馬車
___ガタゴトガタコト___
馬車が動き出してから三時間くらい経ったのかな?
出発するまでが大変だった。
大量に捕まえた盗賊達の処遇について意見がわかれていたみたい。
馬車の周りに皆集まって話し合ってたんだけど……
この馬車の目的地は、ここから半日くらい進んだ所にある王都。
かなり遠い場所から何日もかけてここまで来たみたいで、この馬車にはかなり大事な物が積み込まれているらしい。
だから、普通の馬車なら護衛も今の半分もいればいい方なのに、この馬車の護衛はかなり多くなってる。
その護衛の数が多いことが今回の問題が発生する原因になったのかな。
盗賊達を捕まえると、生死に関係無く報奨金が貰える。けど、生きて連れて行った場合、犯罪奴隷として売れるらしい。犯罪奴隷として売ればもちろんその分のお金も貰える。
約二十人分の金額ってなれば、かなりの額になるみたい。
冒険者からしたらこれを見逃すのは惜しい!
そもそも護衛の契約内容がいけなかったみたいだね。
普通は護衛中に倒したモンスター等の素材は、雇い主と折半になる。
けど、今回は大急ぎで護衛の冒険者を雇わなきゃいけなかったから、護衛中に手に入れた物は冒険者達にすべて譲るって契約で人を集めたらしい。
そもそも道中で手に入れた素材を入れておくための馬車を一台用意してるっていうのが凄い!
三台ある内の一台は、冒険者が手に入れた素材やアイテムを入れる為の馬車だったんだって!
僕もその中に入れられてたんだけどね。
そんな契約だったから、冒険者達からしたら捕まえた盗賊達を王都まで連れて行ってお金にしたいってことみたい。
でも商人達はなるべく早く王都まで行きたい。
盗賊も数人だったら馬車に縛り付けてでも運べるけど、さすがに二十人は無理。
二十人を歩かせて王都まで行くとなったら、今日中に着けるかどうかギリギリになっちゃう。
だから商人達は、盗賊達を全員殺して首だけ持って行けばいいじゃないかという。
商人怖い……
そんな言い合いで、無駄に時間がかかりそうな時に一人の冒険者が言ったんだ。
「走らせればいいじゃん」
だって。
盗賊達が素直に走るわけ無い!
って反論を余所に、盗賊を縛っている紐を馬車に括り付けた。
「ほら、これで馬車が動けば引っ張られるでしょ? 馬車と同じスピードで走らなければ、引きずられるだけ。こうすれば必死に走るんじゃない? 途中で何人か減っちゃうかもしれないけど、ここで言い合ってるよりマシでしょ」
冒険者怖い……
そんなこんなで、盗賊達を馬車に括りつけて動き出した。
僕の乗ってる馬車の後ろには、クルト達が必死になって走って付いてきてる。
「そこの岩場でちょっと休憩にします」
「「「うおぉぉぉーーーー!!!」」」
商人さんが休憩と声をかけたら、盗賊達が凄い反応した。
顔が青くなってる人もいるからね。
あ! お昼時みたいだから、食事でもするのかな?
「じゃあ今回もちょっと周り見てきますね」
「あ、私も行く!」
冒険者が数人、休憩所から離れていく。
残った人達の話からすると、休憩のときに周囲の警戒するのと同時に、食料になりそうな物を探しに行くらしい。
現地調達ならお金もかからないし、新鮮なものが食べられるから商人達も喜んでるみたい。
ご飯食べないと生きていけないって大変だね。
「マリー、俺からも言ってやるから……な?」
「ホント? ありがと……ジェイド」
探索に行った冒険者達が帰ってきたみたいだけど……なんか様子がおかしい?
「どうしたんだ?」
「あぁ、獲物を追ってるときにマリーの剣が折れちまったんだよ」
「村にいるときから使ってた剣だから……もう寿命だったのかも……」
「そりゃ災難だったな」
「だから……盗賊達の剣でいいから譲ってもらえないかな?」
「あぁ!? それはお前……」
「もちろんその分の報酬は引いてもらっていいから! 新しいの買うお金も無いから、剣が無いと……」
「俺からも頼むよ。さすがに可哀そうでな」
「ジェイドまで……まぁジェイドが言うなら俺はいいけど……」
「他のみんなもいいかな?」
「あれだけあれば一本くらいなら別に……」
「所詮、盗賊が持ってるような剣だしな……」
「皆ありがとー!」
ジェイドって人が冒険者達のまとめ役なのかな?
