現象
* * *
「たまにこんな現象が起きるの」
と、ミン・ラテーシアは説明する。
「この地では雨が珍しくてね、大雨の後、こんな風な花畑みたいになるの」
ラテーシア家の庭の一部にほんの小さな花畑があった。
大きさは円周50cmくらいだろうか。
赤い派手な花だと、クラルは思った。
シームァはすごく感心しているようだ。
花をじっくり見たあと、下の葉や茎を見て何か納得してるようだ。
屈んで、地面をじっと見たシームァ。
そこが水たまりになっていて、「マングローブみたい」とつぶやくシームァだった。
そんなシームァを、クラルは不思議に思いつつ見ていた。
同じようにミンもシームァを見ている。なんだか怒ってるように感じるのは気のせいだろうか。
しばらくして、シームァはクラルにこんなことを聞いた。
「ひょっとして、これが魔脈なの?」
「ん?」「え?」
ミンもクラルも、この質問には意表を突かれた。
「お花の下から噴き出すような………? あれ?」
シームァは、片方の目を手で覆い、そして反対の目も手で覆って見た。
「ほら、ここに……あれ? 気のせいだったみたい」
シームァは苦笑いをした。
ミンにはよく意味がわからなかった。
お面の下で、クラルは破顔していた。
クラルは、かすかだが魔脈を感じていたのだ。
もしかしたら、シームァの本来の目は魔脈や人の魔力が見える目なのかもしれない。
もう少しで奪われた視力を取り戻せるかもしれない。
「このお花の名前は?」
シームァが尋ねると、ミンは言葉に詰まった。
その理由はクラルにも分かった。
基本的に、ルウ族は花にさほど関心がない。
花の名前なんて発想自体がないかもしれない。
「えーと、知らないわ」
困ったミンはなんとなく質問し返す。
「花に詳しいの?」
「そういうわけじゃないけど、花は好き」
そんなシームァを見ながら、クラルは花の栽培に力を入れてもいいかもしれない、なんて思っていた。




