ピーちゃんの頭脳
「なんでピーちゃんに噛まれたなんて言う人がいるんだろ」
学長室を出て周りに誰もいないことを確認したフィールンが、僕に話しかけてきた。
「うーん……わからないよ。でもピエールが研究室から出てないのは確かだよ。僕がずっと一緒にいたから」
「ピギャ!」
そうだ、そうだと言わんばかりに、ピエールは頷きながら鳴き声を上げた。
「……聞きに行こう」
「聞きに行くって? 誰に?」
「噛まれたって言ってる子」
「誰かわかるの?」
「わかんないよ! だから探しに行くの!」
「学長に聞きに行ってみる?」
「えー? 学長先生はなんか……教えてくれなそうじゃなかった? でも……一応、聞きに戻ってみようか」
フィールンはそう言うと、来た道を戻って学長室へ向かった。
まだ部屋にいた学長に聞いてみたけど、「まずはこちらで対応致します」と言われて、フィールンの予想通り誰なのか教えてくれなかった。
「やっぱり自力で探すしかないね!」
「でもヒントもなにもないよ?」
「そうなんだよね……どこから探せばいいのかな……」
フィールンは腕を組みながら考えているけど、いい考えは浮かんでこないみたい。
うーん……
魔竜に噛まれたって言ってるんだから、ケガをしているはずだよね。
ケガをしている人を探して、片っ端から声を掛けてみればいいのかな?
あ、でもどこを噛まれたのかわからないや。服の下にケガがあってもわからないし……
僕とフィールンが悩んでいると、ピエールが翼を広げて鳴き声を上げた。
「ピギャ! ピギャ!」
「ピーちゃん、どうしたの?」
「ピギャ!」
「なに? あっちの方へ行けって言ってるの?」
「ピギャ!」
ピエールは頷く。
翼で方向を指してたみたい。
フィールンはピエールが指し示すほうへ向かった。
「ピギャ!」
ここだよと言うように鳴いたピエール。
ここは……保健室?
あ、そっか!
ケガしたのなら、ここで治療したりするよね!
ピエール賢い!
「ここ……? あ、そっか!」
フィールンも気付いたみたい。
さっそく中へ入っていく。
保健室の中はカーテンで仕切られて、幾つかのベッドが置いてあった。
壁際には棚が並んでいて、中には色々な薬品が並んでいる。
「すみませーん!」
フィールンが声を掛けると、カーテンの向こう側から扉が開くような音が聞こえた。
そこから一人の男が部屋へ入ってくる。
「おう、どうした」
フィールンより頭三つくらい大きな、スキンヘッドの男が顔を出した!
保健室にいるってことは……治療が得意なのかな?
治すより壊すほうが得意そうに見えるけど……
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……?」
フィールンは出てきた男の厳つい顔に動じる事も無く質問をする。
男はピエールの方を見てから返事をした。
「なんだ? なにを聞きたいんだ?」
「魔竜に噛まれたって言ってる子、ここに治療にきた?」
「ああ、来たぞ。それがどうした?」
「その子に会いたいんだけど、誰なのか教えてくれないかな?」
「……会ってなにをするつもりだ」
「なにって……話しを聞くだけだよ。
ピーちゃんソックリな魔竜に噛まれたって言ってるみたいだけど、ピーちゃんは昨日の夜には部屋を出てないんだよ。だからピーちゃんじゃないんだってことを伝えたくて」
「そうか。だが、教えるわけにはいかん」
「なんで!? 教えてよ!」
「病人やケガ人のことを勝手に話すのはマナー違反だ。俺はここを預かっている以上、軽々と患者のことを話したりしない」
「でもそのせいでピーちゃんが疑われたんだよ!?」
「それでもだ」
「うー……ケチ!」
「ケチでもなんでもいい。ダメなものはダメだ。ほら、用がないならもう帰ってくれ」
邪魔だと言わんばかりに手を振ってフィールンを部屋から追い出そうとする男。
「うー……」
フィールンは唸りながらも、教えてくれないんじゃどうしようもないと諦めて保健室から出ていく。
「教えてもらえなかった……どうしよっかな」
フィールンが保健室の前で悩んでいると、中から扉が開けられて誰かが出てきた。
フィールンがこんな所で悩んでいるから、さっきの男が苦情でも言いに出てきたのかな?




