第50話 告白
部屋の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
大烏は部屋の奥の机に置かれた
受話器を取った。
「ふむ。
紅茶を淹れてくれないか。
2人分だ」
そして受話器を置くと、
そのまま回り込んで椅子に座った。
「話の続きは紅茶を飲みながらにしよう」
しばらくして。
トレイを持った本田が
静かに部屋に入ってきた。
本田は無駄のない動きで、
大烏の机の上にカップを置いた。
続いて。
本田は私の前のテーブルに
カップとポットを並べた。
その時。
本田の視線が、
テーブルに置かれたままの
空のグラスに留まった。
「お下げしてもよろしいですか?」
本田が私に訊ねた。
「それはそのままにしておいてくれ給え」
答えたのは大烏だった。
本田は一瞬、
怪訝そうに眉を動かしたが、
それ以上は何も言わず、
一礼して部屋を出ていった。
部屋の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
大烏はカップを手に取ると
優雅に香りを確かめてから、
一口だけ啜った。
「ふむ。
そのグラスに毒が入っていたと。
君がどうしてそんなことを
言い出したのか。
私にも理解できるように
詳しく説明してくれないかね?」
そして大烏は眉間に皺を寄せて、
カップを置いた。
私は大烏から視線を外すと、
目の前のカップに手を伸ばした。
それから大きく息を吸った。
ベルガモットの芳香が鼻孔に広がった。
カップを持つ手が微かに震えていた。
私は慌ててカップを置いた。
「・・話しても。
信じてもらえないと思います」
「しかし君は。
その話をするために
ここへ来たのではないかね?」
大烏の視線が私に突き刺さった。
私は改めてカップに口をつけた。
爽やかな香りと共に、
口内にまろやかな深みと
落ち着いた渋みが広がった。
私はカップを置くと、
徐に口を開いた。
そして。
私は自分の持つ特殊な能力のこと。
車中でミた『ビジョン』のことなどを、
順を追って説明した。
ただし。
小鳥遊にミた『ビジョン』については
秘密にしておいた。
大烏は時折頷きながらも
私の話を黙って聞いていた。




