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六 疑惑


―財務金融委員会質疑:衆議院第2委員会室中継―


「それでは、これより連結会計基準案及び基準案に係る商法改正案に関する質疑に入ります。自友党、海山恭二君」

「――はい、自友党、海山でございます。私からは、本件、基準案に関して、細田政府委員に学識経験者のお立場から、現行の連結会計の実務と、本委員会の主題ともされている支配力基準の採用に係る懸念、以上二点について、見解を伺いたく存じます」

「それでは、政府委員、細田君」

「――はい、北城商科大学の細田でございます。委員から御質問のあった二点について、お答え申し上げます。まず、現行の連結会計の実務についてでありますが、我が国では、連結財務諸表制度が、昭和50年6月に当審議会が公表した『連結財務諸表の制度化に関する意見書』に基づき、導入されるとともに、昭和51年10月に『連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則』が大蔵省令として定められておるところです。とりわけ、我が国の連結会計の実務における子会社の範囲の決定については、かねてより持株基準、すなわち、親会社がもつ当該グループ会社の株式保有率に従った実務が行われております。次に、支配力基準についてでありますが、こちらは、会社の経営を実質に支配しうる会社を子会社とする基準であり、必ずしも形式的に株式保有率に従って、子会社と判定される基準ではございません。本委員会においても議論されておりますとおり、たしかに、支配力基準はグループ全体の損益状況を実際の支配関係の実態に応じて、適切に財務諸表へ反映するという利点がございますものの、その子会社の判定を行う際の会計実務担当者の負担、支配関係といういわば曖昧な定性的規準による会計操作の恣意性がみられるものでございます。学会におきましても侃々諤々の議論が行われておりますが、当職としましては、支配力基準による経済的実態の反映の効果と我が国の前線で日々、奮闘する会計担当者の実務負担の費用対効果を鑑みて、現行の持株基準を維持するのが適当との見解をもっているところでございます。以上でございます」

「これにて、政府参考人、細田政府委員の質疑を終わります。細田政府委員は御退出ください」

「はい」


―細田政府委員、第2委員会室退出―


「それでは、引き続き委員会質疑を行います。本件、立法提案者、民生党、殿山久重君」

「――はい。民生党の殿山でございます。はじめに、本委員会筆頭理事である海山恭二委員に関する一部週刊誌報道について、本件、連結会計基準の質疑に重大な影響を及ぼす可能性がありますことから、この場をお借りして、質問をさせていただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか」

「速記を止めてください」


―議事中断。委員会理事、委員長席前参集―


「お待たせいたしました。理事会の判断により、海山筆頭理事に対する質疑を認めます」

「委員長、寛大な御判断、感謝申し上げます。それでは、本件一部週刊誌報道による、海山筆頭理事の贈収賄疑惑について、質問させていただきます。こちらは、本日発売された週刊誌記事の複写です。この記事によれば、トーキーホールディングス社、こちらは『全国経済友和連合会』の加盟会社で、代表取締役会長が同連合会の副会長をつとめておりますが、この会社から多額の政治献金を海山事務所あてに行っているものの、その一部が政治資金報告書に記載されておらず、その資金を賄賂として、海山代議士が本件、支配力基準の採否について便宜を図っているとあります。また記事には、厚生省事情通の証言として、かつて、麻薬取締部が、海山代議士が政治献金を受けているそのトーキーホールディングス社の関連会社で医療用大麻を扱うシンクタンク『新緑の春』を麻薬取締法違反の容疑で内定捜査していたものの、海山代議士から厚生省幹部への圧力によって、捜査が打ち切り、お蔵入りとなった旨の記載がございます。『新緑の春』は医療用大麻を、何らかの方法で一般人や黒い方面に売買していたとの嫌疑がかかっていたようです。もし、本件が事実であれば、海山代議士の筆頭理事及び委員の即時解任、及び財務金融委員会として刑事告発を提案させていただきたく存じます」

「それでは、海山委員」

「――はい。お答え申し上げます。殿山委員の御指摘についてでありますが、たしかにトーキーホールディングス社はわたくしの事務所あてに政治献金を行っていただいておりますが、そのすべてを記載しておると認識してございます。実際にわたくしが会計実務を担っているわけではございませんので、具体の処理は承知しておりませんが、あるとすれば記載漏れによるものと考えております。また、トーキーホールディングス社の関連会社である『新緑の春』に関しまして、たしかにわたくしは―委員の皆様も同じでありますが―長らく代議士を仰せつかっておりますので、顔見知りの厚生官僚を存じており、政治献金を受けている企業の関連会社であるため、内定捜査の件も事前情報として承知しておりました。しかしながら、捜査の打ち切りは、嫌疑不十分によるものと認識してございます。したがって、委員御指摘の件について、後ろめたいことは何一つございませんので、この場をお借りして、陳述させていただきます――」


 黒木は、テレビを消すと、

「まさか、こんな中継で海山のひととなりが、公になってしまうとはね」とポツリ、僕につぶやいた。


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