マリーとギルド長③
マリーが僕を鞘から抜くと、あの感情が溢れだしてきた……!
斬りたい。切りたい。斬らせろ。
違うよ。待って……ダメだよ……
「ウルさん?」
「ウル!」
さっきは話してくれたじゃん……! 聞いてよ!
ああ、でも斬りたい……
なんだ、あいつ。変な目でこっちを見やがって。
斬っちまうか?
……違う! 斬っちゃダメだんだって!
___カチンッ___
なんで……なんでちゃんと話してくれないの!?
ねえ、さっきは会話したじゃん!
「ウル? 大丈夫?」
「……大丈夫。またあの感情が湧きあがってきただけだから。……耐えられたよ?」
「うん……」
「ウルさん……ウルさんのことを詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか」
「いいよ。何が聞きたいの?」
「ウルさんがどうやって知識あるアイテムになったのかを」
「僕はね……」
マリーにも話したことと同じ話をギルド長にもしてあげた。
魔族領で僕が作られてから、魔王様が死んじゃって……それから何百年もたってから意識が芽生えたこと。
「魔族領……魔王討伐は文献で読みましたが、確か四百年以上昔の話ですね」
「そうなんだ……」
魔族の寿命は大体二百歳。四百年も前だったなら、僕の知ってる人はもう皆いなくなっちゃってるね……
「それにしても、魔王がそんな方だったとは……」
「え? 魔王様ってどんな人だと思ってたの?」
「悪逆非道で人族の天敵。人間を見つければ考えうる苦痛を与えてから殺し、死した後もゾンビやスケルトンとして使役する……」
「……誰の話?」
「私が読んだ文献には魔王についてそう載っていました。でもウルさんの話を聞くと別人ですね」
「うん、そんなことする人、魔族の中にはいないよ!」
なにその文献! ウソばっかじゃん!
「わかりました。ウルさん、もう一つお尋ねしてよろしいですか?」
「うん、なに?」
「先程、あの感情と言っておられましたが、どのような感情なのですか?」
「えっとね、たまになんだけど、鞘から抜かれた瞬間に斬りたいって衝動が湧きあがってくるの」
「たまに……ですか?」
「うん。さっきみたいに激流の様に一気にくるのは三回目だったかな?」
「その三回はどんな状況でした?」
「最初は、僕を拾った盗賊の人が抜いたとき。次がマリーがダンジョンに入って、途中でイゾウと会ったとき。で、最後が今さっき」
「なるほど。その盗賊というのはどんな方でした?」
「ボサボサ髪のクルトっていう人間だったよ」
「そうですか。マリーさんがダンジョンでモンスターと戦ってる時にはその感情に襲われなかったのですか?」
「うん。無かったよ。あ、でもモーティマと一緒だった時には、なんかモヤモヤする感じはした!」
「ふーむ……なるほど。
ウルさんとマリーさんは呪われた魔剣というのはご存じですか?」
「え? なにそれ」
「えっと……聞いたことありません」
「世の中には、呪われた魔剣と呼ばれる剣が存在します。それらの刀身はすべて漆黒になっているという話です」
「「えっ!?」」
マリーが僕を見つめる。
僕って呪われてるの? 呪いって……もしかしてあの声が……?
「ただ、今のウルさんは呪われていないと思います」
「え……なんだ、ビックリさせないでよ」
漆黒の剣が全部呪われてるわけじゃないんだね。ビックリしちゃったよ。
「呪われた魔剣ですが、ここ王都にも一本存在しているんです。私は依頼でそれを『鑑定』したことがあります。その時の鑑定結果で名称が、呪われし魔剣と出ていたのです」
「あ、じゃあ僕は……」
「ウルさんは魔剣:ウルと出ているので、おそらく呪われていないのでしょう」
「良かった……それなら」
「ですが、先程マリーさんがウルさんを鞘から抜いた時も『鑑定』を使っておりましたが、鞘から抜かれている間だけ、文字がおかしくなり読めなかったのです」
「えっ!? それって……どういうこと?」
「私にもわかりません。こんなことは初めてだったので……」
結局……僕は呪われているの?
でも呪いなんてかけられた覚え、ないよ。
しかも鞘から抜かれてる時だけ……?




