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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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98/112

第98黒 選ばれなかった女


 ミラの表情が崩壊し、宝石が一斉に激しく発光する。


「違う…!!私は……私はモナーク様の為に……!!」


 ドォォォッ!!


 空間全体へ暴走する魔力が叩きつけられ、床が裂け、

 回廊の壁面にある紋様が狂ったように脈動する。



 だがヴェルミナは動かず、静かにミラを見つめ呟く。


「……()()?…違うわね。」


 ヴェルミナが暴走する魔力の中を一歩ずつ進む。


 「あなたは、()()()()()()()()だけ」


「黙れぇぇぇッ!!」


 ミラが腕を振る。


《極魔晶連鎖砲撃 クリスタル・ラスターバースト》!!


 無数の宝石陣が空間に展開し、雨のように降り注ぐ魔力砲撃。


《呪詛侵食 カース・イーター!!》


 ヴェルミナの瞳が、妖しく揺れ黒い霧が広がり

 ミラの魔法陣に触れた瞬間、砲撃が崩壊していく。


「なっ……!?」


「どれ程の魔力を使おうと、あなたの術式は遺跡の時に解析済み

 ……あなたに勝ち目は無いわ」


 ヴェルミナが微笑み、呪いが黒い霧が一気にミラへ襲いかかる。


《魂蝕呪 ソウル・デストラクション》


「っ――!!」


 ミラの魂へ直接流し込まれる呪いの霧が視界が歪ませ、呼吸が乱れる。


「が……ぁ……っ!」


 膝をつく。


 それでも――ミラは壊れかけた笑みで微笑む。


「あはは……まだ……」


 宝石を血が流れるほど強く握る。


「まだ私は……モナーク様に必要とされる……!」


 ヴェルミナの目が、わずかに細まる。


「……哀れね。」


「哀れじゃない!!」


 ミラが絶叫する。


「私は選ばれたの!!私は必要とされてる!!私は……!」


 声が震える。


「私は……()()なのよ……!」


 その瞬間、ヴェルミナの表情から笑みが消えた。


 ほんの一瞬だけ、脳裏を過る――


 かつての同僚であり、自分を切り捨てた天才魔導士――ウィザー=アルヴァレン。


『あなたは不要よ』


 今でも憎んでいる、けれど――


「少し”ウィザー”に似てるわね。でも…、あなたは彼女にも及ばない。」


 ヴェルミナの目が、冷たく細まる。


「……っ!?」


「彼女にはまだ理想があった。信念も、想いも…」


 呪詛が、ミラの足元を侵食する。


「でもあなたには何もない。

 あるのは、奪われたくない。という気持ちだけ」


 だから、弱い――


「終わりよ」


 ヴェルミナが手を掲げ、空間全体へ黒い呪紋が広がる。


《終末呪界 カース・アポカリプス!!》


 ミラの足元から一斉に、呪詛が花のように咲き誇る。



「いや……っ……」


 ミラが後退しようとするが、呪いは既に身体へ絡みついている。


「モナーク……様……」


 宝石が光を失い砕けていく。


「嫌……嫌ぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 絶叫しながら魔力がミラの身体から溢れる。

 だが、既に制御を失い呪詛に蝕まれていく。


 そして、最後の宝石が砕けた瞬間――


 ミラの身体から力が抜け崩れ落ちる。


「……あ……」


 ミラは震える指を伸ばす。


 誰かを求めるように――


「モナーク……さ……」

 

 だがその手は届かずに、そのまま力尽きるように、倒れ伏した。


 静寂が流れ崩れた回廊に、呪詛の煙だけが漂う。

 ヴェルミナは、しばらく黙ってその姿を見下ろしていた。


「……馬鹿ね」


 小さく呟く。


 それがミラに向けた言葉なのか。


 それとも――


  かつての誰かへ向けた言葉なのか。


 彼女自身にも、分からなかった。


 だが次の瞬間、ヴェルミナはいつものように笑う。


「さて、と…感傷に浸る趣味はないのよね、私」


 踵を返し、そのままリィナ達を追うために闇の回廊へ消えていった。



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