モーティマとアンカの町を行く
モーティマと一緒に冒険者ギルドへ戻ってきたけど、グリュエール達はまだ会議をしているらしい。
途中から会議に参加しても話がわからないし、そもそもモーティマが話を理解できないかもしれないってことで、今日はもう帰ることになった。
「せっかくだし店でも見てまわるか」
「え? お店とかやってないんだよね?」
「あ、そうか。そうだったな……じゃあしょうがねえ。その辺を歩くだけにしておくか」
モーティマと一緒にアンカの町を歩き回った。
でも道行く人は皆忙しそう。
冒険者だけじゃなくて、町に住んでる人達も防壁作りに参加してたり、物資の搬送とか仕事はいっぱいあるみたい。
「なんか気まじいな……」
「暇そうなのはモーティマだけだもんね」
「おまっ! そんな言い方するなよ。もう休んでいいって言われちまったんだからよ」
そんなことをモーティマと話しながら町を歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「あ! あなたは! さっき防壁作りに参加していた方ですよね!?」
「そうだが……あんたは?」
「ああ、すみません。私は普段そこの店で料理を作ってるドーダといいます。私も防壁作りに参加してたんですよ。あなたが来られた後、すぐに交代になりましたが」
「そうなのか。それで、なにか用か?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……あなたの魔法を見させてもらいました! 凄いですね、一瞬で堀が出来ていくの見てて感動しましたよ!」
「そっ……そうか」
「魔法なんて初めて見ましたけど、あんなことまで出来ちゃうんですね! 魔法が使えるなら、きっと有名な方なんですよね? すみません、冒険者の事情に詳しくないもので……」
「いや、有名なわけじゃ……」
「お名前を伺ってもよろしいですか?」
「あっ……ああ、モーティマって名前だ」
「モーティマさんですね! あっ! そうだ、ちょっと待っててください!」
そういうと、ドーダと名乗った人は自分の店だって言った建物に駆け込んで行った。
「おい……どうすりゃいいんだ?」
「僕に聞かれても……」
モーティマが困って頭を抱えていると、すぐにドーダが戻ってきた。
「これ! これ持って行ってください! 今はこんな物しかないですけど、ウチの名物なんですよ」
「なんだ、これ?」
「クッキーという焼き菓子です。いやあ、ほとんどの材料は冒険者ギルドに物資という形で買い上げられちゃったんですけど、調理済みのものは扱いに困るってことでクッキーは残ってたんです。よかったら食べてください! 日持ちもしますが、なるべく早目のほうがおいしいですよ」
「お……おう。ありがたく貰っておくぜ」
「もし機会があれば、お店が開いているときに来てください! 私の腕を全力で振るわさせてもらいます!」
「わかった。ありがとな」
「いえ、こちらこそ。この町の住人として、あなたには感謝してますので」
恥ずかしそうにしながら、モーティマは足早にその場から離れる。
「なあ、ウル……」
「なに?」
「俺はなにもやってねえのに、こんな感謝されたりしていいのか?」
「防壁作りを手伝ったのは本当だし、いいんじゃないのかな」
「そうか……もうこんな感謝のされ方は嫌だ! 宿に戻るぞ」
モーティマは逃げるように宿へ向かう。
宿に着くと、ちょうどグリュエールとマリーも戻ってきたところだった。
「おや、モーティマ。おかえり」
「ああ……」
「どうしたんだい? 今日は大活躍だったんだろ?」
グリュエールがニヤニヤしながら言ってくる。
あ、グリュエールたちも聞いたんだ。防壁作りのこと。
「勘弁してくれ……全部ウルがやったんだよ」
「そりゃわかってるよ。でも防壁作りに参加してたメンバーはモーティマを絶賛してたしね」
「マジか……どうすりゃいいんだ……」
「それで? 本当はなにがあったんだい?」
「それが……」
モーティマが二人に説明をする。
ただ、地面を濡らそうとしただけ。その方が掘りやすいと思ったから。
そしたら“アクアジェット”で掘れちゃった。
あとは言われた場所で僕が魔法を使っただけ。
「なるほどね。まあいいんじゃないかい? 騒ぎになってる訳でもないし」
「だけどよ……町を歩いてただけで、こんな物まで貰っちまったし」
モーティマはそう言いながら、さっき貰ったクッキーを取り出してグリューエルに渡した。
「おや、これはクッキーかい?」
「知ってるのか?」
「うん。甘い焼き菓子だよ。皆で食べていいのかい?」
「ああ、俺一人で食うのはな……申し訳なくて」
「そうかい。じゃあマリーも一緒に食べよう! これはおいしいよ」
「はい!」
皆で談笑しながらクッキーを食べてる。
今日はちょっとやりすぎちゃったのかな? モーティマを困らせちゃった。
でもこの町の為になったからいいよね。
クッキーを食べ終わったら、それぞれの部屋に戻って休むみたい。
明日は何するんだろう。
僕に出来ることがあればいいな。




