ここでも苦情
ご飯を食べ終わり、準備も出来たフィールンは特別クラスへ向かう。
部屋に入ると、ここでも視線がフィールンに集中する。
食堂みたいに人がいっぱい居るわけじゃないけど、どこへ行っても見られてるのはあまり気分が良くないね。
まだ全員が来てるわけじゃないけど、もうすでに半分くらいは揃ってる。
その内の二人が立ちあがって、フィールンに近付いてきた。
「ナギサの話は本当だったんだな」
「だから言ったでしょう、お兄様! 寮に魔竜を連れてきた頭のおかしな子がいるって!」
「そうだね。だけど魔竜を連れているなんて、なかなか信じられないのも分かるだろう?」
「そうね。私も噂を聞いただけであれば、信じていなかったと思う。そんな信じられないような物を連れてきたこの子がやっぱりおかしいのよ」
フィールンに向かって失礼なことばかり言いながら近付いてきた二人。
二人ともグレーの髪色で男の方はツンツンと逆立たせ、女の方は腰まで伸ばしたストレート。
お揃いの袴と呼ばれる服を着てるし、お兄様って呼んでたから兄妹なのかな。
魔竜が魔竜がって言ってるし、ピエールのことで文句があるのかな。
フィールンはピエールのことを言われているからなのか、おかしな子扱いされたからなのか、ちょっと怒ってるみたい。
「ほら、お兄様。早く言ってください」
「ああ、わかったよ。
フィールン。その魔竜をこちらへ渡してくれ」
「え、ヤダよ」
「そんなこと言うんじゃない。幼い内に処分すれば誰も傷つかずに済むだろう?」
「そうよ! さっさと渡しなさいよ!」
「処分って! ピーちゃんにそんなことさせたりしないんだから!」
「フィールンはちゃんと分かっているのか? その魔竜が成長したらどうなるのか。何十人、何百人という人が殺されることになるんだぞ」
「ピーちゃんはそんなことしないよ!」
「なんでそんな事言いきれるのよ! 魔竜よ!? 絶対やるに決まってるわ!」
「あんただって、なんでそんなこと言いきれるのさ! ピーちゃんのこと何も知らないくせに!」
「それのことは知らなくても、魔竜の話は耳にタコが出来る程聞かされてきたのよ!」
「どんな話を聞いたのか知らないけど、その話に出てくる魔竜とピーちゃんは別竜じゃん! ピーちゃんは昨日産まれたばかりなんだから!」
フィールンの言う通りだよね。
ピーちゃんは産まれてから悪いことなんて何もしてないし。
人だって、何十人も殺している人がいるんじゃないの?
それでも、人は危険だ。人を全部処分しろなんて、誰も言ってないよね。
なんで魔竜だと処分しろーなんて話になっちゃうんだろう。
言いがかりを付けてきた女とフィールンが睨みあっていると、部屋の扉が開いてイェレッタが入ってきた。
「あれ、フィールン。それにナユタとナギサやん。扉の前でなにやっとるん? 危ないで?」
「イェレッタ! 丁度いいわ! あなたからも言ってあげなさい。魔竜なんかを連れているなんて非常し……き……」
「ピーちゃん、昨日はちゃんと眠れたん? 元気そうやなあ。
ん? なんか言うたか、ナギサ?」
イェレッタはピエールを見つけると、頭を撫でながら話しかけていた。
そんな姿を見たナギサは言葉を失ってイェレッタを見てる。
「イェレッタ。なんでその魔竜を撫でているんだ? 危ないだろう」
「なんでって……可愛いし危ないことなんてないで? なんや、ナユタはピーちゃんが怖いんか?」
何を言っているんだと二人に言葉を返すイェレッタ。
ナユタとナギサはイェレッタの言葉を聞いて黙っちゃった。
フィールンはそんな二人を睨みつけたまま……
「なんや? どうしたんや?」
イェレッタは状況が飲み込めず、フィールンとナユタ、ナギサを困ったように見比べながら、ピエールの頭を撫で続けていた。




