表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VISION  作者: Mr.M
四章 殺人未遂事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/76

第70話 デジャヴ

玄関を出ると、

鉛色の雲が空一面に広がっていた。

ポツポツと落ちる雨粒が、

スロープとその外側の芝を

静かに濡らしていた。

ところどころ剥げた芝の隙間から、

黒ずんだ土が顔を覗かせていた。

湿った空気が頬を撫でた。

息を吸い込むと、

微かな土の匂いが私の鼻腔を刺激した。

私は大きく息を吐き出した。

胸の内に澱んでいたものが、

静かな雨に洗われていくようだった。


鳶が「ピーヒョロロ」と啼いていた。


傘を広げようとしたその時、

視線の先のスロープの脇に

2つの影が見えた。

こちらに背を向けているのは、

黒いスーツの男。

男の大きな傘に遮られ、

向かい合うもう1人の顔は見えなかった。

しかし。

足元のデニムには見覚えがあった。

「やあ。

 遅れてすまないね」

ふいに。

背後で声がした。

振り返ると、

大烏が開け放たれた玄関の前に

立っていた。

隣にはヒカルもいた。

「お、大烏さん?」

「どうやら間に合ったようだ」

「アタシは見送りなんて必要ない、

 って言ったのに。

 どうしてもお別れをしたい人が

 いるみたい」

ヒカルは大烏の腕に

自分の腕を絡ませると、

私に向かって意味深な笑みを浮かべた。


ふたたび鳶が「ピーヒョロロ」と啼いた。


その時。


「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」


弾けるような悲鳴が、

耳をつんざいた。

隣にいる小鳥遊が目を見開いて、

震える両手で口を押えていた。

「笠原くん!」

続いて歌川の声した。

私は改めて視線をスロープの先へ向けた。

ポツポツと落ちる雨粒が、

スロープとその外側の芝を

静かに濡らしていた。

ところどころ剥げた芝の隙間から、

黒ずんだ土が顔を覗かせていた。

開いたままの傘が2つ、

地面に転がっていた。


こちらに顔を向けている笠原の顔が

醜く歪んでいた。

笠原は僅かに前屈みになって、

白いTシャツの脇腹の辺りを押さえていた。

その手の辺りが赤く染まっていた。

次の瞬間。

笠原が膝から崩れ落ちた。

何が起こったのか、

一瞬わからなかった。

「いやああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」

という叫び声と共に、

小鳥遊が傘を投げ捨てて駆け出した。

「こ、小鳥!」

歌川が慌てて彼女の後を追いかけた。


そこから先の出来事を・・。

私はたしかに『ビジョン』でミていた。


ポツポツと降る雨の中、

小鳥遊が地面に膝をついて、

倒れている笠原の体を抱きかかえた。

彼女の背後に歌川が立った。

歌川の手が小鳥遊の肩にそっと触れた。

ふいに。

小鳥遊の目から涙がこぼれた。

次の瞬間。

小鳥遊の叫び声が周囲に木霊した。


私はその3人から

少し離れて立っている鈴木の方へ

視線を向けた。

その手には、

細く長い刃の包丁が握られていた。

鮮血に染まった刃が鈍い光を放っていた。

ポツポツと降る雨が、

ゆっくりとそれを洗い流していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