マリーと実技試験 ~フードの人間~
血の後を辿って、見つけた階段。
その階段のすぐ手前には倒れてる人がいた。
「ねえ、ウル。あそこで倒れているのって……」
「うん。さっきの人だね」
フードを被ったまま倒れている人。
さっき僕達にキラーアントの頭を投げつけてきた人だ。
「マリー、どうする?」
「うーん……とりあえず生きてるか確認しようか」
マリーは警戒しながらフードの人に近付く。
「あのー……」
声をかけてみたけど、反応しない。
手首に触れてみるとまだ脈はあるし、呼吸もしてるみたい。
「生きてはいるみたいだけど、気絶してるね」
マリーはそう言うと、徐にフードへと手を伸ばす。
「これ被ったままじゃ呼吸も大変だろうし……」
倒れている人間のフードを外し、ケガの確認をしようとしたけど……
「あ!」
「えっ!? この人……」
「なんでこの人間がここに? マリー、わかる?」
「昇格試験に関係ない人もダンジョンにはいるって言ってたから、いてもおかしくないけど……」
フードを被ってた人間は、僕もマリーも会ったことのある人。リンだった。
今回の昇格試験に遅刻して失格になった後、マリーに薬をくれた人間。
なんでダンジョンに?
なんでキラーアントを押しつけてきたの?
「……ウル。回復薬を使ってあげてもいいかな?」
「マリーがそうしたいならいいんじゃないかな。この先もマリーにケガさせないように僕も頑張るし」
マリーの持っている回復薬の数は僅かしかない。
そこまで高価な物ってわけじゃないみたいだけど、昇格試験が終わるまでは買い足すことも出来ない。
マリーがリンに回復薬を使ってあげると、リンの呼吸が落ち着いてきた。
少しだけ様子を見ようとそのまま待っていると、すぐに目を覚ました。
「ん……うーん……」
「大丈夫? ……確か、リンだったよね? キラーアントにやられたの?」
「えっ……? あっ!?」
「意識は戻ったみたいだけど、立てる?」
「あんたっ……!!」
「回復薬使ったから、ケガは治ってると思うけど……」
「なんで!? なんであんたがここにいるのさ!?」
「なんでって言われても……?」
「なんで生きてるのさっ!!」
いきなりなんてことを言うんだ、この人間!?
かなり失礼だよね。
「……あ、ほら。キラーアントに噛まれちゃったんだよね? さっき追われてたし。これ返すよ」
「うっ……あ……」
マリーはリンから貰った、キラーアントの毒に効く薬を返してあげた。
マリーは噛まれてないから必要ないしね。
でも薬を受け取ったリンは飲もうとしない。
「どうしたの? キラーアントに噛まれたわけじゃなかった?」
「あんた……わかってやってるの?」
「え? なにを?」
マリーはキョトンとした顔でリンを見つめる。
わかってるってなんのことだろ?
「何も気付いてないの!? ……もうっ!」
リンが勝手に怒りながら、マリーの返した薬を投げ捨てた。
かなりの勢いで壁にぶつけられた薬は、容器が割れて中身がそこら中にぶちまけられた。
「あ……あーーー! どうするの!? 薬なげちゃって!」
「まだ気付いてないの!? あれは薬なんかじゃない! 毒薬だよ!」
「え? 毒?」
「そうだよ! あんたがキラーアントに噛まれて、更に毒を飲めば死ぬと思ったのに! それなのに……くそっ! なんであんだけのキラーアントがいたのに無傷なのよ!」
「え……えっと……」
「あの量のキラーアント集めるのにどれだけ苦労したと思ってんの!」
「はぁ……」
なんかメチャクチャ言ってる。
なんだろこの人間。
「ちょっとでも噛まれてあの毒を飲んでれば……なんで噛まれてないのよ! なんでボクばっか!」
「えっと……私なにか恨まれるようなことした?」
「したよ! ボクが受けられなくなった昇格試験を受けてるじゃん!」
「それはリンが遅刻してきたから、受けられなくなったんだよね?」
「遅刻だってちょっとだけじゃん! それにおかしいよ。こんな大事な日に寝坊するなんて! あんただろ! あんたがボクになにかしたんだ!」
「私はリンのこと知らなかったよ。昨日王都に来たばかりだし」
「王都に来たばっかのやつが昇格試験を受けられるわけないだろ! やっぱ嘘ついてる!」
「はぁ……」
もう何を言ってもダメみたい。
マリーも諦めていいと思うよ。




