取り越し苦労
ケイは探ってみる。
おそらく全盛期の長老を超えるだろう。
魔導師という肩書もダテじゃないな、とケイは思った。
長老が人生と掛けて作り出したと言っても過言ではない、呪いと毒のこもったケイの怪我を治したのも納得だった。
自分は何故寝込むほど落ち込んでいたのか、バカバカしくなってもいた。
今は魔脈の影響で本来の力を押さえられているが、いつかそれを克服した時――。
ルウの地で最強と言っても過言ではない存在になるだろう。
願わくば敵になるようなことがないように、まあそんなことは取り越し苦労に過ぎないだろうけど、ケイはそんなことを考えもしていた。
* * *
クラルことケイが中央の広場でバイオリンを演奏していた。
空は赤くなっていた。
クスナは演奏を聞いていた。
久しぶりにゆっくり過ごした、と思った。
別にレファイ家に馬車馬のごとく働かせてるわけではなかったが、同郷のシームァに会えてずいぶんと気持ちがリラックスできた。
明日からまた頑張ろう、と思いながらケイの演奏を見ていた。
いつの間にか、隣にシームァが立っていた。
シームァはにこにこしていた。
パースといい取引が出来たんだろう。
クスナは隣にいるシームァの手を握っていた。
彼女がシーナじゃないのは分かってる。
ただシーナの面影のある人物と手を繋ぎ、シーナとの思い出に浸かりたかった。
そして、親友の妹でもある。
幸い、上機嫌のシームァは手を振りほどくことはなかった。
にこにこ顔のシームァと手を繋いだまま、二人はケイの演奏を聞いていた。
*
そんなクスナとシームァを、ミンが見ていた。
ミンはいそがしい一日を過ごした。
アンドロイドの部品が落ちていたということで、有志一同その対策を講じていた
解決策はまとまらず、疲弊していたわけで。
癒しを求め、バイオリンを聞きに来たわけだが、そこで手を繋ぐクスナとシームァを見てしまう。




