学長とシアリースと
フィールン達が扉の前で睨みあったまま、時間だけが過ぎていく。
その間にも何人かが部屋へ入ってきたけど、訝しげに見るだけで横を通り過ぎて行った。
更に時間が立つと、二の鐘が聞こえてきた。
鳴りやむとすぐに学長が部屋へと入ってくる。
「フィールンにイェレッタ。それにナユタ・エノオとナギサ・エノオ。扉の前で何をやっているのかしら?」
「学長先生……フィールンが魔竜を連れ歩いているから注意をしていたのですよ。こんな危険な物、さっさと処分すべきだと。学長先生もそう思いますよね」
ナユタが学長にピエールを処分すべきだよねと声を掛けた。
学長は疲れた様な溜め息を吐いてから言葉を発した。
「この魔竜はワタクシからお願いをしてフィールンに見てもらっているのです。もし魔竜が悪さをすればすぐに処分致します。
ほら、もういいでしょう。席に着いてください」
学長はそれだけ言うと、もう話すことはないと歩きだした。
学長の言葉を聞いて、ナユタとナギサはかなり驚いていたみたいだけど、学長にハッキリと言われたからか大人しく自分の席に向かった。
「ウチらも行こうか」
「うん……」
フィールンはナユタ達を睨んだまま、席へと向かった。
「さて、皆さんも聞こえたかと思いますが、フィールンの連れている魔竜については話が通っています。もし悪さをしたようであれば処分致しますのでご安心を。
では……」
朝礼ではピエールの話以外には特になにもなく、すぐに終わった。
みんなが部屋から出ていく中、フィールンは学長の下へ向かう。
「学長先生。シアリースが学長先生と話したいって言ってて、私も一緒に行くことになったんだけど」
「ええ、聞いています。今からワタクシの部屋へ向かいますが、よろしくて?」
「うん。大丈夫」
「あ、ウチも一緒に行っていい?」
「上薬草の話でしたね。魔竜の話がどれくらいかかるかわかりませんが、それでも良ければ一緒に来てもいいですよ。もちろん後で時間を取っても構いませんが」
「うーん……ウチもピーちゃんの話聞いていいなら一緒に行きたいんやけど」
「ええ、いいですよ。隠すような話でもないですわ。むしろ、全体に周知する話です。聞かれても問題ないでしょう」
フィールンとイェレッタ、学長が三人で学長室へ向かう。
学長室へ着くと、部屋の前にはすでにシアリースが待機していた。
シアリースは大きな箱を抱えてる。
「お待たせしてしまったかしら?」
「いえいえ、来たばかりです。私の方こそ急がせてしまったようで、すみません」
「そんなことありませんわ。さあ、部屋へどうぞ」
部屋へ入ると、シアリースは持ってきていた箱を学長室の机の横に置いた。
「それですべてですか?」
「ええ、昨夜から今日の朝にかけての分ですが」
学長はシアリースが持ってきた箱を開けて中を確認してる。
「これがすべて、魔竜に関する苦情ですわね……」
「えっ!? そんなに!?」
「なんで苦情なんてくるんや!?」
フィールンとイェレッタは苦情の量に驚いてる。
箱の中には大量の羊皮紙が入っていた。
わざわざ学長に苦情を言う為に羊皮紙を用意した子達がこんなにいるってこと!?
あ、でも……そっか。
貴族が多いなら羊皮紙くらいなら簡単に用意できちゃうか……
「そうですわね、フィールン。昨日は気が動転していて、ここまで考えが回りませんでしたが……
これほどまでに苦情が来たとなると、対処せねばなりません」
「対処って……どうするつもりなの!」
フィールンがピエールを守るように抱えた。
さっき悪さしなければ処分はしないって言ってたから、すぐに殺せなんてことにはならないと思うけど……




