お触り禁止
「え?」
ミンが批難がましい声を上げたのが、シームァには意外だった。
「え? だって……」
シームァはおろおろしている。
「どうしたの?」
クラルは率直な疑問を口にした。
「え? だって、目を見てなんて言うから、キスして欲しいのかと思って。キスして上げたんだから胸ぐらい触ってもいいのかなって……」
「はあ!?」
シームァの勝手な意見を聞いて、ミンがキレた。
「いいわけないでしょ! 何なの! この子!?」
ミンは口をぬぐう。
想定外のことにかなり怒ってるようだ。
「そもそも、そっちから邪眼を掛けて来たんだよね?」
クラルの指摘に、ミンは言葉を詰まらせる。
「そろそろ、おいとましようか」
クラルはシームァの肩を抱く。
「ありがとう。こんな大きなおうちの庭を見せてくれて」
クラルはミンにそんなことを言いながら、ぐるりと庭を見回した。
そうして、クラルとシームァは庭を後にした。
*
「ちょっと!」
苛立たし気に、ミンが声を発した。
「はい」
少し離れていたところに待機していた、兵士が返事する。
「あの場合は助けなさい!」
「手を出すなと言われていたもので……」
困惑気味に兵士が返事をした。
男であるクラルに関しては警戒していたが、女であるシームァがあんな行動をとったのは予想外だった。
それに、邪眼を掛けたミンがそういう誘いを仕掛けたのかように見えたというのもある。
思い出すと、兵士は鼻血を流していた。
「興奮してんじゃないわよ!」
ミンは自分でもわかってるぐらいに声を荒げていた。
事前に兵士に『手を出さないように』と指示していたのも、他ならぬミン自身だ。
「……ごめんなさい。どうかしてたわ」
自分がしていることが八つ当たりに他ならない事に気づき、ミンは兵士に謝る。
そして、こんな指示をする。
「さっきの二人を気づかれないように後をつけて」
兵士はその命令に従うのだった。