マリーって子の剣が折れちゃったみたいだね。
あ、こっちに近付いてくる。
馬車に積み込まれていた剣を全部並べて見比べてる。
「あれ? この剣……他と違う」
えっ!? 僕の事!?
「拾った時には気付かなかったけど……この剣凄い物なんじゃ……」
僕を持って出ていくのかと思ったら、背負っていたカバンを開く。
そのカバンの中に僕を仕舞った。
このカバン、すごく大きい。中には服とか食料とか色々入ってる。
はみ出しそうになる僕を、無理矢理カバンの中の押し込んでから、もう一本他の剣を持って馬車から出ていく。
「皆ありがとう! この剣貰うね」
「その分報酬からは減らすからな」
「もちろん! それでも助かるから大丈夫だよ」
僕の他にもう一本の剣を持ちだしたけど……これは泥棒になるのかな?
いや、でも皆が持って行っていいって言ってたから問題ないのかな。
人間の世界は難しいね。
休憩が終わって動き出した。
あと数時間もすれば王都に着くみたい。
「マリーは王都着いたらどうするんだ?」
「王都に着いてから考えようと思ってるよ」
「俺達と一緒にパーティを組まないか?」
「うーん、誘ってもらえるのはうれしいけど、私はソロでやるって決めてるの。ごめんね、ジェイド」
「ソロだと大変じゃないか? それに獣人だと……」
「わかってる。それをわかった上でソロで頑張りたいの」
「そうか……わかった。俺達も当分は王都にいるから、何かあったら声かけてくれ」
「うん。ありがとう、ジェイド」
そう、マリーの頭の上にはフサフサの耳が生えている。
獣人なんだ。獣人って初めてみた。
魔王様達が話してるのを聞いたことはある。
人間達よりはちゃんと話を聞いてくれるって言ってた。
でも聞いてた話だと、尻尾もあるはずなんだけど……
隠してるのかな?
見ただけだとわからないけど。
「ま、もうすぐ王都だ。最後に気を抜かないように行こう」
「はーい!」
冒険者のほとんどは馬車の中で寛いでいる。
それぞれの馬車の御者台には御者の横に一人ずつ冒険者が座っているだけ。他の冒険者は皆馬車の中。
ほとんどの旅路をこの体制で来たらしい。
じゃあさっき盗賊に襲われた時はなんで冒険者が外に出て歩いていたのか。
実は盗賊が待ち伏せしていることに気付いたのはマリーだったみたい。
獣人は人間より音や臭いに敏感。
そのおかげで進行方向に大人数で待ち伏せされてそうだと気付いたらしい。
「それにしても……盗賊団に襲われた時に助けてくれた魔法はなんだったんだろうな」
あ、僕の魔法の事だ。
「魔法が飛んできた方にいた盗賊達も何も知らないようだったぞ」
「あの魔法がなければ……誰か怪我してたよね」
皆を助けられたなら頑張ってよかった。
「あんな大魔法見たことも聞いたことも無い。マリーは知ってるか? 獣人の魔法とか」
「全く聞いたこともないよ。あんな魔法初めてみた」
見たことも無い魔法?
ただの“アクアウォール”だったのに?
「そうなんだよな。実際、あんな魔法使えるなら俺達は殺されているだろうし」
「そもそも魔法使えるなら盗賊なんてやってないよね? 冒険者になっているか、あれだけの魔法が使えるならお国に仕えたりするんじゃ……」
確かにあれだけの人数がいて、魔法を誰も使わなかった。
使わなかったんじゃなくて、使えなかった?
「誰かが助けてくれたのかな」
「助けるって言ってもな。あれだけの大魔法を使える人がこんな所にいるか?」
「そうだよね」
えっと……魔王様達なら誰でも使えるような魔法だったんだけど。
魔法が使える人が減ってる?
でも僕が知ってるのは魔族だけだから、人間は元々これくらいだったのかな。
「ま、わかんないことを考えてもしょうがないな」
適当!
話しかけて、僕の魔法だよって教えてあげた方がいいかな?
でもそれをやっちゃうとマリーに迷惑がかかりそうだし……
そもそもマリーについて行って大丈夫なのかな?
うーん……どうしよう。




