マリーと僕②
マリーは頭を抱えながら部屋をウロウロしたり、自分で壊した椅子に座ろうとして転んだりと、なかなか落ち着かない。
どれくらい経ったのかな。三十分くらい悩み続けてからやっと僕に話しかけてきた。
「えっと……キミはこれからどうしたいの?」
「僕? 僕はね、世界を平和にしたいの」
「世界を平和に?」
「そうだよ! 僕の最初の持ち主の夢だったんだ。あの人が生きてる間に、僕はしゃべったり考えたりすることが出来なかったから……今なら自分で考えることが出来る! だからあの人の夢を叶えたいんだ!」
「そうなの……世界を……」
「うん! マリーは? マリーは何をしたいの?」
「私は……村を助けたいの……」
「村?」
「そう。私の住んでいた村はここからずっと遠くにあるんだけど、ちょっと前にモンスターに襲われちゃったの。亡くなっちゃった人も何人かいるけど、生き延びられた人もいっぱいいる。だけど……」
「だけど?」
「家を壊されちゃったり、畑も踏み荒らされて……このままだとせっかくモンスターから助かったのに生きていけない」
「そんな! 可哀想……」
「だから私はお金を稼いで村に届けたいの。お金があれば村を建て直すことが出来る!」
「それなら……僕も手伝うよ!」
「手伝ってくれるの?」
「うん! 一つの村を平和に出来なくて、世界を平和になんて出来るはず無いもん!」
「ありがとう……じゃあキミのこと、売っていい?」
「売っちゃうの!?」
「あはは、冗談だよ。売ればたぶん、村を直すだけのお金は手に入ると思う。だけど……キミ程の剣を無事に売ることが出来る自信ないし。それにキミかわいいし」
「かわいい!?」
「うん。その反応もかわいい」
「かわいいなんてそんな……!」
「あはは! やっぱりキミかわいいね。これから一緒に冒険してもらってもいい?」
「うん! 一緒に頑張ろう!」
「ありがとう! ……ところで、キミに名前ってあるの?」
「名前? ううん、特に何もないけど」
「一緒に冒険するなら、キミって呼び続けるのもイヤだなって思ったんだけど」
「そっか。じゃあマリーが名前つけてよ」
「私がつけていいの?」
「うん。カッコいい名前がいいな」
「うーん……名前かぁ……あ、そうだ! 『ウル』ってどう?」
「『ウル』? 何か意味あるの?」
「私の村に伝えられてる伝説なんだけど、大昔に村にモンスターの大群が押し寄せてきた事があったんだって。その時に偶然、村に滞在していたウルって人が弓矢を使って村を守ってくれたらしいの。ホントの話なのかわからないけど、ずっと村に伝わってる話なんだ。キミが村を助けてくれるって聞いたときに、その『ウル』の話を思い出したの」
「そんな人間もいるんだね! うん、僕もその人みたいに皆を守りたいからその名前がいい!」
「じゃあ、これからよろしくね。ウル!」
「うん。よろしく、マリー!」
これから一緒に冒険するんだし、お互いのことをもっと知らなきゃね!
マリーは王都に来たばっかみたいだし、これからどうするんだろ?




