黒くて透明
――弟か。
クラルは思う。
シームァの弟ということはかなり若いな、下手したら子ども……。
――ないな。
男好きなクラルではあるが、ショタの趣味はなかった。
「僕の魔力は見えるかな?」
クラルことケイは、魔力を発揮させる。
この部屋自体に結界を張っている。
近くに魔法を使える者がいても、ケイの魔力に気づかれることはない。
シームァは半信半疑ではあったが、じっとケイを見ていた。
「さっきのミン君が緑なら僕はどんな光かな」
というのは、単なる好奇心。
自分の魔力がどんな色でもシームァの目を、今、治す。ケイはそう決意していた。
「黒? でも透明でどこまで透き通った……?」
シームァの説明を聞いても、それがどんな色かケイは想像できなかった。
「ま、色はいいよ。今度は僕の目を見て」
「……うん」
シームァは若干の照れがあるようだが、ケイの目を見た。
さっき、ミンに『目を見て』なんて言われた時はドキドキしたが、ケイに言われてもさほどの感情の高ぶりはなかった。
やっぱり自分はそっちなんだ、と思いながらシームァは眠っていた。
* * *
ミンに後をつけるように言われてた兵士は、宿屋の前にいた。
「尾行するなら、尾行されないようにな」
と肩を叩かれた。
四番隊隊長であり行商でもあるパース・ソナリアだ。
尾行してると指摘されて、そうだと肯定する訳にも行かず、兵士はどう返事したものか思案していた。
するとパースは語り出す。
「まあ、俺もあの二人が気になってたんだ。ありゃ、どっかいいとこのボンボンだろう。道ならぬ恋ってヤツだよ」
言いながら、パースはうんうん頷いている。
「それは確かな情報なのか?」
「あぁ、間違いない。あの見事なバイオリンといい、顔を隠してるのといい、許されざる恋の逃避行に違いない」
「つまり、不確かな情報なんだな」
「おいおい、俺の話聞いてたか?」




