークの影響
グリュエールの魔法を見た後、僕達は馬車に乗り込んで再びテッド村を目指していた。
「この辺りからはモンスターも襲ってくるだろうから、皆気を付けるんだよ。オークの残党もいるかもしれないしね」
「わかりました」
「……気を付けるってどうすりゃいいんだ? 馬車の中にいて出来ることってあるのか?」
モーティマは他の人と旅に出るのも初めてだって言ってたから、馬車での移動もあまり経験ないのかな?
馬車の中でどうすればいいのかわからないみたい。
「そうだね、モーティマはモンスターが襲ってきたときにすぐ戦えるよう、心構えだけしておいてくれるかい?」
「ああ、そんなもんでいいのか。わかった」
馬車の中からじゃ周りを見れないし、ずっと警戒してて緊張してたら疲れちゃうもんね。
マリーは耳を澄ましてるから、変な音が聞こえてこないか注意しているみたいだけど。
「あ、それと遭遇したモンスター次第だけど、ウルの実験もするからね」
「えっ?」
「ほら、モンスターがいる時にウルを抜いたらどうなるかって言ってたでしょ? やれそうならやるよ、実験!」
実験!
これがうまくいけば、また話せるかもしれないんだ。
魔王様かもしれない、あの衝動と。
「アンカの町ではウルを抜かなかったじゃねえか」
「あれはウルの魔法で全部片付いたじゃないか。代わりにウルの魔法を見れたからあたしとしては満足だったけどね」
アンカの町では、僕が魔法を使ったらオークはいなくなっちゃったし、抜くタイミングも無かったしね。
「それにしても、ウルの魔法は凄かったね。あれ以上の威力がある魔法も使えるんだろう?」
「うん。まだ僕も使えるけど使った事ない魔法がいっぱいあるから、いろいろ使ってみたいんだ」
「そうなのかい。じゃあオーク討伐の時に使うつもりだった”メテオストリーム”、使ってみてもらってもいいかい?」
「えっ? どこで使えばいいの?」
「ここで」
「ちょっ! ちょっと待て!! ここでそんな魔法使ったら、通りかかっただけの人が巻き込まれるかもしれねえだろ!」
「わかったよ。ちゃんと人がいないか確認してからにするから」
「それでもダメですよ! 森とか自然が壊れちゃいますよ!?」
「えー……じゃあどこで使えばいいんだい?」
「わざわざ使わなくてもいいだろ!」
「そうですよ。もし必要になったときに使えばいいじゃないですか」
「威力もわからないのに、いつ必要になるのかわかるのかい?」
「それは……じゃあ、周りに迷惑がかからない場所があればそこで……」
「まったく、二人ともイリーシスみたいなこと言うね。ウルだってたまにはパーっと魔法使いたいだろう?」
「うーん……使ってみたいけど、迷惑がかからない所でなら!」
僕がそう言うと、グリュエールは不満そうにしながらも納得したみたい。
僕だって試してみたいよ。でもマリーやモーティマが困ってたし、焦っちゃダメなんだって思った!
いつかきっと使うタイミングがあるよね。
それから数時間、馬車での移動が続いた。
モンスターに襲われることなく順調な旅路。
「ねえ、グリュエール。モンスターまったく出ないね」
「そうだね。もしかしたら……」
「もしかしたら?」
「オークの大群が原因かもね」
「オークがどうしたの?」
「オークは雑食だから、なんでも食べちゃうんだよ。それがあれだけの大群だったから、弱いモンスターはオークの餌になっちゃったのかもね」
「弱いモンスターだけなら、強いモンスターはどうなの?」
「強いモンスターはそんなにいないし……いたとしても、強いモンスターはあまり群れないから、オークの大群に数で押しつぶされた可能性もある。全部予想だけどね」
「そっか……それでこの辺にモンスターがいなくなっちゃったんだね」
「せっかくウルの実験をしようと思ってたのにね」
「でもまだチャンスはあるもんね! 焦っちゃダメなんだよ?」
「おっ! ウルも言うね。そうだね、慌てずにチャンスを待とうか」
もう陽も暮れちゃうから、今日の旅はここまでだね。
明日はモンスターが出てきたらいいな。




