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四 奉仕活動

 奨学金打ち切り後も、まだ、藤島みどりは大学で講義を受けており、まだ在学しているとのことだったので、日時と場所をサークル仲間のツテを使って伝えてもらうことにした。

 そして、二日後の正午、ここ、サークル棟三三一号室を集合場所とし、当日を迎えたのだった。


―秋の奇怪な奉仕活動―


 母子家庭で育ったわたしは、奨学金機構の有利子奨学金とわずかなアルバイト収入を学費の支払いに充てる計画で、大学進学を果たしたものの、入学初年度納入金や学費以外の学生生活に係るサークル活動費、友人との交際費、寮生活費によって、日常生活は自転車操業と化していた。

 そんな折、大学構内の掲示板で『新緑の春』の奨学金募集チラシを目にしたのだ。一般の奨学金に見られるような高校時代の成績や大学の学業成績が支給要件に含まれない不可思議な奨学金だったものの、“奉仕活動の提供”によって支給される奨学金で、しかも返済不要という魅力的な内容から、わたしの身の回りの学生たちもこぞって応募していた。だが一方、この奨学金は、返済不要ということもあって、決定率は申請者全体のおよそ十%ほどと、奨学生に選出されるには狭き門であったのである。

「みどりちゃん、応募しないの?」

 わたし自身、半信半疑の中、友人の後押しによって、半ばダメもとで応募してみることにした。申請書類は、簡易的なもので、添付書類といえば、口座番号振替書くらいのもの。

 当初は個人情報搾取のねずみ講かとも思ったのだが、何ということか、申請書類を投函して一週間後、学生寮で藤島みどりあての「奨学生決定通知」が届いたのである。通知文書には、「入学初年度経費に充当するための給付金として三十万円を指定口座に即日支給しております」との文言があった。休日に大学構内のATMで記帳すると、たしかに「シンリョクノハル」名義から三十万円が振り込まれていた。

 半信半疑の奨学金だったものの、実際にお金が振り込まれ、余裕のある学生生活が保証されたこともあり、不遇な自分に神様が褒美を与えてくれたのだと言い聞かせて、しばらくは特に何も考えず平凡な学生生活を送っていた。

 ところが、半年ほど経った頃だっただろうか。学生寮に『新緑の春』から一通の封書が届いたのだ。

「支給要件にあった奉仕活動だ」そう思って、重みのある封を開けると、案の定、それは“奉仕活動”の招集通知であった。


“奉仕活動日時”

11月4日、地下鉄東西線八時三分発、中央通方面、新札幌行きの「西十二丁目から中央通」間、二番車両後方優先席前にて、アルファベットが記載されたメモ紙を男から受け取ること。なお、当日は、同封されている金ベルトの腕時計を着用し、奉仕活動後は、中央通駅構内暗証番号式コインロッカーに受け取ったメモ紙とともに返却すること。暗証番号は、「194817」。以上。


 もちろん、不気味な奉仕活動であると認識していたが、多額のお金を受領してしまっている以上、無視するわけにもいかない。

「ただ、メモ紙を受け取るだけなら」と、ある意味、楽観的に大丈夫だと自分に言い聞かせて、わたしは当日、行動を起こしたのだった――――。


「どうも奇怪な体験でしたので、わたしはこうして当時の出来事を日記に書き起こしたのです」

 日記を読み終えた彼女は、ほっと安心した様子であった。

 このようにして彼女は、淡々と日記を読み上げながら、事の詳細を僕と黒木に伝えてくれたのだが、僕たちは、思いもよらず、彼女の日記から、この『新緑の春』の一件が、「金ベルトの腕時計の男」事件と密接に関連していることを理解したのである。


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