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元魔王の剣  作者: 鵙来 蜜柑
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防壁完成?

「おい、ヒュードルって奴がこっちに来るけど、どうすりゃいいんだ?」


「どうすればいいかなんてわからないよ! でも、もうやっちゃったことだし……堂々としてればいいんじゃない?」


「堂々と……か。他に思いつかねえし、それしかねえか」


 モーティマと作戦を決めて、ヒュードルと対峙する!


「お……おい、あんた。これは……」


「おう、堀ってこんなもんでいいのか?」


「えっ……あ……もうちょっと広いほうが……」


「そうか。じゃあここからは手作業だな!」


 モーティマが逃げるようにシャベルを持って、“アクアジェット”で開いた穴に入って行こうとするけど……


「ちょっと待ってくれ! これはなんだ?」


「あ? これって……堀だろ?」


「そうじゃねえよ! なんでこんな短時間でこんなに出来るんだよ!」


「ゆっくりやったほうが良かったのか?」


「ちげえ! 間に合わないかもしれないから早いほうがありがてえよ!」


「……ならいいじゃねえか。なにか問題でもあるのか?」


「問題は……ないな」


「じゃあ続きやるぞ」


 モーティマ凄い!

 ヒュードルを言い負かした!

 どうなるかと思ったけど、ごまかせて良かったよ。


「ちょ……ちょっと待ってくれ。これと同じこと、まだ出来るか?」


 ヒュードルが“アクアジェット”で出来た堀を指さしながら聞いてくる。


「……おい、どうなんだ?」


「あれくらいなら何回でも大丈夫だよ」


 モーティマが僕に小声で聞いてくる。

 “アクアジェット”使うくらいなら、何回だって問題ないのに。


「これくらいなら何回でも問題ないみたいだぞ」


「みたい?」


「あ! いや……問題ないぞ」


「……そうか。ならそれをやってもらってもいいか? あっちの方なんだが」


「わかった。行くぞ」


 その後は、ヒュードルに指示された場所に“アクアジェット”を使って回った。

 モーティマの掛け声に合わせて魔法を使うだけだから別に大変なこともなかったし、皆の役に立ててる感じがして楽しかった!

 でも見た感じもう終わりかな?


「今更なんだが……あんたの名前を聞いてもいいか?」


「おう、俺はモーティマだ」


「モーティマ。あんたのおかげで助かった。オークが来るまでに防壁が出来るかどうか微妙だったんだが、これなら確実に間に合う!」


「そうか……」


「……他にも魔法が使えるのか? もし使えるなら……」


「いや、俺はこれだけだ! 他には何も使えねえ!」


「そっ……そうか……まあこれだけ魔法を使えば疲れただろ? もう戻ってもらっても大丈夫だ」


「そうか? じゃあ帰らせてもらうぞ」


「ああ、本当に助かった。ありがとう、モーティマ」


「お……おう」


 気まずそうに、早足でモーティマは町へ戻っていく。


「なあ、これで良かったのか?」


「えっ? 皆の役に立てたんだから、良かったでしょ?」


「でも俺は何もしてないぞ。まったく疲れてないしな」


「確かに、力仕事が得意って言ってたのに、力仕事なんてしてないもんね」


「そうなんだよ。それにこれはおまえの力だろ? 俺がやったみたいになってるのがな」


「でもモーティマがここに来なければ、防壁は完成しなかったかもしれないんでしょ?」


「そうみたいだな……」


「なら、モーティマのおかげでこの町が救われるかもしれないよ!」


「俺のおかげ……?」


「そうだよ! モーティマが今日、ここに来たおかげ!」


「でもおまえが魔法使っただけだろ?」


「僕だけじゃここに来れないから……だからモーティマのおかげ!」


「おまえ……いや、わかった。俺とおまえのおかげだな!」


「えっ!?」


「俺とおまえでこの町を救うんだ! オークの大群。やるぞ」


「うん! 頑張ろう!!」


 この町を救うんだ!

 モーティマとマリー、グリュエールと一緒に!

 よーし、頑張るぞー!


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