マリーと昇格試験
「それで私どもと致しましては、今回の昇格試験は見送って頂き、次回の試験を受けて頂くのが良いのではと考えているのですが……」
「は? いや、えーと……受けます! 今日、受けます!」
「……本当に?」
「はい! 昇格のチャンスがあるならやります!」
「わかりました……では、昇格試験の説明をさせて頂きます。まず二の鐘から三の鐘が鳴るまでの間に筆記試験を行います。この筆記試験では文字の読み書きや計算の問題を行います」
「銀ランクの筆記試験については勉強してきているので大丈夫です」
「はい。その後、休憩をはさみ、実技試験を行います」
「実技試験の内容は冒険者ギルドのある地域によって内容が変わるんですよね?」
「その通りです。基本的な条件は同じですが、冒険者ギルドの設置してある地域によって、出現するモンスターも違うので全く同じ試験にはなりません。ここ、王都では馬車で半鐘程移動した場所にあるダンジョンに潜って頂き、一夜を明かしてもらいます」
「ダンジョン内で……ですか」
「はい、そうです。ダンジョンから出なければ、何をしてもかまいません」
「何をしても……?」
「はい。何をしてもです。ダンジョン内で一夜を明かしてもらう為、準備等もあると思いますので、当日にいきなり試験に参加されるのは大変かと思います……今でしたらやはり次回に見送るということも出来ますが……」
「いえ……やります! 荷物は持ってきてるので、あとは食料さえ買えば行けます!」
「そうですか……本当にごめんなさい……私が昨日ちゃんと伝えていれば……」
「大丈夫ですよ。昨日聞いていようが、今日聞こうが、やることは同じです!」
「そう言って頂けるとは思ってもいませんでした…… あっ! 申し遅れましたが、私アンナと言います!」
「アンナさんですね。これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ! では、二の鐘が鳴るまでに試験会場に入って頂ければ。試験会場はこの隣の部屋になります」
「二の鐘が鳴るまでに買い出しして来てもいいですか?」
「もちろん! といいたい所ですが……あまり時間に余裕がありません。もし遅刻すればその時点で失格になるので……」
「あぁ、なるほど……じゃあ筆記試験が終わった後の休憩時間を利用して買い出しに行くので大丈夫です。ありがとうございます」
「とんでもありません……すべてこちらの不手際です。本当に申し訳ございません」
何度も何度も謝るアンナ。マリーはそこまで気にしていなさそう。
もう頭の中は試験のことでいっぱいみたいだね。
冒険者ランクを上げるなんてかなり大変なことだと思ってたけど、考えていたより簡単なのかも?
でもマリーは元々、村での狩猟を仕事にしてた。その時にモンスターを狩ることもあったって言ってたし、冒険者になったのも、モンスターの素材を売る時に有利になったりするからって話をしてた。
村でコツコツと功績を上げていたから、今回の依頼達成で昇格試験を受けられたってことなのかな。昇格試験に必要な功績がどんなものなのか知らないから良くわからないけど。
「ではどうぞ、こちらへ」
「はい」
アンナの後に続いて隣の部屋に入る。試験会場となっているその部屋は、さっきまでいた部屋よりかなり大きく造られている。
「時間になれば試験官が来ますので、それまでは好きな席に座ってお待ちください。今回はマリーさんの他に五人、昇格試験を受けることになっております」
「はい、わかりました」
案内が終わったアンナは、頭を下げてから立ち去って行く。
マリー以外にも五人、昇格試験を受けるって話だったけど、部屋の中にはまだ誰もいない。
「ウル~! 昇格試験を受けることになっちゃったけど、大丈夫かな!?」
「僕も手伝うから! 頑張ろう!!」
アンナがいなくなった瞬間に不安そうな顔になったマリー。
なんの準備もしてないもんね。不安にもなるよ。
「筆記試験は問題ないと思うんだ。けど……実技の方が……ダンジョンなんて入ったこともないし、そこで一夜を明かすなんて……」
「僕は寝なくても大丈夫だから、見張りもできるよ?」
「えっ! あ!! そっか。ウルがいるだけで夜も安心なんだ……」
「魔法で援護も出来るし、役に立てるんじゃないかな」
「ウル~!! でもウルの力だけで昇格しても意味ないから……私も頑張るからね!!」
さっきまでの不安そうな顔はもう無くなってる。
頑張ってね、マリー!
僕も出来る限りの協力はするから!!




