魔竜に襲われ……?
フィールンが研究室を貰ってから、もう何日も経った。
その間に、学長室へ行ってはピエールの話をしながらも周りの魔道具を観察したり、イェレッタやセルジオ達の研究を手伝ったりもしてた。
学長室の魔道具には剣……というか、刃物は置いてないみたいだった。
前に魔道具説明会で見せてもらった短剣は置いてあったけど、あれには刃がないからね。
刃の付いている魔道具は持っていないのか、それとも違う場所に隠してあるだけなのか……
フィールンは今後も探りを入れていくつもりだって言ってた。
イェレッタの研究はあれからほとんど進んでない。
イェレッタ自身がまだ魔力を放出することが出来てないから。
魔力の放出を練習しながら、レポートを書いてるみたいだから全く進んでないわけじゃないみたいだけどね。
セルジオ達の研究は少しだけ進んでる。
ヴェルトに続いて、セルジオも魔法の威力を弱くすることが出来たんだ。
だから、まだ調整が出来ないディズ達はそのままだけど、セルジオとヴェルトは威力を強くする練習に移ってる。
でも威力を強くする練習は想像以上に危険みたいで……
ヴェルトは何度も気絶した。
セルジオが呆れるほどに。
自分の限界以上の魔法を使おうとしたからみたいだけど……
何度も保健室へ連れていかれるヴェルトは、学院内でも噂になってるらしい。
変な渾名をつけられたって怒ってたけど……自分のせいだよね?
そんな中、大問題が一つ。
予想通りではあったんだけど、フィールンが朝起きられない!
毎日ギリギリの時間に研究室へ来ては、僕とピエールを連れてから特別クラスへ向かってる。
今のところ、遅刻はしていないけど……いつかするだろうなって思う。
今日もいつも通りギリギリになってから、僕達を迎えにきたフィールン。
フィールンが僕を掴めば、ピエールはすぐに飛んできて柄頭に掴まる。
そのまま大急ぎで特別クラスへ向かった。
朝礼は何事もなく終わったけど……
学長がフィールンに近付いてくる。
なにかあったのかな?
「フィールン、この後ワタクシの部屋まで来てもらってもいいかしら?」
「うん、いいけど。どうしたの?」
「少し問題が起こりました。詳しい話は部屋へ着いてから致します」
「わかった!」
フィールンは学長と一緒に学長室へ。
部屋に着いて椅子に座ると、学長は真剣な顔をして話し出した。
「慌てないで聞いてください。
昨日の夜、魔竜に襲われたという子が現れました」
「魔竜に襲われた? ピーちゃん以外にも魔竜がいたの?」
「襲われた子が言うには、魔竜が飛んできて腕に噛みついてから去って行ったと。
その子の話す特徴がピエールそっくりなのですわ」
「ピーちゃんそっくりって……ピーちゃんはそんなことしないよ!? いつなの! その子が襲われたのはいつ!?」
「襲われた時間は五の鐘が鳴る直前だそうですわ」
「その時間ならピーちゃんは研究室にいたはずだけど……」
フィールンは僕の方をチラっと見る。
声を出せないから答えられないけど、昨日は確かに研究室にいたよ。
フィールンが寮へ戻った後はあの部屋から出てないし。
「フィールン、それはワタクシも把握しておりますの。昨夜ピエールが研究室から出ていないということを」
「えっ!? そうなの!? 把握って、どうやって?」
「その話は今は置いておきましょう。一先ずピエールを処分するという話ではないので安心なさい。
魔竜に襲われたと言っている子の腕についた傷とピエールの牙が一致しないか確認する為に、ピエールの歯型を取らせてもらえればいいのですわ」
「それくらいなら……いいよね?」
フィールンはピエールに向かって確認を取ると、ピエールは素直に頷いた。
「ピーちゃんもいいって! 問題ってそれだけ?」
「ええ、大まかに言えばこれだけですわ。ただ、そもそもなんでこんな嘘を吐いたのかという問題がありますが……」
「あ……そっか」
「それをこれから調べていきます。もしかしたらフィールンやピエールに協力をお願いすることもあるかもしれませんわ」
「うん、いいよ。ピーちゃんが悪いことしていないって証明する為だもんね!」
「ええ、そうですわ。
では、ピエールにこれを噛んでもらい……」
粘土みたいな物をピエールに噛ませ、歯型を取ったら用事は終わりみたい。
ピエールに噛まれたなんて……
なんでそんな嘘を吐いたんだろう?




