マリーとギルド長②
キョロキョロと周りを見渡していたギルド長だったけど、マリーの視線が僕にいってることに気付いたのか、ギルド長も僕をじっと見てる。
もう……バレちゃってるよね。
「えっと……はじめまして?」
「!! その剣……ですか?」
「うん、そうだよ。ごめんね、マリー。声出しちゃった」
「ううん、私もどうしていいかわからなかったから、ウルが話してくれるなら助かるよ」
「まさか……知識あるアイテム!?」
「あ、うん。『鑑定』ってスキル? それでわかってなかったの?」
「『鑑定』は、物の名前や大体の価値がわかる程度なのです。高レベルの『鑑定』ならもっと色々わかるかもしれませんが……」
「えっ? じゃあ僕のことも……」
「そうですね。ほとんど名前くらいしかわかっていませんでした」
なんだ。それならしゃべらなければバレなかったんだ……
でもマリーも困ってたし、マリーを助けられるんだったらいいのかな。
「マリーさんは、その……ウルさん?」
「うん! ウルだよ」
「そうですか……そのウルさんが話せることはご存じだったのですか?」
「はい、知ってました」
「あ……! まさか、魔法を使っていたのは……」
「うん、僕だよ」
「……そうですか、なるほど。つまり、今回の昇格試験はほとんどウルさんの力に頼った結果ということですか」
「えっ!? 確かにそうですが……失格ですか?」
え!?
僕のせいでマリーが失格になっちゃうの!?
「いえ、そんなことはありません。冒険者の装備の善し悪しで合否が決まることはありませんから。それにマリーさんは筆記試験の成績も良かったですからね。
……筆記試験にウルさんは関与されておりましたか?」
「筆記試験はなにもしてないよ」
「そうですか。それなら問題ありません。マリーさんは昇格試験、合格です」
「えっ!? 合格!? 合格発表は明日じゃ!?」
「本来はそうですが、マリーさんは筆記試験が満点でした。実技試験で一の鐘が鳴り終わった後にダンジョンから出てくれば、それだけで合格ラインを越えてましたよ」
「やったね、マリー! 合格だって! おめでとう!」
「うん……うん! ありがとう、ウル!」
やった! マリーが銀ランクに上がれた!!
でも……あれ?
それなら、実技試験であんなに頑張らなくても良かったってこと?
うーん……でも合格したんだからいっか!
「申し訳ございませんが、昇格試験の話はここまでにさせて頂いてよろしいですか?
お二人……? マリーさんとウルさんの話を聞かせて頂きたいのですが」
「あ、はい! いいですよ」
「うん、僕も!」
「ありがとうございます。では、マリーさんとウルさんはどこで出会ったのですか?」
「僕は最初、盗賊に拾われたの。で、その盗賊がマリー達に襲いかかったんだけど、マリー達が撃退して、盗賊の武器だった僕は回収されて」
「……もう少し詳しくお願いしてもよろしいですか?」
「じゃあ私から……」
僕の代わりにマリーが説明をしてくれた。
護衛依頼中に盗賊に襲われたけど、いきなり水の壁が現れたて助けてくれた。
そのおかげで、盗賊を撃退できた。
その時に回収した盗賊の武器の中に僕も混じってた。
そこから王都までの間に、マリーの剣が壊れちゃったから、僕を貰った。
「護衛依頼で王都にというと、先日の?」
「そうです。二日前だったかな? ねえ、ウル」
「うん、そうだよ!」
「まだ出会って間も無いわけですか……それなのに、そんな信頼関係を?」
「うーん……私は何度もウルに助けてもらったので、ウルのことは信頼しています」
「僕はマリーの為なら頑張るよ!」
「なるほど。ウルさんはなんでマリーさんの為に頑張るのですか?」
「なんで? なんでって……」
なんで? なんでマリーの為に?
だって、マリーはいい子だもん。優しい子だもん。
そんな人の為なら頑張ってあげたいって思うよね?
「マリーがいい子だから! だって、マリーが王都に来たのだって、自分の村を助ける為なんだよ!?」
「ウル……」
「自分の村? マリーさんの出身は……」
「私はテッド村から来ました」
「テッド村……テッド村ですか! ああ、だから村を助ける為に」
「そうです……村の復興資金を稼ぐ為です」
テッド村? マリーのいた場所は王都からかなり遠いって聞いてたのに、ギルド長は知ってるんだ。有名な村なのかな。
「わかりました。それで、一つ確認なのですが。ウルさんの刀身は漆黒だと監視員から聞いたのですが、それは事実ですか?」
「そうだよ、ね? マリー」
「はい。漆黒の刀身なんて初めてみたので、本当に切れるのか不安なくらいでした」
「見せて頂くことは出来ますか?」
「いいよね、ウル」
「うん」
マリーが僕をギルド長へ渡そうとしたけど……
「あ、いえ。マリーさんが抜いて頂いてもよろしいですか?」
「え? はい。いいですけど……」
マリーが僕を鞘から抜くと……




