怒り
ミンは激しい怒りを感じていた。
自分の想いが一方的なものだというのは分かってる。
あの時、すがるように手を握ってきたクスナ。
そして、白くてきれいな肌。
自分にだけ見せた姿。
それを手に入れたと思ったのに。
クスナの誰にも見せない姿を独占してると思ってたのに……。
ミンは、ずっと二人を見ていた。
辺りに人は少なくなってきた。
二人は手を離し、何か話していた。
とても親密そうな二人だ。
ミンは、シームァのことをクスナが密に持っている写真の女性なんだと思い込んでいた――。
* * *
次の日。
「大きな家」
シームァはラテーシア邸を見上げ、そんな感想を述べた。
ケイとシームァはラテーシア家の前を歩いていた。
「この辺には、怪しい人物はいない?」
と、お面をつけたケイことクラルが尋ねる。
その問いには、内心怪しいのは他ならぬクラルだろと思いつつ、いないと答えるシームァだった。
「ここはね、ラテーシアのお家でね、この広い庭には隠れたりも有り得なくもないかな、と思ったんだけどね」
と、クラルが言うのは建前だった。
クラルことケイは、ずっとカースの言ってたことが気になっていた。
――長老を攫っちまえば?
と、カースは言った。
ケイが本気を出せば不可能ではないだろう、が。
大きな家だ。長老がいるのがどの部屋か検討はつくが確実ではない。
見張りの兵隊もいるしこの中を突破して長老を攫い出すのは、かなり難しそうだ。
一番隊と二番隊の合同訓練中に二番隊隊長を誘拐したリゾはよくやった、とも思う。決して褒められた話ではないが。
リゾの場合はレンのアシストがあったからこそできたというのは有る。
ケイが長老を攫う際に、カースは手伝ってくれるだろうか――
ムリだな、ケイにはよくわかっていた。
カースはミンが気に入ってる。嫌われるようなことはしないだろう。
結局はかなり難しい、という結論に達したケイだった。




