マリー
___ガタゴトガタコト___
うーん……
___ガタゴトガタコト___
「お、着いたな。お前ら、降りるぞ」
えっ? どうしようか悩んでる間に王都に着いちゃった。
「よし、じゃあ門をくぐったらチームに別れるぞ」
「はーい」
門では冒険者の身分証明書みたいな物を見せたらすぐに通してもらえた。
これが王都かあ。
人間がいっぱい。賑やかで皆楽しそうな顔してる。
門をくぐったらすぐにチーム分けが始まった。
馬車や商人と一緒に商館までいくチーム。
盗賊達を警備隊のいる宿舎まで連れて行き、報奨金をもらってくるチーム。
途中で手に入れた素材や盗賊達の武器を売ってくるチーム。
僕はマリーやジェイドと一緒に商館まで行くチーム。
集合場所は冒険者ギルドだって。
「じゃあさっさと片付けちまうか」
「そうだね、ジェイド。行こっか」
商人達と一緒に馬車を牽いて出発。
商館は門から真っ直ぐ伸びている大通り沿いにあるらしい。
そんなに遠いわけでもないからすぐに到着。
商人達も着いたらすぐに任務完了の印をくれたみたいで、中に入ることも無く終了。
「もう終わっちゃったね」
「そうだな。今からギルドへ行っても誰も来てないだろうな」
「そうだよね」
「ちょっとその辺の店でも覗いてみようか」
「うーん……」
「ほら、あの店なんておもしろそうじゃないか?」
「うん、わかった。寄ってみようか」
マリーは乗り気じゃないみたいだけど、ジェイドの誘いを断れないみたいだね。
「ほう。やっぱ王都はすごいな。珍しい物が集まってる」
「そうだね。初めて来たけど、人も多いし熱気もすごい」
「あ、これなんてマリーに似合うんじゃないか?」
店に並んでる中からジェイドが取ったのは、花を象った髪飾り。
「髪飾りは耳のジャマになるからつけないの」
「そ……そっか。そうだよな」
マリーに断られてジェイドが落ち込んでる。
ジェイドはマリーを好きなのかな?
でもマリーには全くそんな気が無いみたい。
確かにジェイドの顔には大きな傷も付いてるし、あまりカッコ良くないもんね。
「そろそろギルドに向かってもいいんじゃない?」
「そうだな……行こうか」
冒険者ギルドは門から真っ直ぐ行った突き当りにある。
かなり大きな建物。ここにある冒険者ギルドが王国内の本部になってるらしい。
「ほら、もう皆いるよ?」
「あぁ、急ごうか」
お店を覗いてたマリー達が一番最後の到着になっちゃったみたい。
「ジェイド、また口説いてたのか?」
「くっ!? 口説いてなんかないぞ!? なぁ、マリー?」
「え? うん。お店見ようって言われただけだよ」
「ほう。皆を待たせて店をね」
「待たせて悪かったから! ほら、行くぞ!」
ジェイドが顔を赤くさせて冒険者ギルドへ入っていく。
マリー以外の皆もニヤニヤしながらついて行く。
中もかなり広くなってる。目の前にカウンターが用意されてて、何人ものギルド員が働いてる。
ジェイドがその内の一人に近付いて行き、一枚の紙を差し出した。
「はい、依頼達成ですね。チームメンバーは後ろに居る方々でよろしいですか?」
「はい」
「では全員ギルドカードを預からせて頂きます」
皆が自分のギルドカードを出す。手の平サイズのカードみたいだね。
「では少々お待ち下さい」
ギルドカードを受け取ったギルド員は奥へと小走りに去っていく。
数分して戻ってきたときには、ギルドカードの他に革袋も持ってきた。
「では順番にお返ししますので」
一人ずつギルドカードの返却と一緒にお金も渡していく。
「これで今回の依頼は終了になります。ありがとうございました」
ギルドカードとお金を受け取った面々は、冒険者ギルドのすぐ近くにある広場へと移動して、精算を始めた。
「じゃあまずは報奨金だな。報奨金が全部で銀貨三十九枚。だから一人銀貨三枚だな」
「素材と武器のほうは、素材の方が銀貨十三枚。武器のほうが銀貨五枚だったよ。素材の方は一人銀貨一枚。武器の方は…マリーは銅板二枚、他の人は銅板四枚かな?」
お金の価値が良く分からない!
銅板って何だろう? これが高いのか安いのかもわかんない。
「うん、それで大丈夫。ありがとう」
「これで精算も終わりだな。マリー、これで最後だが……やっぱり一緒にパーティ組まないか?」
「……ごめんね。私はソロでって決めてるの」
「そうか……困ったことがあれが俺達に声かけてくれよな」
「うん、ありがとう。それじゃ、また機会があったらね」
一緒に護衛をしてたメンバーがバラバラに移動を開始した。
マリーもキョロキョロしながら移動してる。
「さて、と。まずは宿屋を探さないと」
大通りから路地に入り、周りを気にしつつ細道を歩く。
少し歩くと宿屋らしき看板のある建物を見つけた。
マリーは迷わず扉を開け、中へと入っていく。
「いらっしゃい。泊まりかい?」
「うん。一泊いくら?」
「一人部屋なら銅板二枚。夕食付きなら銅板三枚だよ」
「じゃあ個室夕食付で。はい、銅板三枚ね」
「はいよ。じゃあこれ鍵。そこの階段登った突き当りの部屋だよ。夕食は四の鐘から五の鐘の間だから」
「四の鐘?」
「あぁ、王都は初めてか?王都では一日に五回鐘が鳴るんだ。ほら、時計なんて高くて手の出せない奴も多いからな。
日の出が一の鐘、中天が三の鐘、日の入りが五の鐘。一の鐘と三の鐘の間、三の鐘と五の鐘の間にも一度ずつ鐘が鳴る。王都で暮らしている人達はその鐘の音を目印にしてるんだ」
「そうなんだ。ありがとう。じゃあ次に鐘の音が四の鐘になるのかな?」
「その通り。五の鐘が鳴ったら片付けちまうからそれまでに来てくれ」
「はーい」
マリーが階段を登って部屋へと入る。
部屋にはベッドと椅子が置いてあるだけ。
ボロボロってわけではないけど、清潔って感じでも無い。
お金の価値なんてわからないけど……
裏路地にある宿屋だし、きっとかなり安いんだろうな。




