マリーと実技試験 ~四階層~③
「マリー! 今、壁から顔を出してるキラーアントを倒したら後ろへ向かって走って!」
「でも後ろにもキラーアントが……」
「大丈夫。今度こそやれるから、信じて!」
「……わかった。何もしなかったら死んじゃうだけだし。行くよ、ウル」
マリーは土の壁から這い出てこようとしているキラーアントの頭を斬り落とす。
斬った直後には後ろを振り向き、一気に走り出した。
よし、ここからは僕の出番だ!
「“ファイアーボール”!」
炎の玉が一直線に飛んでいく。
さっき使った“ファイアーウォール”でキラーアント達は燃え尽きていた。
炎系の魔法なら絶対に倒せるはずなんだ!
“ファイアーボール”の進路上にいたキラーアントはしっかりと燃え尽きてくれた。
それでも通路を埋め尽くすように向かってくるキラーアントの数が減ったように見えない!
“ファイアーボール”じゃダメだ!
もっと……通路全部を炎で満たすくらいの魔法じゃないと……
それなら……これだ!
「“フレイムウェーブ”!」
僕から炎の波が噴き出す。
僕から離れれば離れる程、炎は上下左右に広がり攻撃範囲が拡大していく。
距離が遠くなると威力は下がるはずだけど、キラーアント達は燃え尽きてくれた。
「マリー、今だよ! 走って!」
「うん!」
まだ熱気が残る通路をマリーは必死に走る。
僕の仕事はまだまだ!
「走ったままでいいから、僕を後ろの方に向けて!」
マリーは僕の剣先が後ろへ行くように、逆手に持ち直してくれた。
よし、これで……
「“ストーンウォール”!」
もう一回!
「“ストーンウォール”!」
後ろに土の壁を作って、時間稼ぎ!
これで逃げる時間があれば大丈夫!
マリーは走る。走り続ける。
とにかくさっきの場所から少しでも遠くへ。
もうこれだけ遠くへ来れば大丈夫だと思うんだけど……
それでもマリーは止まらない。別れ道があっても右へ左へと一心不乱に逃げ続ける。
限界が来たのか、かなり走った後に息を切らして立ち止まるマリー。
「もう……ダメかと思った。キラーアントに殺されちゃうって」
「すごい数だったよね! 僕もビックリした」
「ウル……ありがと。ウルがいなかったら、たぶんあそこで死んでたと思う」
マリーはかなり疲れた表情をしている。
危ない状況から抜け出してきたばっかだし、精神的にも体力的にもボロボロなんじゃないかな。
「マリー、少し休もうか?」
「……ううん、大丈夫だよ! 今は試験中だし、これが終わったらゆっくり休むから」
「なら……いいのかな? 無理しないでね?」
「うん、わかってる」
乱れていた息を整えただけで、マリーは出発しようとする。
こんなに頑張ってるんだから、マリーには絶対に合格してもらいたい!
「あのね、ウル」
「何?」
「すぐに出発しようと思ったんだけど……」
「うん?」
「道がわからない……」
キラーアントから逃げることだけを考えて走ったせいで、道を覚えている余裕がなかったみたい。
しょうがないから適当に歩いて行くことにした。
上でも下へでもいいから、とにかく階段を見つけよう!
時間はまだあるから大丈夫!
「あ! ねえ、ウル。あれ……」
「えっ? あれって?」
「ほら、あそこ。あれ血だよね?」
「あ、ホントだ」
ダンジョンの床に血が点々と落ちている。
そこそこの量だから、もしかしたらこのケガした人はもう……
「これ辿ってみてもいいかな」
「えっ? なんで?」
「ケガしてるのにそのまま歩いてるってことは、回復薬とか持ってないってことでしょ?」
「うん。たぶん」
「それならダンジョンの出口へ向かうと思わない?」
「あっ、確かに!」
「ねっ? 違う所へ行っちゃうかもしれないけど、階段まで行けたら運が良かったってことで!」
「どうだね、そうしよう!」
マリーは血を辿っていく。
血の落ちている感覚が短くなってきた。
ケガした人の歩く速さが落ちてる証拠だ。
これは階段までは行けないかもしれない……
そんな不安が過った時、階段を見つけた!
でも、予想と違って下へ向かう階段だ。
しかも……あれは……




