第69話 別れの予感
部屋に戻った私は
荷物をバッグに詰めてから、
もう一度部屋を見回した。
今となっては長いようで短い2日間だった。
そして。
表向きは穏やかな2日間だった。
「結女ちゃん、準備はいい?」
その時。
ドアが開いて小鳥遊が顔を覗かせた。
私は笑顔で頷いた。
廊下に出ると、
歌川が2人分の荷物を持って、
窓際に立っていた。
「えー・・っと。
これはだな・・その・・」
歌川は私と目が合うと、
バツが悪そうに自らの広い額を撫でた。
「良かったですね、マスター」
私は複雑な思いを胸に仕舞いこんで、
そう声を掛けた。
歌川は顔を赤らめると、
ゴホンとわざとらしい咳をした。
「さあ行くぞ」
そして歌川は先に階段を下りていった。
私と小鳥遊は並んで後に続いた。
電気の点いた1階の廊下は、
ここに来た時とまったく同じ光景だった。
私達はしんと静まり返った廊下を進んだ。
突き当たりを曲がると、
玄関の前に
黒いタキシード姿の本田が
傘を3本持って立っているのが見えた。
本田は私達の姿を認めると、
穏やかな微笑を浮かべ、
恭しく一礼した。
「旦那様と江藤は今手が離せないようで。
私が代わってお見送りに参りました。
皆様気を付けてお帰り下さい。
それと。
早朝から雨が降っていますので
こちらをお持ち下さい」
「わざわざご丁寧に
ありがとうございます。
お世話になりました。
大烏くんにもよろしくお伝え下さい」
歌川はそう言って頭を下げた。
私と小鳥遊もそれに倣った。




